レンボレキサントの効果 | 薬剤師のためのEBMお悩み相談所-基礎から実践まで

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こんにちは、黒田です。






少し前に、スボレキサントの類似薬である、レンボレキサントが発売になりました。個人的な感想としては、何よりもまずその商品名に面食らったのですが・・・それはさておき、スボレキサントの方を取り扱うことはちょこちょことありますので、いつ何時レンボレキサントも使うことになるかわかりません。


そこで、レンボレキサントの基本的な情報を整理し、その後に関連する文献を参照したいと思います。




 

基本的な薬物情報

まずは、セオリー通り添付文書から基本的な情報を抜粋してまとめておきます1)

 

 

  • 規格・剤形:2.5mg錠、5mg錠、10mg錠
  • 効能効果:不眠症
  • 用法用量:通常、成人には1日1回5mgを就寝直前に経口投与。症状により適宜増減し、1日1回10mgまで増量可
  • 代謝・排泄:主にCYP3A4による肝代謝
  • 禁忌:本成分に対する過敏症、重度の肝障害
  • 作用機序:オレキシン受容体OX1およびOX2の阻害による
  • 副作用:頻度が高いのは、傾眠、頭痛、倦怠感
  • その他:イトラコナゾール、クラリスロマイシンなどのCYP3A4阻害作用を有する薬物を併用する場合は、1回量を2.5mgとする



類似薬であるスボレキサントは、クラリスロマイシンなどの強力なCYP3A4阻害作用を有する薬物と併用禁忌ですが2)、レンボレキサントの方は1回量を減らせばいちおう併用OKということのようです。あまり積極的に行いたいものではありませんが、これらの薬物を使っている場合にどうしてもオレキシン受容体拮抗薬が必要なケースでは役立つかもしれません。


なお、用法が「就寝直前」となっています。正直、実臨床上は就寝前でも別に構わないと思うのですが覚えてはおきます。就寝直前が用法となっている薬物には、ほかに類似のスボレキサントやゾルピデムがあります。


副作用にも特段変わったものはないようで、添付文書を見る限りはスボレキサントとの大きな相違点はCYP3A4阻害作用を持つ薬物との併用に関する注意点くらいに思えます。



 

プラセボ・ゾルピデムとの比較試験

ここからは、レンボレキサントの効果を検証した臨床試験を見ていきます。引用したのは、プラセボ及びゾルピデムとの比較試験3)。いつも通り、PECOTからまとめます。
 

 

  • P: 55歳以上の不眠症患者
  • E1: レンボレキサント5mgまたは10mg
  • E2: ゾルピデム徐放錠6.25mg
  • C: プラセボ
  • O: ポリソムノグラムによる睡眠潜時および維持のベースラインからの変化
  • T: 二重盲検RCT

 

  • ランダム化:外部者によるコンピューター生成ランダム化スキームによって行われている
  • ITT解析:各群に割り付けられた全員が解析に含まれており、守られている



介入は1か月で、ポリソムノグラムは最初の1・2日 (これがベースラインに相当) および最後の29・30日に測定。外泊が必要な手技なので、これは妥当。



主要評価項目である、29・30日における睡眠潜時の対プラセボ幾何平均治療比 (95%CI) は、それぞれ以下の通り。
 

  • ゾルピデム:1.22 (1.06 to 1.40)
  • レンボレキサント5mg:0.77 (0.67 to 0.89)
  • レンボレキサント10mg:0.72 (0.63 to 0.83)



ゾルピデム群の4名およびレンボレキサント5mg群の2名が重篤な有害事象を生じたが、いずれも治療とは関連ないものとのこと。ほかの有害事象の大部分は軽度~中等度。



ゾルピデムと比較して睡眠潜時が短縮しているのは、少々意外な結果でした。オレキシン受容体拮抗薬自体が、著明に入眠障害を改善するイメージがなかったので・・・。試験デザインに関して気になる点は、ゾルピデムが徐放錠になっていること、そのdoseが6.25mgであることです。日本では普通錠で使用される薬物で、超短時間作用型としてもっぱら入眠障害に利用されますが、徐放錠となることでこうした特徴にも少し変化が生じている可能性があります。


また、6.25mgという1回量も日本ではまずお目にかからないものです。ゾルピデムの規格は5mgおよび10mg錠ですから、基本的にはそのどちらかを1回量にすることが大半で、この試験の対象である高齢者では5mgから開始するのが一般的です。6.25mgはこれに近い量といえますが、徐放化されることで効果と用量の関係にもいくらか影響があると考えられます。


こうした点を考慮すれば、日本で普通に使用されるゾルピデム錠との優劣に関しては判断が難しいと思います。あくまでもプラセボとの比較の方を参考にするのがよさそうです。そちらに関しては普通に効果が認められているので、実用上問題ないと思います。


本当ならば、同一の作用機序を持つスボレキサントとの比較を行った結果を知りたいところですが、それはさらなる研究結果を待ちたいと思います。


では、また次回に。



Reference

  1. デエビゴ錠 添付文書 エーザイ株式会社
  2. ベルソムラ錠 添付文書 MSD株式会社
  3. Rosenberg R, et al. Comparison of Lemborexant With Placebo and Zolpidem Tartrate Extended Release for the Treatment of Older Adults With Insomnia Disorder: A Phase 3 Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2019 Dec 2;2(12):e1918254. PMID: 31880796