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2015-04-11 10:29:30

ソーシャルとクラウドをめぐる二つの失策

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今朝ですが、とんでもなくドキッとする事態に見舞われました。

その前に、まず私の最近のネットをめぐる失策の一つ目について関係する皆さんに謝罪です。
先日、後輩に勧められLinkedinにサインナップし使い始めました。
その際に、どうやら私のPC上にある連絡先へのアクセスを不用意にも許可し、その結果、スパム状態でもって、連絡先登録している皆様に「Linkedinを始めましょう」みたいなノーテンキなメールを送りつけていたようです。
申し訳ございません。
しかも、その後、アクセスするデバイスを変えて、せっせと情報を入力していたわけですが、それでもってまたも「つながりを増やしましょう」みたいなメッセージに乗せられて、どうやら再び連絡先へのアクセスを許してしまいました。
そうしたところ、二度(多い方ですとなぜか三度)も同じメールをお届けする結果を招きまして、会う人会う人次から次と「いやあ、せっかく誘ってもらったんだけど、Linkedinはやらないんだよね」とか「しつこいよね」とか当然と言えるご非難をいただきました。
すみませんでした。
でもって、さらに、わざわざ電話をもらって「やってない」とかメールで「やらないことにしている」など、結構な草の根のソーシャル普及調査みたいになってきまして、本当に恥じ入るばかりでした。

さて、今朝方ですが、えらい目にあいました。ソーシャル事故につづいてクラウド事故でした。
私、Dropboxのヘビーユーザーでして、何でもかんでもDropboxに入れているんです。
というのは、いろんな場所で仕事するのにすごくいいものですから、まあなんでもそこに入れていたわけです。
で、年間幾らかの金も払って何テラバイト使えますみたいになっていました。
ところが、最近、家のPCからアクセスしますと、「容量が超えていて同期できません」などというメッセージが出るようになり、テラバイト級で使えるのにそんなはずはあるまいと密かな怒りを抱えていたわけです。
そんなさなか、今朝方ですが、いよいよ「容量が超えている」というメッセージが気になり、「ああこれは、ローカルの容量が足りないってことかな」と思い、空き容量を見たらもうゲージが振り切れそうなくらい一杯になっていたわけです。
ああ、こりゃ随分と知らぬ間にデータが増えたものだななどと思いまして【マイファイル】に入っている(家のPCはmac)データをざっと見たわけです。
すると、どうやら全部に近く「これはDropboxにはいっているものとさして変わらんな」と。これは即刻解消せねばとばかり、全部デリートしたわけです。
まったく不安などありませんでした。なんせ全部Dropboxにバックアップがありますんで。
ところがです。
綺麗さっぱりゴミ箱に入れて、全削除して気持ちよくなってから、Dropboxを見て冷や汗が出ました。
どうやらそれって全部Dropboxと同期していたんですね。
綺麗に跡形もなくDropboxからデータが消失していました。
慌ててWiFi切ったりしましたけど、もうダメですよね。
でも、よかった。
もし同じように完全に同期しているならオフィスのPCにすべてあるはず。
そこから居ても立ってもいられず、愛妻が作ってくれた朝食も何を食べているかわからない状態で、取るものもとりあえず、こうしてオフィスに急行した次第です。
いま、Dropboxにバックアップしていたはずのデータをローカルにバックアップしています。もうなにがなんだか。
ああもう、とにかく利用方法を改善しないとやっていけません。
Dropoxでは選択的同期によってローカルのデータ量をセーブできるそうです。知らねえし。
ひとまず、以上です。

https://www.dropbox.com/ja/help/175
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2015-03-31 16:16:51

相場と無縁であろうといコンセプト(続き)

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EDLPという小売りにおける標語はもうずいぶん古びた印象があります。
everyday low price。
ずいぶんと昔から、いろんな企業がそれを掲げ、目指しました。

ところが、最近、そうした企業がめっきり減っているように思います。
「良いものをいつでも安く」の精神は日本のマーケットではすたれてしまったのでしょうか?
あるいは、魅力のあるアプローチとは言えないということでしょうか?
それとも、あまりにも一般化したコンセプトであるがゆえに、語るまでもないということなのか、このあたりが私にもよくわからなくなっています。

