薬剤師のためのEBMお悩み相談所-基礎から実践まで

EBMの基礎の解説、薬剤師業務に役立つ情報の紹介、学んだ内容の共有。これらを総合して行う、薬剤師生涯学習の拠点を目指します。


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こんにちは、黒田です。

 

 

少し前にわけ合って、線維筋痛症に対する薬物療法について調べる機会があったので、そのとき学んだ内容を簡単にまとめておきます。

 

 

参照したのは、以下のシステマティックレビューです。

 

 

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Macfarlane GJ, et al. EULAR revised recommendations for the management of fibromyalgia. Ann Rheum Dis. 2017 Feb;76(2):318-328. PMID: 27377815

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薬剤クラスごとに、治療効果を検証した結果がまとめられていたので、以下に要点を抜粋します。

 

 

 

 

 

 

 

 

アミトリプチリン


Hieter et al.

 

  • 30%以上の疼痛緩和のリスク比:1.60 (1.15 to 2.24)
  • 上記NNT:3.54 (2.74 to 5.01)
  • 睡眠に対するSMD:-0.56 (-0.78 to -0.34)
  • 疲労に対するSMD:-0.44 (-0.71 to -0.16)


Nishishinya et al.

  • 6-8週の治療で疼痛・睡眠・疲労が改善
  • 12週では改善せず
  • 50mg/dayのdoseでは無効



 

 

 

 

プレガバリン


Cochraneレビュー

 

  • 疼痛緩和には一定の効果が認められる (下記)
  • 50%以上の疼痛緩和のリスク比:1.59 (1.33 to 1.90)
  • 上記NNTB (number need to benefit):12 (9-21)
  • 「much」または「very much」改善のリスク比:1.38 (1.23 to 1.55)


疲労・睡眠に対する効果は非常に限定的 (下記)

  • 疲労に対するSMD:-0.17 (-0.25 to -0.09) で、1-50スケールで2.7%の改善に相当
  • 睡眠に対するSMD:-0.35 (-0.43 to -0.27) で、1-100スケールでの6.2%の改善に相当



 

 

 

 

 

シクロベンザプリン

  • 改善の報告を行うNNT:4.8 (3.0 to 11.0)
  • SDMはプラセボと同じくらいしかない

 

 



 

成長ホルモン

  • 疼痛に対する効果量:1.36 (0.01 to 1.34)
  • 機能障害に対する効果量:1.24 (-0.36 to 2.84)
  • 睡眠時無呼吸・手根管症候群など安全性に対する懸念がある






 

モノアミンオキシダーゼ阻害剤

  • 疼痛に対する効果量のプラセボ群との残差:-0.54 (-1.02 to -0.07)
  • 睡眠・疲労に対しては効果なし



 

 

 

NSAID

  • あまり検証された試験は多くないが、プラセボに対する優越性は証明されていない




 

 

SNRI


デュロキセチン

 

  • 30%以上の疼痛軽減リスク比:1.38 (1.22 to 1.56)。20-30mg/dayでは効果が認められず、60-120mg/dayでは投与量による差はなかった
  • 12週までのNNTB:6 (3 to 12)
  • 睡眠に対するSMD:-0.24 (-0.37 to -0.12)
  • 機能障害に対するSMD:-0.33 (-0.43 to -0.24)


ミルナシプラン

  • 30%以上の疼痛軽減リスク比:1.38 (1.25 to 1.51)
  • 倦怠感に対するSMD::-0.14 (-0.19 to -0.08)
  • 機能障害に対するSMD:-0.16 (-0.23 to -0.10)
  • 睡眠に対しては効果なし





 

SSRI

  • 疼痛に対する効果量の残差:-0.40 (-0.73 to -0.07)
  • 睡眠に対する効果量の残差:-0.31 (-0.60 to -0.02)
  • 疲労に対する効果量の残差:-0.17 (-0.46 to 0.11)



 

 

 

ナトリウムオキシベート

  • 疼痛に対する効果量の残差:0.44 (0.31 to 0.58)
  • 睡眠に対する効果量の残差:0.47 (0.28 to 0.66)
  • 疲労に対する効果量の残差:0.48 (0.35 to 0.60)
  • 効果は比較的高めだが、安全性に難があることからFDAとEMAは承認を拒否している




 

トラマドール

  • 30%以上の疼痛改善リスク比:1.77 (1.26 to 2.48)


 

 

 

オピオイドおよび副腎皮質ステロイド

  • 基本的には使用すべきでない
 
 
 
 
 
 
 

通読した印象

線維筋痛症に対する治療効果の指標としては、以下の3点が重要なようです。
 
 
  • 疼痛
  • 睡眠
  • 機能障害
 
 
取り上げたシステマティックレビューにおいても、上記の3点から効果の記載がされていました。まず、おおむねどのクラスの薬剤に関しても共通していえるのは、疼痛改善効果は比較的認められやすいものの、睡眠や機能障害に対する効果はあまりないものが多い、ということです。上で紹介した薬は、神経因性疼痛などに使用されるものも多く、作用機序を考慮しても、ある程度妥当な傾向といえると思います。
 
 
同時に、疼痛に対するNNTは多くの薬剤で低めである、つまり使用すれば効果が認められる可能性は高めであることも読み取れます。しかしながら、疼痛に対する有効性の指標は一般に、「ベースラインから30%以上の改善」をカットオフにしているようで、例えば50%の改善と70%の改善は、この指標では区別されていません。
 
 
この点と、低めのNNTを持つ反面、疼痛改善に対する効果量は小さめであることを考え合わせると、「多少は効くけど、劇的には効きにくい」ケースが多いということになるでしょう。
 
 
反面、かなり大きな効果量を示した薬剤が2つあります。成長ホルモンとモノアミンオキシダーゼ阻害剤で、特に成長ホルモンの疼痛に対する効果量1.36という数字はかなりのものといえます。ですが、検証された試験そのものが少数であり、そういった意味では頑健な数値には程遠いのも事実です。今後の検証次第では、他の薬剤と比較して効果的な治療法となりえる可能性もありますが、投与法が煩雑なことや副作用のリスクを総合すれば、イマイチなポジションに落ち着く可能性の方が高いと個人的には予想します。
 
 
参考までに、取り上げたシステマティックレビューにおける推奨を、以下に掲載します。薬物治療においては、ある程度の実績がある、アミトリプチリン・SNRI・トラマドール・プレガバリン・シクロベンザプリンが記載されています。その一方で、推奨の強さはいずれも「weak」となっています。
 
 
 
 
 
 
このように、現状では「使って多少改善すれば御の字」といった趣で、線維筋痛症に対する薬物治療はまだまだ発展途上といえるでしょう。疾患の性質を考慮すれば、データの蓄積には時間がかかると思いますが、今後得られる知見には引き続き注目したいところです。
 
 
 
では、また次回に。
 
 
 
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