薬剤師のためのEBMお悩み相談所-基礎から実践まで

EBMの基礎の解説、薬剤師業務に役立つ情報の紹介、学んだ内容の共有。これらを総合して行う、薬剤師生涯学習の拠点を目指します。


テーマ:

お久しぶりです、黒田です。

 

 

ここしばらく、会社の決算・新業務システムの導入などが重なり、ブログの方をケアする時間が全く取れない状態が続いていました。

 

 

結果的に、1カ月以上更新が滞る結果となりました。時折、SNS上などで「ブログ見てます」と声をかけていただくことがあり、嬉しく思うと同時に、申し訳なくもあります。今後は、もう少しマメに更新するように、努力いたします。

 

 

さて、このように久々の記事となったわけですが、そのテーマとして、ちょっと古い臨床試験を取り上げてみたいと思います。「APPROVe」という試験で (1)、雑誌に掲載されたのが2005年の3月ですから、実に今から12年前です。

 

 

 

 

 

 

 

APPROVe試験

いつものように、PECOTを使って読み進めていきます。

 

 

 

 

---------------------

 

Summary

 

  • 直腸結腸腺腫の既往のある患者に、ロフェコキシブを投与すると、プラセボと比較して、心血管イベントをはじめとした血栓症関連の副作用リスクが変化するか検討した、二重盲検RCT
  • 明らかにロフェコキシブ群で結果が悪かったため、試験は打ち切りになった

 

 

 

Study design

 

  • P : 2586 patients with a history of colorectal adenomas (直腸結腸腺腫の既往のある患者2586名)
  • E : 25 mg of rofecoxib daily (ロフェコキシブ25mg/day)
  • C : placebo (プラセボ)
  • O : serious adverse events that represented potential thrombotic cardiovascular events (血栓症に関連する重篤な副作用)
  • T : 二重盲検RCT

 

ITT解析も守られており、その点は問題なし。基礎的な患者背景は、以下の表の通り。

 

 

 

 

 

 

Result

 

試験は予定より2カ月ほど前倒しで終了となった。心血管イベントがロフェコキシブ群で多かったためである。具体的には、下表の通り。

 

 

カプランマイヤーを見ても、以下のように終始ロフェコキシブ群で悪い結果になっており、経時的に差が開く一方である。

 

 

 

 

---------------------

 

 

要するに、本来はロフェコキシブの安全性に関する検証を行うための試験だったのですが、結果的には同薬剤にとどめを刺し、市場から姿を消す直接的な契機になった試験というわけです (2)。

 

 

試験の結果に関しては、正直いって擁護不能という感じで、ロフェコキシブが心血管疾患のリスクを増大させることは、誰の目にも明らかでしょう。しかし、もう少し突っ込んで結果を見ると、違った側面が現れてきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

NNH=62.5という数字はどうなのか?

先ほど掲載したTable2を今一度ご覧ください。主要評価項目となっていた血栓関連イベントの発症率は、ロフェコキシブ群で3.6%、プラセボ群で2.0%です。

 

 

ということは、絶対リスクの残差は1.6%ですから、NNHはその逆数の62.5になります。この数字を、大きいと見るか、はたまた小さいとみなすか。この点は熟考に値すると思います。

 

 

もっとも、NNTやNNHは「いくら以上は大きい」などという風には論じられれるものではありません。こうした絶対値としての解釈よりは、類似した評価項目やシチュエーションにおける相対的な比較に主な意味があるといえるでしょう。

 

 

ただし、この試験結果をもとに、販売元であったメルクがFDAに承認取り下げ申請を行い、FDAがこれを認めた、という歴史的事実を考慮すれば、この当事者双方が「心血管イベントなどのNNH=62.5というのは、結構危ない数字だな」と考えたことは否定できないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NNT=50なのにダメ?

こうしたNNHに対する解釈それ自体をどうこういう意図は、少なくともここではありません。突き詰めれば、感覚論に近いものともいえますので。

 

 

しかしながら、その後発表された試験に対するFDAの反応には、どうにも一貫性を欠いているように見受けられるケースが多々あります。

 

 

 

具体例を挙げれば、2015年に発表された「IMPROVE-IT」がそれです。これは、10日以内に急性冠症候群で入院した患者に対して、シンバスタチを持いる場合におけるエゼチミブの上乗せ効果を検討した試験です (3)。

 

 

その結果ですが、主要評価項目である心血管死・心筋梗塞・脳卒中はエゼチミブの上乗せによって減少しています。絶対リスクの残差は2.0%ですから、NNT=50となります。おまけに、しっかりと統計学的な有意差もついています (3)。

 

 

対象にしている疾患やイベントに微妙な差はありますが、数値だけを見れば、APPROVeにおけるNNH=62.5よりも、こちらの方がインパクトがあります。ところが、この結果を踏まえても、FDAはエゼチミブに心血管疾患リスク低減効能の承認を認めませんでした (4)。

 

 

製薬企業の立場で考えれば、これは納得いかないのではないでしょうか。かつてはNNH=62.5という数値を重く見て、ロフェコキシブの承認を取り消しておきながら、それを上回る臨床効果を示した試験結果を引っ提げて承認申請したエゼチミブは否定されたのですから。

 

 

APPROVeからIMPROVE-ITまでの期間は約10年。これも時代の変遷だ、といわれればそれまでなのかもしれませんが、何らかの意図を持った対応に感じられるのは、あまりにも穿った見解でしょうか。

 

 

なお、ここでは詳しく述べませんが、IMPROVE-IT自体にも無視できないレベルのデザイン面での問題があります。しかし、これを踏まえてもなお、FDAの対応には疑問を感じますし、APPROVeと同程度の水準で考えるなら、もっと他にも承認を取り下げて然るべき医薬品が存在すると思います。このあたりは、次回以降で述べる機会があるでしょう。

 

 

 

では、また次回に。

 

 

 

 

 

Reference

  1. Bresalier RS, et al. Cardiovascular events associated with rofecoxib in a colorectal adenoma chemoprevention trial. N Engl J Med. 2005 Mar 17;352(11):1092-102. PMID: 15713943
  2. FDA, Vioxx (rofecoxib) Questions and Answer
  3. Cannon CP, et al. Ezetimibe Added to Statin Therapy after Acute Coronary Syndromes. N Engl J Med. 2015 Jun 18;372(25):2387-97. PMID: 26039521
  4. http://www.businesswire.com/news/home/20160215005687/en/Merck-Receives-Complete-Response-Letter-U.S.-FDA
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

黒田真生さんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。