最近たしかに給料が上がる、ベア復活と言った「いい話」を耳にするようになりました。
しかし、それでも、日本で生活する者にとっての先行きへの不安はぬぐえていないと思います。
ここのところ詳細なデータは見ていませんが、日本で生活する者たちの給料は全平均で見れば上がってはいないはずです。
株が上がる、資産が上がる……そうした効果を享受できる層はごく一部でしかありません。
やはり、二極化(中間層が消えていく)の傾向は変わっていないのではないでしょうか。

だからこそ、安定した価格でモノが供給されてしかるべきと私は思います。
それは住宅(とりわけ「中古マンション」)にも当てはまると思うのですがどうでしょうか?
住宅を資産ではなく「生活必需品」として捉えれば、わかりやすいはずです。

前回、ACSが「どのように街を選定しているか」を書きました。
今回はどのように「もの選び」しているかについて「生活必需品」供給者の視点で説明させてもらいます。
ACSでは2K3Hの「もの選び」を大原則においています。

2Kとは「価格」「距離」(通勤先・通学先への距離・時間、駅からの距離・時間)。
3Hとは「陽当たり」「広さ」「部屋の数」です。
一等はじめに、「価格」が出るのは、消費者の意識がそこに強く働いていることをデータでも、現場実感でも確認できているからです。
なによりも「買える価格」「ほしい価格」(つまりは安定した価格)で提供することが供給者には求められているのです。

それ以外の「距離」「陽当たり」「広さ」「部屋の数」にもお客様が望む典型像がしっかり存在していますが、なによりもやはり価格が大事だと私は捉えています。
そして、供給者として「価格」のコントロールが一番難しいといえます。
他の4つの要素は多少妥協する余地がありますが、価格だけは譲れません。
それは常にお客様が望む価格でなければならないのです。

ところが、当初ACSは、自分たちが供給できる価格でものを見ていました。
もちろん、当時もそんな意識はありません。相場を見ていましたし、取引事例を穴が開くほど見ていましたので。
でも、それはお客様が望む価格ではありませんでした。
いったいお客様はその物件をいくらで買いたいだろう? この極めて素朴な解をどう導き出すかがカギでした。

つまり、その価格で提供しようと考えると、自ずと物件のスペックが決まってくるようになったのです。
そこでおもしろい現象にも気づきました。
それは、同じマンションで専有面積の「狭い部屋」が「広い部屋」よりも理論上高く査定されるべきという結論が生まれ始めました。
もちろん、理論上ではありますが、価格を詰めて考えていくと、どうしてもそうなってしまう事態でした。
時間になりました。また、続きを書かせてください。
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2013-10-14 11:45:00

昇給

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「物価は上がるは、消費税は上がるはで、先行き不安ですよ。ったく、給料はちっとも上がる見通しがないってのに」
てな具合の映像が最近ずいぶん流れております。
ロケ地はだいたい新橋の汽車ぽっぽ広場。
(世のお父さんたちが嘆く姿を繰り返し流すマスコミは「不幸大国」日本を盛り上げたいのでしょうか?
つい1年ほど前の選挙で「日本はインフレにする!」という宰相候補に何の文句も言わなかったくせに。
実際インフレになったら、物価上昇と言い換えるんだから始末が悪いです)


さて、この先、みんなの給料は上がるでしょうか?
即答ですが「上がります」!
私は経済学者でもなければ評論家でもありません。
でも、給料についてはそこそこ詳しい方だと思います。
加えて、自分なりに世の中の方向を見る感度はある方だと思います。
で、端折って見解を言わせてもらえれば、みんなの給料は上がるよ。
(すごく簡単に言えば、インフレって給与の上昇のことでしょ!
あとは、同じ意見の識者に聞いてください)


一方、平均所得が404万円とか、そのうち、非正規雇用については170万円とかそういう報道もあって、悪いムードが漂いました。
「やっぱな……もう、オレたちの給料上がんねえし」みたいな。
「ずっと下がりっ放しだし。老人多いし。年金上がるし。消費税上がるし。むりっ」みたいな。
そんな感じになってるのが、よくないと思っておるんです。


そもそも給料がどのように決定されるのかを考えないといけません。
思わず図を作っちゃいましたよ。

給与の構造KK

このようにですね、会社というのは自分が支払える以上にあなたに給料を払うことはできないのです。
そりゃそうですよね。儲かってないんだから払えない。
ところが、儲かってるからって払ってくれるとは限らないし、実際払わない。
で、意外なことに働いているあなたも文句を言わなかったりする。
つまり、あなたの給与はあなたが決めている。


