白内障手術前にα遮断薬は休薬したほうがいいのか? | 薬剤師のためのEBMお悩み相談所-基礎から実践まで

薬剤師のためのEBMお悩み相談所-基礎から実践まで

EBMの基礎の解説、薬剤師業務に役立つ情報の紹介、学んだ内容の共有。これらを総合して行う、薬剤師生涯学習の拠点を目指します。

こんにちは、黒田です。





プライマリケア領域で仕事をしていると、白内障の手術を受ける人と遭遇することは多いものです。内服関係で白内障手術との関連があるものとして、α遮断薬による術中虹彩緊張低下症候群が挙げられます。施術する眼科でも内服薬のチェックはしていることと思いますが、該当する薬物を使っている人には、ひとこと声をかけるようにしています。


とはいうものの、実際の手術にあたって具体的にどのような対応をするればよいのか、あまり詳しく調べたことがありません。抗血小板薬や抗凝固薬のイメージでは、薬物ごとにある程度決まった期間、休薬してから手術というのが一般的です。こうしたスキームがそのまま適用できるものなのか、できるとしたらどのくらいの期間休薬すればよいのか、今回は調べることにしました。



 

レビューの内容

少し古い文献になりますが、参考になりそうなレビューがありましたので、以下に要点を抜粋します1)
 

 

  • 術中虹彩緊張低下症候群 (IFIS) とタムスロシンの関連性は、2005年に初めて報告された
  • IFISは、必ずしも両側性ではない
  • ある前向き研究によると、741名の患者中16名 (2%) がIFISを有しており、このうち15/16がタムスロシンを使用中か、以前に使用していた
  • 最初の報告依頼、タムスロシンとIFISの関連を調査したある研究では、タムスロシンを服用している患者の眼の90%にある程度のIFISを認めている
  • 非特異的なα遮断薬であるアルフゾシンと比較して、α1Aおよび1D受容体選択性の高いタムスロシンでIFIS発症率が高くなっていることから、受容体の選択性によって虹彩への影響が異なると考えられている
  • 手術の数年前に服用したα遮断薬でも虹彩への影響が持続するので、術前にα遮断薬を一時的に中止することは、IFISの予防に役立たない
  • ある前向き研究では、術前にタムスロシンを中止してもIFISの重症度は変化しなかった
  • 術前にα遮断薬を中止すると、それ自体が尿閉のリスクが増大するのに加え、術中にアトロピンなどの副交感神経刺激薬を使用されることが多いので、より尿閉を悪化させやすくなる




どうやら、一度服用したα遮断薬は、年単位で虹彩に影響するため術前だけこれを中止するという対応は無意味のようです。すでにα遮断薬を使用している人が白内障手術をする場合には、それを織り込んだうえで慎重に行うほかないのでしょう。眼科医への情報提供が大切になると思います。


また、α受容体サブタイプへの選択性によって、IFISの起こりやすさも変化するようです。今回の文献ではα1A/1D受容体への選択性が高い拮抗薬としてはタムスロシンのみが取り上げられていましたが、ほかにもナフトピジルやシロドシンも類似した傾向を示す薬物ですから、より注意が必要といえそうです。


では、また次回に。




Reference

  1. Flach AJ, Intraoperative floppy iris syndrome: pathophysiology, prevention, and treatment. Trans Am Ophthalmol Soc. 2009 Dec;107:234-9. PMID: 20126500