薬剤師のためのEBMお悩み相談所-基礎から実践まで

EBMの基礎の解説、薬剤師業務に役立つ情報の紹介、学んだ内容の共有。これらを総合して行う、薬剤師生涯学習の拠点を目指します。


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こんにちは、黒田です。


とある界隈でちょっとした話題になっている論文があったので、久々に真面目 (?) に批判的吟味なんてのをしてみようと思います。


 

 

 

 

対象の試験

問題の論文はこちら。



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Leclerc J, et al. Impact of the Commercialization of Three Generic Angiotensin II Receptor Blockers on Adverse Events in Quebec, Canada: A Population-Based Time Series Analysis. Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2017 Oct;10(10). pii: e003891. PMID: 28974512

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いつも通り、PECOTを使って読み進めていきます。






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Summary

  • ARB使用中の高齢者が、先発品から後発品に変更すると、救急外来受診や入院が増えるか検討した、時系列分析
  • 解析対象になったARBでは、いずれも後発品に変更後の方がイベント頻度が増加した






Study design

  • P: losartan, valsartan, and candesartan users (N=136?177) aged ?66 years (66歳以上の、ロサルタン・カンデサルタン・バルサルタン使用患者)
  • E: 対象薬剤の先発品使用時期
  • C: 対象薬剤のジェネリック使用時期
  • O: any causes of ER consultations or hospitalizations (救急外来受診および入院:理由は問わない)
  • T: an interrupted time series analysis (時系列分析)


季節変動や傾向変動を加味できるので、時系列分析という手法自体はリサーチクエッションとかみ合っていると思います。





Result

 

評価項目については、以下の3表の通りで、いずれの薬物でも後発品に変更した群で、入院あるいは救急外来受診が多くなる傾向にあった。















時系列でみても、単位使用者あたりのイベント数はジェネリック使用群で高めになっていることが読み取れます。





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コメント

ジェネリックと先発品を、臨床的なアウトカムベースで比較した研究は割と珍しく、その点で価値が高いと思います。しかし、結果を鵜呑みにできるか、と問われればかなり難しいといえるでしょう。


その理由は、評価項目の設定方法あります。この試験では時系列分析、つまり遡及的な解析を行っています。したがって、当然のことながら盲検化はされていません。すなわち、医師・患者とも投与されている薬剤が先発なのかジェネリックなのか、分かっていたことになります。


となれば、医師あるいは患者の主観が影響するものを評価項目とするのは非常にまずいわけです。この試験の評価項目は救急外来の受診および入院ですから、次のようなことが起こりえます。






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患者 (以下P):「あれ、なんだかすごく胸が痛いぞ・・・」


P:「特に変なものも食べていないはずなのに、一体どうして・・・・は!そうか」


P:「この前から血圧の薬を、ジェネ・・・リック?とかいう怪しいものに替えられていたんだった。ひょっとしたら何か関係あるのかも」


P:「そう考えるとなんだかすごく心配になってきた・・・でも今は夜中だし、どうすれば・・・・仕方ない、少し遠いけどあそこの病院の夜間救急に行こう!」

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場面は変わって、その夜間救急担当の病院にて。



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医師 (以下D):思い当たるところは一通り調べて見ましたけど、特に異常はないようですね。今は痛みも治まっているようですし、大丈夫でしょう。


P:でも先生、あのときは本当に痛かったんですよ。それに胸が痛いってことは心臓に何かあるってことじゃないんですか?この前、薬を粗悪品に替えられたから、それも心配ですし・・・。


D:いや、心配ないですよ。心電図にも異常ないですし。


P:でも先生、心電図では異常がでない狭心症もあるって、インターネットに書いてありましたよ。私の場合もそれで、実は心臓の血管がおかしくなってるんじゃないですか?


D:(えー・・・マジかよ。でも不安定狭心症とか見逃して、何かあったら訴えられかねないしなあ・・・。) うーん、そこまでいうなら今日明日くらい入院して詳しく検査してみましょうか?


P:はい!ぜひお願いします。

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といった感じで、この研究におけるイベント1件が一丁上がり、というわけです。実際にはここまで露骨なケースは稀でしょうが、盲検化がされていない (というかできない) 関係上、「ジェネリックを使っている」という患者サイドの意識が受診行動またはその際の訴えなどにに影響する可能性は十分に考えられることです。


また、これとは別の問題として評価項目が「救急外来受診」と「入院」だけであり、受診あるいは入院後の経過については一切考慮されていない点が挙げられます。つまり極端なことをいえば、ジェネリックを使った群では救急外来や入院が多くなったとしても、その大半が数日で回復・退院した一方で、先発品を継続した群では死亡などの重篤な転帰が多かった、という可能性があり得ます。


また、救急外来受診や入院に至った際の主訴や診断名についても考慮されていません。このうち、主訴についてはデータベースから遡及的に必要な情報を抜き出している関係上、現実的に評価が困難である点は理解できます。しかし、これも極論をいえばジェネリック群のイベントは薬剤との因果関係が弱いと考えられるものが多く、先発品ではそれが強く推定されるものが多い、という可能性があり得ます。


以上の指摘は、いずれも可能性レベルの話であり、明確な根拠はありません。ともあれ、評価項目を上記の通りにした結果として、この試験結果の解釈が困難になっていることまではいえると思います。


では、どうすればよかったか?と問われれば、普通に評価項目を「全死亡」にすればよかったと、私は思います。これならばハードエンドポイントで臨床的なインパクトも大きく、かつ客観的な指標ですから非盲検化の影響も受けません。元の評価項目に比較してイベント数を稼ぎにくいことがデメリットですが、そもそも遡及的解析なので十分なpowerを得られるイベント数は確保できるでしょうし、データべース更新に時間がかかる点を考慮しても、あと数年は追跡期間を延長することもできたはずですから、大きな問題が生じることはないと思います。


とはいえ、先発品-ジェネリック間の有効性の差異を検証するにあたって、観察研究を選択したのはとても上手いやり方だと思います。現実的なことを考えれば、両者のhead to head比較は手間がかかり過ぎて不可能に近いからです。今後、両薬剤の使用成績が蓄積し、こうした試験の方法論がブラッシュアップすれば、「後発品の品質」問題についてもう少し科学的な議論ができるだろうと、個人的には期待するところです。



では、また次回に。

 

 

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