ちょっと話が飛んだ感じなで、別の整理の仕方をしましょう。
会社が作っている評価制度なんて所詮みんなを納得させる道具に過ぎません。
公平性だのなんだのとゴタクを並べても、結局はあなたが納得する水準に給料を落着させる装置なんです。
もしですよ、あなたの納得できる半分の給与しか会社が払わない(「払えない」ではない)と言ってきたらどうします?
辞めるんじゃないかな。たぶん。でしょ?
だから、会社はさすがにあなたが得られると期待している給与の半分を提示するってことはしません(これ、理論上の話ね。いきなり給料を半分にしたら労基署が黙ってないとか、10%以上の減給はできないはずとか、そういうのはやめておいてください)。


で、あなたが得られると期待している給与額はどうやって決まりました?
もしかして、会社が決めてませんか?
知らず知らずのうちに「私はだいたいこんな稼ぎ」って思い込んでませんか?
歴史的に給与額の安い業界というのが存在します。
言いにくいけど(言っちゃうんだけど)、旅行業界、流通業界ね。典型例です。
ここにもたくさん優秀な人がいますが、ずいぶん安い給料で納得しています。
それが悪いとは言いません。
たとえば、旅行業界は競争が厳しいですし、あまり儲かっていない。
だから会社としての支払能力が低い=だから給料が安い。これは仕方ないですね。
でも、それが果たしてあなたの市場価値かというと、そうじゃないかもしれないわけです。


話が趣旨からズレました。軌道修正しましょう。
要は、あなたの給与は実はあなたが決めている。
会社に支払能力がある=儲かっている(いま、会社は結構儲かってますよ)のに、あなたは給料が上がらないことに納得してしまっている。
それはダメです。(経営には好都合です)
長いことデフレが続いて、みんなは給料が上がることを忘れてしまった。
っていうか、それぞれの能力を「売り込む」ことを忘れてしまっています。
「オレはこれだけ稼いで、会社に貢献してる」「オレの売上上昇は年率20%以上だ!」「だから給料を上げてくれ!」
そう言えばいいんです。
えっ、そんなに活躍していない?
いやいや大丈夫。そんなもの、言ったもの勝ちなんですよ。黙っていたら損をするんです。
「私は目には見えない貢献をしている」「地味かもしれないが、人知れずコツコツと実績を積んでいる」
見えなくて、人知れずの貢献を誰がわかります? わからないんだからドンドン主張すればいい。
主張しているうちに、自分が役に立っている部分が見えてくることもありますよ。
つまり、自分で主張すべきポイントを探して、会社にぶつけていくべきなんです。


そんなことで、給料は「上がる」ものではなく「上げる」ものなんだということで今日は終えておきます。
次回、もしかしたら、昇給を獲得するコツを例示しちゃうかもしれません。
(しないかもしれません)
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2013-08-18 14:39:18

直貼

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体調について語るようになったら年だと思えと言う。
その通り過ぎて反論のしようがない。
だから、体調だとか健康だとかについては語らないようにしようと思っている。

同じように「俺も年だからさぁ」とか「40を過ぎたあたりでガタっときてさ……」
(私はこれに該当していない、例に過ぎない)とか「なんか白髪増えてね?」とか「ちょっと薄くなってきちゃってさぁ」みたいな話をできるだけ遠ざけている。
これを現実を直視しない逃避姿勢と受け取ってもらいたくない。
そうではなく、意識的に遠ざけることでの攻めの姿勢なのだ。

だから、一瞬の反応にも気を遣う。
さすがに、立ち上がりながら「よっこらしょ」はない。
しかし、柔軟性の乏しさによる筋肉の引き吊りなどで「あたっ」「あぐっ」「うぐっ」といった唸りはつい出てしまうものだ。
それでも、注意すれば抑制はできる。
気付かぬうちに発する唸り声で加齢を見てとられてはかなわんのだ。

何が言いたいか?
聞きたくないなら読まないでくれ。もう。
もうどうせ、行き当たりばったりに書いているだけなんだから。
要は、体調うんぬんを書きたいわけじゃないのだが、書こうと思っているという前置きなのだ。
(この前のブログでも体調の話だったからね……ネタないのかよ、他に……)

そろそろ、本論に入ろう。
私が長年悩み続けてきたすごく軽い疾病(?)というか症状(?)がある。
これはもう子供の頃からだから相当に長い間悩んでいる。
(ここから気持ち悪くなる可能性が高いから気を付けてもらいたい、読まない方がいいかもよ)

