薬剤師のためのEBMお悩み相談所-基礎から実践まで

EBMの基礎の解説、薬剤師業務に役立つ情報の紹介、学んだ内容の共有。これらを総合して行う、薬剤師生涯学習の拠点を目指します。


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こんにちは、黒田です。


先日、成長期の小児に対してそこそこのdoseのキノロンが投与されるケースを目にして、少し関節・腱に対する毒性が心配になる、という経験をしました。


この件については、別の薬剤師の先生から「その程度では過量投与とは言えないだろう」というご指摘を頂きました。


よい機会だと思いましたので、キノロンの副作用についての知識をアップデートする目的で文献を検索したところ、引用文献に挙げたレビューを発見したので、その内容を備忘として以下にまとめておくことにします。


ちなみに、後で出てきますので、キノロンの基本骨格とその位置番号を示す図を、同文献から飲用します。

 





 

 

 

 

消化器障害

  • 典型的な症状は、吐き気・食思不振・嘔吐・腹痛・下痢・味覚障害などで、頻度は2-20%程度である
  • キノロン系薬剤間での発症頻度の差異は、よく分かっていない
  • 自発有害事象報告をベースにしたイタリアのレビューでは、消化器障害の頻度はキノロンで10%であり、他の全身抗菌薬の9.1%と類似していた
  • 化学構造と消化器障害との間に相関関係はなかった




 

 

 

中枢神経毒性

  • キノロン投与時には、1-2%程度の頻度で中枢神経毒性が認められる
  • 一般的な症状は、めまい・頭痛・傾眠である
  • より稀な症状としては興奮・せん妄・混乱・視力以上などが挙げられる
  • 自発有害事象報告では、他の全身抗菌薬の3.6%と比較して、キノロン使用時の中神経毒性の報告率は12.2%と高かった
  • 医療用として使用されていないフレロキサシンは、中枢神経毒性の発症頻度が70%と際立って高かった
  • 一部NSAIDとキノロンの併用により痙攣発作が生じるのは、CYP1A2を介した相互作用であると考えられている
  • キノロンによる痙攣発作誘発のメカニズムは不明点も多いが、キノロン7位の置換基とGABAの化学構造が類似しているケースがあり、関連が疑われている





 

QT延長

  • 全QTc間隔が500ミリ秒を超えるか、QTcがベースラインから60ミリ秒以上増加するとTdPが発生するリスクが増加する
  • 薬剤性QT延長のメカニズムは、遅延整流性カリウムチャネルの阻害による
  • TdPの自然発生率は8.6症例/1000万人と示唆されているが、この数値には議論の余地がある
  • 薬剤性QT延長の発症リスクは、すべての患者で一様ではなく、一部明らかに「感受性」の高い集団が存在する
  • HERGとの組み合わせで遅延整流カリウムチャネルを形成する、カリウムチャネル調節遺伝子であるKCNE2の突然変異が、感受性の差異に影響すると考えられている
  • そのほか、少なくとも合計7つのQT延長症候群 (LQTS) に関連する遺伝子が同定されている
  • LQTSと診断された患者には、キノロン・マクロライド・アゾール系抗真菌薬は避けるべきである
  • 「repolarization reserve」という概念があり (下図参照)、これは複数リスクの蓄積がTdP発症のきっかけになるという考え方である
  • 逆にいえば、単一の原因によってTdPが生じることは稀である







 

 

 

グルコースホメオスタシス

  • キノロンは、膵β細胞のカリウム-ATPチャネルを閉鎖する作用を有し、インスリンの放出およびその後の低血糖を生じうる
  • キニーネは、同様の機序で低血糖を起こすことが歴史的に知られている
  • 一方で、キノロンによる高血糖の機序はよく分かっていない





 

 

 

関節および腱障害

  • 臨床研究では、キノロン投与を受けた患者の~1%において、主に荷重関節におけるキノロン関連関節症が生じると報告されている
  • 典型的には、投与開始後数日以内に関節痛・硬直・腫脹などが生じる
  • 通常、投与中止後数日から数週間で回復する
  • キノロン関連関節障害の推定されるメカニズムは、軟骨細胞表面のインテグリン受容体の機能変化に寄与する、マグネシウムのキレート化である
  • 別のメカニズム仮説として、in vitroレベルで欠損プロテオグリカンや欠損プロコラーゲンの合成が関与する可能性が示唆されている
  • キノロン系薬剤間でも報告数に差異があり、レボフロキサシン・ペフロキサシンは、シプロフロキサシン・エノキサシン・モキシフロキサシン・ルフロキサシンなどと比較して報告が多い
  • 症例の約半数は、症状が左右対称に認められる
  • 副腎皮質ステロイドの併用により、キノロン関連腱炎のリスクが増大すると考えられている
  • 自発有害事象報告をベースにしたイタリアのレビューでは、2年間で重度の腱障害が16名の患者に発症しており、うち31%はステロイドを併用していた
  • FDAは、腱の痛みが認められた段階でキノロンを中止し、腱炎が鎮静するまでは運動を控えるように推奨している
  • ステロイド以外のリスクファクターには、高齢・トレーニング中の運動選手などが推定されている






 

光毒性

  • 紫外線が特定のキノロン化合物に照射されると、一重項酸素分子および他のフリーラジカルが発生し、これらが脂質膜を含む細胞成分を攻撃し、その結果として重度の炎症を引き起こすと考えられている
  • 光毒性を生じやすいキノロンとしてロメフロキサシン・シタフロキサシン・スパルフロキサシンが知られている
  • 光毒性はキノロンの化学構造と密接な関連があると知られている
  • 特に、8位のハロゲン化および6位のフッ素化が重要であると考えられている
  • 逆に、8位がメトキシ化されたキノロンでは光毒性は稀である




 

 

 

アナフィラキシー

  • βラクタムなど他のクラスの抗菌薬と比較して、キノロンによるアナフィラキシーは少ない
  • 種々のキノロン類との間でIgEの交差反応性は比較的明確に認められており、あるキノロンに対して過敏症の既往を有する患者では、クラス自体を必要がある
  • キノロン自体に直接的なヒスタミン放出作用があり、皮膚試験の結果は信頼性に乏しい




 

コメント

私が調剤したケースで使用していたのは、トスフロキサシンだったのですが、これの用量‐毒性について検討した試験は発見できませんでした。

 

 

そこで、このレビューを参照したわけですが、やはり具体的なdoseと毒性発生の頻度についてまでは言及されていませんでした。それを裏付けるだけの十分なデータがないということの表れだと思います。

 

 

しかし、薬理学的な機序を見れば、マグネシウムイオンに対するキレーターとして振る舞うことが重要であると読み取れ、ということはキノロンによる関節・腱毒性はやはり用量依存性があると考えるのが自然でしょう。

 

 

以上を総合すれば、該当薬物の常識的なdoseを超えるような使い方はリスクが高いと判断する、という極めて当たり前な姿勢が無難となるでしょうか。やや歯切れは悪いですが、臨床とはそんなものだという一例かもしれません。

 

 

では、また次回に。




 

Reference

  1. Owens RC Jr, et al. Antimicrobial safety: focus on fluoroquinolones. Clin Infect Dis. 2005 Jul 15;41 Suppl 2:S144-57. PMID: 15942881
 
 
 
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