三月某日

 

 

  とても大切な人に

 

  最後のさようならを告げた。

 

  帰りたくなくて渋谷で

 

  クレーの絵の前でぼんやりとした。

 

  美術館の中は薄暗くて

 

  人の気配に満ちていて 

 

  淋しくなくて良かった。

 

 

 

  誰かを亡くすということは、

 

  その人とできたかも知れないいろいろを諦めたり

 

  しなかったことを悔やんだりするということなんだと思った。

 

 

  「お悔やみ申し上げます」

 

  という言葉の意味が、ようやく理解できた。

 

 

  きっとわたしはまだまだ泣くけど

 

  ちゃんともっと笑うと誓う。