それは口内炎だ。
どいうわけか3ヵ月程度の周期で現れるこの厄介な軽い疾病は、まさに私にとって小さな大問題。
いや大きな小問題か! まあ、それはいい。
それはいいとして、とにかく周期的にやってくるこの口内炎が毎度毎度痛いのなんのって。
出来たら最後1週間2週間痛いまんまで、好きなコーヒーもマズイ、ワインもマズイ、何を食べてもうまくない。
その上、打ち合わせの間も痛い。発言をするにも痛い。
仕方なく、大事なこと以外発言しなくなったりする(場合によっては大事なことまでどうでもよくなる)。

こんなことを考えたこともある。
この忌々しい患部をいっそ焼いてしまったらどうだ!(余計ヤバいでしょ)
そうだ、痛いんだから何も食べなきゃいい!(腹減るし)
病院に行こう!(薬を処方されるだけで即効性はない)
チョコラBBの大量摂取だ、まとめて一瓶飲めばどうだ!(全然ムリ)
なんでもいいから、すぐに効く対処法はないのかよ! クソっ! といつもこういうぐるぐるとした思考循環を繰り返すばかりだったのだ。つい昨日まで。

いや、マジでたまには薬局にも行くもんである。
ありました。新しいテクノロジーがあった。
ケナログじゃなくアフタッチ(これ出た時はすごいと思ったけど、結局そんなに使えなかった)でもなく、「トラフルダイレクト」ってのがあったんです。
口内炎で悩んだことない人は全く関係ない話だけど、このトラフルダイレクトは良い!

一見すれば円形の紙ですね。
いわば薬効成分が沁みたハイテクの紙ですよ。
まあ、成分は昔からあるケナログと同じなんで、そこはシラケるんだけど。
患部にきれいに貼りついてしかも剥がれない!
簡単には剥がれないから患部がガードされて気分晴れ晴れ。
不自由なく……とまでは言えないけれど、大げさに言うと、患者のQOLは相当上がります。
だって、食べたり飲んだり話したりがすごく楽なんですもの。うふん。

ただまあ、成分は「トリアムシノロンアルデヒト」ってやつ。
名前だけ聞くと毒としか思えない。
実際、ステロイド成分らしいからあんまり使っちゃいけないのかな。
このあたり、名前のおどろおどろしさ以上に副作用の知識なんてゼロだからただ怖がっているだけだけど、とにかくこれは便利。
それが言いたくてこれだけ書きました。
所要時間35分。長いっつうの。

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2013-07-20 13:20:26

異臭

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(内容が気持ち悪いので読まないほうがいいかもしれません)

一人異臭騒ぎである。
つまり、誰も騒いでいないのに、一人だけ異臭がすると騒いでいるというわけだ。
私の嗅覚はそこまで敏感ではない。
ところが、今週立て続けに異臭問題が発生した。
(これを個人的には異臭イシューと呼んでいる)


最初に感じた異臭は異臭というよりも悪臭だった。
夏場だけに仕方ないだろうが、狭い会議室の場合、どうしても換気が悪くなる。

その場は「若い男子がいるから部室っぽいのは仕方ない」とうことですませた。
犯人にされた男子はたまったものではなかろうが、まあ、その程度で終わったわけだ。


ところが、間もなく本当に堪え難い臭気に襲われた。
それはMくんが運転する社用車(作業車)で起きた。
ある場所まで便乗を決め込んだ私が助手席のドアを開ける。
マックス状態のエアコンが、うなりを上げ勢いよく冷気を吹き出していた。
乗り込みぎわ前屈みになった私の鼻腔に、その人工風が直接ぶち当たった。


この瞬間、堪え難い異臭が鼻腔内に広がった。
臭気について言葉で表現するというのはなかなか難易度が高い。
難易度は高いがこれも訓練だと思って綴ろう。

まず、はじめに鼻が受け止めるには明らかに大きい粒子が鼻腔の奥ではじけた。
はじけた直後、ツンと頭の奥にまで突き上げる刺激があり、刹那軽いめまいを覚える。
それから芋焼酎を極限まで蒸留してムンムンさせたような強烈な臭気が鼻腔内に充満した。
臭いは静かに腔内に沈殿していく。古い醤油を凝縮した重い香り。そこに、シンナーのような化学材料を混ぜたような匂いが加わった。

