ソウルやファンクを語る上で外すことの出来ない人物のひとり、Sylvester StewartことSly Stone。2025年6月9日、そのレジェンドが旅立ってしまいました。享年82歳。
ライブ・ドキュメンタリー映画『サマー・オブ・ソウル』も記憶に新しいところですが、音楽ジャンルの混合、グループも人種混合、ヒッピー文化との融合、フラワー・チルドレンの申し子といった強烈なインパクトをもってシーンに登場。その斬新さゆえ、当時はかなりの驚きだったのではないかと思われます。従来のモータウン、スタックスなどのソウル/R&Bとは違い、分業ではなく自身で演奏、歌も歌うセルフ・コンテインドなグループとしてロック・バンド的なスタンスもあり、白人からも支持を集めたことも、時代を考えたら特筆すべき貴重な存在。
また、James Brownが確立した「Funk」を、より洗練させ、そこにサイケ的な要素も組み入れることで、新しい「Funky Music」へと昇華させました。これが主流となって、後のOhio Players、Kool & The Gangなどに大きな影響を与えたことも賞賛、リスペクトに値するでしょう。
わたしのようなサンプリング世代にとって、(彼の音楽は)ブラック・ミュージシャンの青写真みたいなもの。だからこそ勝手に愛情を込めてレビューしたくなるわけで、これからもあらゆるミュージック・シーンにおいても末永く受け継がれる事を願いつつ、心よりご冥福をお祈りします。
◆69年にリリースしたアルバム『Stand!』からのカット・シングル。Prestige/Mecuryを中心に活躍したジャズ・オルガン奏者Charles EarlandやKing Curtisのバック・バンドだったNoble Knights等もカバーした、高カロリーでノックアウト必至のファンク名曲。後半に強力なブレイクビーツが潜むことから、ヒップホップではドラムネタとしての使用率が高いことでも知られます。
★Sing a Simple Song
Album : Stand! (1969年)
was sampled in :
▶️Deep Cover by Dr. Dre & Snoop Dogg (1992年)
◆USナンバー1を獲得したシングルでベスト盤に収録あり。「腰にくる」ファンク・サウンドを確立したLarry Graham (後のGraham Central Station) による、ひたすら反復するスラップ (チョッパー)・ベースに混成ボーカルが折り重なるようにレイヤーする、中毒性も非常に高く、もっとも「スライらしい」曲のひとつと言えるかもしれません。タイトルは「thank you for letting me be myself again」のスペルを意図的に変えたもの。
★Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)
Album : Greatest Hits (1969年)
was sampled in :
▶️Rhythm Nation by Janet Jackson (1989年)
▶️Sittin' Up In My Room by Brandy (1995年)
◆Stetsasonic「Talkin’ All That Jazz」、Jungle Brothers「Because I Got It Like That」をはじめ、数多のヒップホップ・クラシックでサンプリングされた、あまりにも有名なキラー・ブレイク&ドラム入りの、キャリアを代表する名曲の一つ。
★You Can Make It If You Try
Album : Stand! (1969年)
was sampled in :
▶️Because I Got It Like That by Jungle Brothers (1989年)
▶️Megablast (Hip Hop on Precinct 13) (7" Mix) by Bomb the Bass (1988年)
▶️Talkin’ All That Jazz by Stetsasonic (1988年)
◆ロックとリズム&ブルースが溶け合った、記念すべきデビュー作にして名盤『A Whole New Thing』から、ソウルフルなサイケ・ナンバーを。ヒップホップのアイコン的存在、LL Cool Jの代表曲のひとつ「Mama Said Knock You Out」ネタとしても有名ですね。
★Trip to Your Heart
Album : A Whole New Thing (1967年)
was sampled in :
▶️Mama Said Knock You Out by LL Cool J (1990年)
◆60年代には希望に満ちあふれたポジティブな曲の数々でヒットを飛ばしたSly & The Family Stoneでしたが、71年にリリースした『There's A Riot Goin' On (邦題:暴動) 』は、ローファイで抑圧されたムードやドラムマシンを使ったミニマルなビートなど、持ち味だった明快なファンキーさは影を潜め、ストリート・ワイズなファンクを展開。
内容としては、(70年代初頭)多くの人々が沈み込んだ夢や希望からの喪失感を反映したものとなっており、サウンドも含め、かなりディープであるにも拘らず、70年代において最も偉大で影響力のあるアルバムとして広く認められていますし、彼らの最高傑作と言われることも多い作品。
普通の星条旗は青赤白で5つの角の星なのですが、このアルバム・ジャケットは黒赤白で9つの角の星で「太陽」を表現しています。
『黒は色の欠如、白はすべての色の混合、そして赤はどんな人種にも流れる血の色を表しているんだ。星というのは探さなければならないし、数が多すぎる。でも太陽は常にそこにあってこっちを見ているものだろ。このアルバム・ジャケットは「すべての人種の人々」を表しているんだ。by Sly Stone』
★Family Affair
Album : There's a Riot Going On (1971年)
was sampled in :
