12/20の日経新聞でしたが、ISSの社外取締役再任議案に対する新基準が導入されるという記事が出ていましたね。
ISSというのは、米国のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズという議決権行使助言会社です。
機関投資家に対する議決権行使の助言については、非常に大きな力を持っており、同じような時に大量に発行会社から議案が送られてくる機関投資家にとっては、会社の議案を分析して議決権行使について賛否の推奨をしてくれる便利な存在です。
そのISSの基準では、日本企業の社外取締役の再任議案の評価基準として、
取締役会への出席率が75%未満の場合、その役員の再任に反対する
というもの。
しかも、この基準を社外監査役にも当てはめるとも
この新基準、2008年2月以降の日本企業の株主総会から適用するとのことで、ISSの顧客企業に呼びかけていくといいます。
買収防衛策の導入や、コンプライアンスの観点から、社外取締役を導入する企業が増えているといいますが、ISSはこうした社外取締役が、企業のお目付け役としての本来の役目を果たしているかを厳しくチェックする方向のようです。
社外役員が他社との役員兼任が多かったり、遠方にいて取締役会に出席できなかったりして、取締役会を欠席することが多い人は、企業のお目付け役としてはふさわしくない、と考えているとのこと。
米国では、すでにISSのこの基準で社外取締役の再任について議案の推奨を行っているといいますので、急速に、日本企業のガバナンスも米国に近づいているように思われます。
いずれにしても、ISSを議決権行使助言会社として採用している日本の機関投資家さんも多いと思いますので、こりゃあ、大変です
確かに2007年3月期決算の(広義の)招集通知(=事業報告)から社外役員の取締役会への出席率や発言内容などの記載が求められるようになっていますが、私が実際に見た他社さんの事業報告の記載では、サンプル数は少ないですが、出席率をきっちり書いている企業の数は、それほど多くないように思われます。
上記の社外取締役・監査役の賛否推奨の基準でいうと、社外取締役・監査役の出席率を各人別に記載することが当然必要になりますね・・・。
多くの企業さんでそういう方向の記載になっていくのかなぁ。
3月頃以降のプロネクサス等のセミナーで、また紹介されることでしょうから、注意しておかないと・・・。
社外取締役のお目付け役としての機能について疑問を呈する声もあると思いますが、以前、何かのセミナーで聞いた企業年金基金連合会の方は、社外取締役に期待する機能として、こんなことを言っていました。
社外取締役がその企業の事情を熟知しており、社内の取締役と同等の意思決定をできることを求めているわけではない。
社外取締役に求めているのは、その企業の取締役が、株主に選任された社外取締役に対して、きちんと意思決定のプロセスを示して説明できるかどうか、その点をチェックしてもらいたいのだということ。
つまり、説明責任(アカウンタビリティ)の確実な履行を、企業年金基金連合会(やISS)は期待しているということです。
社外取締役を導入していない企業では、日本企業特有の、
「事情はもうわかっているでしょ。まぁまぁ、そういうことだから、ひとつ、よろしく。」
的な意思決定をしているケースも多いと思いますが・・・。
来年度から内部統制監査制度も始まることですし、説明文書を何ひとつ持たずに重要なプランについての意思決定をせまるようなやり方は通用しないでしょうね。
そういう会社こそ、自ら進んで、社外取締役を導入すべきでしょう。
コーポレート・ガバナンスというと耳ざわりが良いですが、結局のところ、企業の社内取締役さんたちの、襟の正し方次第で、社外取締役の導入や、社外取締役の出席促進の度合いが決まるように思います。
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