化学臭と芋焼酎をムンムンさせた臭いの由来は同じかもしれない。
ワインで言えば、一次アタックと二次アタックの原因物質が同じというケースだろう。
分析するに、古い醤油の臭いに頭がガンガンする化学臭を混ぜたような臭いということになる。


すぐにエアコンの吹き出し口を閉じ、車が動き出すと同時に窓を全開にした。
鼻を塞ぐ手を緩めず、運転するMに考えられる原因を尋ねる。
尋常ではない異臭だというのに、なんとMは半笑いである。

「昼に食べたラーメンのせいですかね?」
Mは薄笑いを浮かべたまま答える。
しかも、的外れとしか思えない回答だ。
この男が食べたラーメンの臭いが、車のエアコンから、こんなに勢いよく吹き出すわけがない。

「ニンニク入れたんで」
就業中だというのに生ニンニクをラーメンに入れて美味しく食べたことを臆面もなく告白するM。
しかし、ニンニクくらいでこれだけの異臭が生まれるわけがない。


言うまでもなく、異常であるか正常であるかは相対的に判断される。
どうやら、この異臭は私にだけ感じられるものなのだ。
つまり、異常なのは臭いではなく私かもしれないわけだ。


この事態を共有した身近なスタッフがポツリ。
「脳梗塞で倒れた祖父が同じようなこと言ってたんですよねぇ」


異臭イシューなどとふざけている場合ではない。
病院、行こうかな……
人知れず弱気になる週末である。
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2013-07-02 11:41:05

入力

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仕事において、少しでも効率を上げたいとか、有意義な結果を得たいとか、そう考えるのはごく当たり前のこと。
私も常にカイゼンと思って自分の仕事の仕方を変え続けております。




最近、私が取り組んだ結果、有意義な結果を得られた代表例は「フリック入力」です。
えっ? とお思いの方もおいででしょう。
しかし、これが私のモバイル生活を劇的に変化させたといっても過言ではありません。(ちなみに、この文章もフリック入力で作りました)
つまり、iPhoneでかなりの文章を(ストレスなく)打つことができてしまう。
(自分の中で)これはなかなか大きな変革でした。



最初にフリック入力の存在を聞かされた時には、誰がそんな面倒なことをするかい! とまあそう思ったものです。
しかし、ある時、滅多に会わない血縁者(娘)から便利だよと勧められ、チャレンジ精神が沸き起こりました。
彼女いわく「丸1日、死にそうになりながらでもやり続ければOK。すぐに慣れるから」とのこと。
一度覚えれば、それはもう劇的に早打ちができるということでした。




それから丸一日格闘しましたが、全くインプルーフメントはありませんでした。
さらに我慢すること1週間。それでも、「ふ」と「ひ」と「へ」を間違う始末(それはつまり「う」と「い」と「え」を間違うといういことであり、すなはちそれは、ほぼ毎回打ち間違うということ)。
それでもあきらめないのが私の偉いところです。もはや意地とばかり効率を無視してフリックし続け、ようやっとマスターしました。
(娘が丸一日でできたことを私は丸1カ月要してようやく身につけたということであります)




それでも、その苦労による収穫は大きなものがありました。
私がひそかに目指したのは「ペーパレス」と「脱PC」です。
PCは確かに便利ですが、いくら軽量化されたとはいえそうそう持ち運ぶ気にはなりません。
そこでスマホとタブレットでできてしまうことはできるだけやろうと。
さらに、紙によるメモやら何やらをなくそうというチャレンジには、思い浮かんだ瞬間にその内容を記録するデバイスが必要になるわけです。




たとえば、あるアイデアが浮かびます。
(私の場合)それをすぐに忘れてしまうので、どうにか記録に取る必要があります。

蛇足ですが、私はこれまですごく良いアイデアが何度も浮かんだことがあります。
ところが、それらの相当程度を実現できていない。なぜなら、それを忘れてしまったからなんです。
あの時、メモさえ取っていれば、今頃スゴイことになっていたかも知れんわけです。

話を戻しますと、そんなことで、私は何とかアイデアを記録したい。
過去で言うと、ボイスレコーダーを常備したり、iPhoneのボイスレコーダーを無理に使ったり(同じですみません)。
そういう苦労をしてきましたが、結局、手帳にメモを取るのが一番間違いがありませんでした(当たり前です)。
今や、手帳へのメモを上回る効率をフリックを駆使したメモ入力によって実現しています。