▶️Weekends by Black Eyed Peas feat. Esthero (2000年)
▶️And on and On by Janet Jackson (1993年)
◆淡々とポジティブに日常を歌ったこの曲のヒットをきっかけにWoodstockにも出演したほどで、幅広い層のリスナーを魅了した素晴らしい楽曲です。嫌いな人はいないでしょ。Joan Jett & The Blackheartsのカヴァーも人気あります。
★Everyday People (1968年)
Album : Stand! (1969年)
was sampled in :
▶️People Everyday by Arrested Development (1992年)
▶️covered by Joan Jett & The Blackhearts (1983年)
◆サイケデリック・ソウルの金字塔『Dance to the Music』より、彼らの代名詞的な曲ですね。「ファンクの完成形」とも言われています。疾走感溢れる「Ride The Rhythm」も最高。
★Dance to the Music
Album : Dance to the Music (1968年)
was sampled in :
▶️Egg Man by Beastie Boys (1989年)
▶️Here Comes That Beat by Pumkin and the Allstars (1984年)
▶️Dance for Me by Queen Latifah (1989年)
◆ミディアム〜スロウの味わいが絶妙な後期の作品『Small Talk』収録ナンバー。時代の寵児として当時のシーンをリードした前作までと比べて地味な印象ですが、熱いだけがファンクではないのでス。
★Wishful Thinkin'
Album : Small Talk (1974年)
was sampled in :
▶️Momma by Kendrick Lamar (2015年)
◆こちらもサンプリング・ソースとして、様々なトラックに取り上げられています。柔らかでピースフルな雰囲気溢れる楽曲ですが、歌っている内容はなかなか皮肉めいたもので、当時のスライの関心や心境を色濃く反映しているのでしょう。
★Runnin' Away
Album : There's a Riot Going On (1971年)
was sampled in :
▶️Description of a Fool by A Tribe Called Quest (1989年)
◆1968年に発表した3rdアルバム『Life』の表題曲。今作は弟フレディのサイケデリックなギターがかなりフューチャーされています。Fatboy Slimの「Weapon of Choice」ネタとなる「Into My Own Thing」や上記にも取り上げた、これまたJungle Brothers「Because I Got It Like That」の元ネタとなる楽しくキャッチーな「Fun」もいいですね。アートワークは小沢健二の同名アルバムでも引用されております。
★Life
Album : Life (1968年)
was sampled in :
▶️Insane in the Brain by Cypress Hill (1993年)
◆どこまでもクールで何度聴いてもカッコいい。Princeにもどこか重なりあう、Sly流のスロウ・ファンク/ソウル・チューン。
★Just Like a Baby
Album : There's a Riot Going On (1971年)
was sampled in :
▶️She Don't Have to Know by John Legend (2004年)
◆通算6枚目となる73年リリースの『Fresh 』から。グループ自体は過度期だったかもしれませんが、ブルージーでサイケなこの曲と多くのミュージシャンがそのベースラインを拝借した「If You Want Me To Stay」、これはこれで悪くない作品。それはそうと、「飛び蹴りを決めている・飛んでるスライ」はいつ見てもシュール。薬物中毒を(一応は)克服してリスナーの前に帰還したスライゆえなのか、フレッシュになったことを示す「コーク (コカイン) からペプシに切り替えた」なんて洒落まで飛び出してますから。
★In Time
Album : Fresh (1973年)
was sampled in :
▶️The Function by The Future Sound (1992年)
▶️Cosmic Blues by Pizzicato Five (1992年)
◆中毒性の高いベースラインに哀愁のハモンド・オルガン&スライ節が絡む、中期における代表曲のひとつ。レッチリことThe Red Hot Chili Peppersが、85年のアルバム『Freaky Styley』でカヴァーしております。
★If You Want Me to Stay
Album : Fresh (1973年)
was sampled in :
▶️Comm. 2 by The D.O.C. feat. MC Ren (1989年)
▶️covered by The Red Hot Chili Peppers (1985年)
◆『High on You』は彼のソロ名義のアルバム。Family Stone時代の『Stand!』や『There's a Riot Goin' On』、『Fresh』などに比べると、世間での評価はまだ低いですかね。しかしながら切れ味鋭いファンク・ナンバーからストリングスを交えた楽曲など、今の耳で聴くと実に楽しめる内容になっていて、中でもDe La Soulが使用したこの曲は昔から大好き。時が経っても変わらず愛聴します。たくさんのいい音楽をありがとう
★Crossword Puzzle
Album : High on You (1975年)
was sampled in :
▶️Say No Go by De La Soul (1989年)
▶️Guess What?by Keyshia Cole feat. Jadakiss (2005年)