3月某日


  真夜中、


  大きな道路沿いにあるコンビニエンスストアへ行く。


  道路沿いには、桜の木が等間隔で植えてある。

 

  まだ少し固そうなつぼみたちを愛でながら歩いていたら、

 

  コンビニ前の桜だけ、


  すでに五分咲きなのに気づいた。



  二十四時間、人工の明かりを浴びさせられている桜たち。


  それでも、やっぱり桜は綺麗なのだった。





  

 
 サイダーを飲むたび思うことがあるの。
 彼女は飲みかけのサイダーの瓶を、手で少し揺らしながら言う。

 そのたびに、瓶の中の小さな泡が、ゆらゆらと昇ってゆく。
 「思い出すの。恋をして海に身を投げた人魚姫のこと」
 人魚姫が泡になって海の中を昇っていったとき、その海は世界一たくさんのサイダー水みたいに見えたんじゃないかしら?
 変なことを考えるね、僕が言うと、変じゃないわよ、とすました顔で彼女は答える。

 多分同じこと考えてる人、世界中に百万人はいると思う。
 何人いようが僕には知ったことじゃない。

 大切なのは僕の前に彼女がいるということだけだ。
 じゃあ、たとえば君の飲んでいるそのサイダーが、人魚姫の溶けた海だったらどうする?

  僕は少し意地悪に、そう問いかけてみる。

 人魚の溶けた水を飲むの、君は?

 淡いブルーの瓶の中で、小さな海がしゅわしゅわとはじけている。

 瓶の中の海は、でも甘い。
 彼女は答える。
 「別にどうもしないけど?」
 そして一気にサイダーを飲み干し、彼女は小さくげっぷする。  

ゴウノトラ考察

テーマ:

 3月某日


 とある雑誌の取材を受けるために銀座へ。

 

 そしたら、インタビューをしてくれた編集の方(女性)も、

 

 カメラマンの方(女性)も、

 

 わたしと同じゴウノトラの生まれでした。

 

 

 仕事相手の方の年齢って普通あんまり聞かないのだけれど、

 

 わたしは生まれ年をプロフィールに書いてあるので、

 

 ときどき、「同じ年生まれです」

 

 という方にお会いします。

 


 「男を喰らう」とかなんとか、


 いろいろ言われている(らしい)業の深いゴウノトラの女たちですが、

 

 今まで出あったトラたちは、

 

 少し大人しそうな、人当たりの柔らかい方が多いような気がします。


 (わたし含め)


 見た目で騙して喰らうのでしょうか。


 などと考察。 

 

 

 

 


黄色が好き


 わたしがあなたを好きな理由は、あなたが黄色人種だからなんかじゃないのよ、と言ったら、あなたは

 「なんだそれ? 意味が分からないよ」

 と早口で呟き、はははは、と乾いた声で笑った。
 なにかを偏愛しすぎる傾向のあるわたしなので、なるたけ平行な感覚を持とうと心がけてはいる。

 だけれどでもやっぱり、南瓜やマンゴーやトウモロコシやパパイヤやアザミやヒマワリや蜜柑なんかを好きで好きで仕方がなくて、どうしようもない。

 信号だって黄色がいい。

 注意せよ、って意味だなんて、考えるだけでどきどきする。
 蜜柑はどっちかっていうと橙色なんじゃないかなあ。

 コタツの上に置いてあるかごの中に由緒正しき積み重ねられかたをした幾つもの蜜柑。

 その中に一つに迷いなく手を伸ばしながら、あなたは言う。
 そういえば、今日でほぼ一か月、毎日三つは蜜柑を食べてるよ、ほら、と言って差し出したあなたのてのひらは、ほんのり黄色く染まっていた。
 ああやっぱり黄色が好き。

 頬ずりしたいほど、好き。





  敬愛する矢崎仁司監督と


  共同で脚本を書かせていただいた短編映画が、


  無料配信されています。


  「大安吉日」


  という、ある一日のお話。


  撮影も丸一日で、大変でした。


  二週間限定のロードショウだそうです。


  静かな夜に、観てもらいたいな。



 http://tan-pen.jp/