これをやり始めて便利なのは、スタッフとの共有もすごく楽だということ。
思い浮かんだアイデアをメモに入力してすぐにメール送信という一連の動作になります(まあ、そんなもんを受け取るスタッフ側は迷惑かもしれませんが……)。




さらに、リマインダーにペーストすれば、納期管理も可能になります。
実は、このリマインダーがまた、私にとって病的に馴染んでます。
リマインダー自体はいろんなツールで実現可能でしょうが、私がなついてしまったのはiPhone、iPadに標準装備されているヤツ。
そもそもはソフトバンクショップのお姉さんに勧められたのがきっかけです。
何かの締め切りを忘れないようにと、得意のフリックで入力すると、なんだか使いやすい。
それ以来、何かとリマインダーで行動管理するようになった次第です。





さて、これによる問題点ですが、どこにいても何か気付いたときにiPhoneをいじり始める失礼なヤツになってしまう点でしょうか。
まあ、とにかくも着実にペーパレスと脱PCを目指しております。

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2013-06-25 16:15:59

頭蓋

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 目の前にいる男の二十年前を思い出していた。目はくりくりとして可愛らしくさえあった。天然巻の長髪とすっきりしたアゴのラインが女性たちを虜にしたものだ。
 それが今はどうだ。どこにアゴのラインがあるのかもわからない。額はすっかり広がって、あれだけ澄んでいた瞳は黄色く濁り、目の玉がクリクリではなくギョロギョロ動いている。この男の妻を思うと、ただ気の毒でしかない。

「……ですからね。いっそのこと消してしまったら楽になると思って。それで手術っていうんですかね。受けようかどうか。まあ迷ってるわけですよ」
 えっ? 手術? 後輩の変わり果てた風采に気を取られるばかりで、話をまともに聞いていなかった私は、捨て置けないその語感に反応した。
 手術って、おまえ、なんか悪いの? 夢からようやく覚めたような素振りの私を軽く睨んでから後輩は続けた。
「ですからね、嫌なことばっかりなんですよ。ここのところ毎日。まあ、仕事もそうだし、家でもそうです。最近、スタートしたプロジェクトは何が目的なのかもはっきりしないし、いつ予算が打ち切られるかもわからない。おまけに、上役なんてまともに説明も求めてこないですから」

 後輩は誰でも知っている大手企業の管理セクションに身を置いている。大学を卒業して以来、辞めずに務まっているのだから、きっとそれなりに評価されているのだろう。ところが、久しぶりの再会から1時間というもの、ほとんど愚痴ばかりだ。いわゆる中間管理職として板挟みに苦悶しているのだろうが、こちらが聞き流したくなる愚痴っぷりなのだ。
「だいたい先が見えないことばっかりですよ」
 投げやったように後輩が言う。しかし、どこの世界で先が見えるというのか? それを返しても無駄であろうから、ただ黙して聞くしかなかった。
「ところがですよ。いつ打ち切られるかわからないプロジェクトなのに、人だけは何だかアサインしてくるわけですよ。もしかしたら、これはリストラ用のプロジェクトを偽装してるんじゃないかと思うんすよ」

 いよいよ、後輩の目つきがあやしい。いくら企業が巧妙にリストラを画策しようとて、わざわざ偽のプロジェクトを仕立てるなど考えにくい。ましてや、後輩が属する企業は、私が知る限りイギリス貴公子並みに上品なのだ。
「まったく先を考えると、嫌なことばっかりですよ。最近、プロジェクトに加わった社員は組織に要求するばかりでロクな働きもしない。たぶん、上司は僕にヤツのマネジメントを押し付けて、うまく辞めさせたら評価して、働きが悪ければ僕のせいにするつもりなんだ。そうじゃなきゃ、あんなヤツを……」
 あんなヤツがどんなヤツなのか、こちらには見当もつかないが、とにかく後輩にとっては耐え難いことなのだろう。上司が部下の手柄を取り上げ、失敗をなすりつけることはどんな会社でも起こりうることだ。これについては、妄想だと断じるわけにはいかなかった。

 でもな、お前、そんなに思い詰めなくっても、どうせプロジェクトはなくなるんだからテキトーにやっておけばいいじゃないかと差し挟んだ。
「いいですねえ、経営者は」
 すっかり全部をあきらめたように吐き捨てる後輩。思い直したように向き直って話を続けた。
「テキトーになんてできるわけないじゃないですか。こっちはサラリーマンですよ。いくら組織がリストラのために仕立てたプロジェクトでも、一生懸命やらなきゃ、いつ飛ばされるかわからないんですよ。地方にでも飛ばされたら、もう立ち直れないっすよ。営業なんか二度とやりたくないし」
 後輩の会社は伝統的大企業だが、確かに前線はなかなか競争的だ。営業の最前線で経験を積み、やがて本社勤めになり楽をするというのが、この会社における憧れのジョブローテなのだ。目の前の男はどうにかそのローテに乗っている。
「ですからね。プロジェクトが失敗ってことで終了になったら、僕の次はないんすよ。だから、それを考えると、もう気分が滅入って……毎日を過ごしていく自信がなくるんすよ」

 おまえ、うつ? 言いかけた言葉を何とか飲み込んだ。もしも後輩がウツなら、これ以上の反論は余計でしかない。私はただ耳を傾けるだけに集中しようと努めた。
「それで、あの先生に診てもらったってわけですよ。そうしたら、結構、言うことに筋が通ってる。人間の心配事のほとんどは実現しないって。それなのに悩むのは遺伝子的にプログラムされちゃってるからだって、そう説明されましてね」

 虚ろだった男の瞳に少しばかり生気が戻っている。どうやら、その先生とやらは、この男に希望らしきものを提示したようだ。
「扁桃体ってところに心配事が記録されてるらしいんですよ。そこは一時的な記憶の保存場所なんですけどね。要は当面する課題が多い時に、扁桃体がしっかり働くわけですけど、こいつがどんどん危機感を煽るらしいんです。つまり、人間が捕食されてた当時のプログラムが動くんですよ。周囲の環境が不穏な状態だと、それに反応して脳が危ないぞ、危ないぞって知らせるわけです。そりゃ、捕食されちゃう当時は、そうでなきゃ実際食われちゃったわけだから、正しいプログラムだったんでしょうねぇ。でも、人間が捕食されなくなった現代では、起きることもない心配事で人類は悩んでるってわけです」
 なるほど、確かに我々人間は出もしないお化けに怯えるということがよくある。だいたい不確実性の時代などと言うが、一体いつ確実な時代があったというのか? 人間、おかしなことを言うものだが、これも前史時代の遺伝子ゆえかもしれない。危機意識という名の強迫観念は人類共通に植え付けられたプログラムなのだ。
「それでまあ、治療を勧められたんすけど。どうも、最後の最後にビビっちゃって」

  彼が勧められた治療とは扁桃体の活性化を妨げ、逆に右脳の側頭頭頂接合部の活動を高める処置だ。それには、脳の特定部位に直接パルスを当てることのできるTMSー経頭蓋磁気刺激ーなるものが使われるという。
「扁桃体の動きを抑制すると余計なことを忘れられるらしいんですよ。でもって、右脳の側頭頭頂接合部を刺激すると、自他の区分が活性化して、自分勝手になれる。それで、先行きをいちいち考えなくなるってわけです。まあ、自分を騙すみたいなもんなんすかねえ」
  いい話じゃないか。それで、お前の気分が楽になるなら最高だ。そう、後輩に返すのだが、本人は今一つ浮かない。
「扁桃体は一時保存の場所ですけど、記憶とも蜜に連携してるんですよ。となると、もしかしたら、僕にとって大事な記憶も飛んじゃうかもしれない……そう思うと躊躇するんすよ」
  何を今更たわけたことを。無い物ねだりも大概にせえよと言いたくなった。
「いやぁ、怖いんすよ。子供たちのこととか、やっぱり大事だし。そういう思い出まで奪われるのは辛いじゃないですか」
 おまえ、一体どっちがいいんだ? つまり、先行きに怯え、出もしないお化けにヒビって生きるのと、お前のそのチンケな記憶とやらを持ち続けるのと? これは未来に生きるか、過去に生きるのかの選択だよ! 自分の指摘がはまり過ぎていることに酔った。後輩は黙ったまま俯いている。
 おい、しっかりしろよ! そのなんチャラいう先生を信頼したらいいじゃないか? その治療をやったからって、記憶が飛ぶとは限らないだろう? 後輩は何やら不満を抱えた様子のまま憮然としている。やがて、向き直るとギョロッとした目でこちらを見つめた。わずかだが、後輩の唇が震えている。

「だけど……あの先生、あなたが紹介してくれたんすよ」

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2013-06-16 15:18:27

点々

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さて、24周年という中途半端なタイミングでの小さな会は、25年目に突入するタイミングが25周年だという思い違いから行われた。
「だから、25周年っていうのは、人で言うなら25歳になった時を指すんだよ」と(私は)言ったのだが……
その勘違いの彼は人一倍情報拡散力が強い(多少不確定なことでも、どんどん見切りで突き進むタイプ)。


で、それを素直に受け止めスケジュールブロックしていた海外在住のメンバーから「あれってどうなったの?」と直前確認が入った(計画を立てたら、その通りにきっちり行動するタイプ)。


そんなことで、急遽「24周年の集まり」が設営された。
「直前で集まることだし、仲間内だけで……」という仕切り。仲間内以外に一体誰を呼ぶのかと思いつつ、一方、相当に仲間と思われる者たちが他にもいるのだが、そんな細かいことはお構いなしという堂々たる企画であった。


企画担当は大手商社の内定を蹴ってインテ一期生として入社した男(何かと内部的なことを企画する位置付けはそれなりの立場となった今も変わらない)。
それを操るのが冒頭の24年を25年と間違っていたメンバーだ。


創業の地、外苑前のビル前に集合。


若い頃は、わざと遅れてくるタイプだったメンバー(常にハイテンションのため夏より冬に会った方がいいタイプ)が先に到着していて驚く。
リーダーは半ズボンにサンダルで登場だった。
「(目の前にあった)イタリアンレストランがなくなってるぜ」と全員が同じ感想を述べてから、幹事仕立てのワゴン車へ。


でもって、3年度目に移転した南青山のビル(地下)へ移動した。
ビル前では、季節外れの大雨で浸水したことを大声で会話。20数年前の災厄を不吉に撒き散らしつつ記念撮影。



次に5年度目に移転した南青山の別のビルへ(これも地下)。

「おお、家具屋になってんだなぁ」などと一目瞭然の感想を口々に述べて即撤収。
その当時入社したある女性社員の名前が思い出せない問題が発生(これについては最後まで誰も思い出せずに終了)。



そして、青山学院前のオーバルビルへ。
「ここの何階にいたんだっけ?」
「……10階じゃね?」的な曖昧なやり取り。


我々にとって、オーバルビルと言えば地下のマクドナルド。
今となっては時効だろうが、当時、廃棄されるべき残り物のハンバーガーを夜中にタダでもらっていた。
「もらってるくせに、冷えたポテトはまずいとかって、文句言ったんすよね」とは、留年に留年を重ね二度入社して今は社長になっている男の弁だ。
確かに、冷めきったポテトはうまくなかった。食っていたから知っているのだが……



その間、海外在住のメンバーが当時はなかったファミマで買い物する姿が見えた。
「何買ったの?」
「持って帰ろうと思ってさ」
何かとは答えず、袋の中身を見せる彼。
中には男性向け汗拭きシートが入っていた。
シンガポールって暑いんだね……ってか、あっちに売ってないの?
大いなる疑問を抱えながら、車は青山の某レストランへ。



原点ってか、点々と転々であった。
お疲れ様でした。

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2013-06-12 09:12:38

無糖(2/2)

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 テレビ出演は白井にとって諸刃の刃だ。知名度がない自分にとってマスコミからの取材は願ってもないことなのだが、それはあくまで肯定的に扱われるときに限られる。



 「就業未経験者雇用促進法」の成立以来、その立役者として脚光を浴びる白井に対してマスコミは一様に好意的だ。しかしだからといって、一瞬たりとも気を抜くことはできない。地盤が全くない政治家だけにその危機意識は人並み以上に強い。



「さて、副大臣。あなたが成立に大きく関わった就業未経験者雇用促進法がダメ人材採用法だとかフリーター救済法などと言われていることに対してはどうお考えですか?」



 お茶の間で知らぬ者はいない有名キャスターが白井にせまる。しかし、そこには、嫌われ者を糾弾するときの鋭さはない。



「それは産業界の一部が法律の趣旨を曲解した結果に過ぎません。彼らは能力のない人材を無理に雇用しても活躍の場もなければ成長も見込めないと断言していた。ところが実際は、彼らが無能だと烙印を押していた人材を法律ゆえに仕方なく雇用したら、想像以上の働きだったというケースばかりです」



「強制雇用期間の二年間を過ぎても雇用を継続するつもりだという回答が七割を超えたそうですね?」



 キャスターが法案を肯定する方向に話を向けていく。白井にとって、それは申し分のない展開だった。



「その通りです。この法律が成立する前に大反対だった産業界において、一貫して法案に賛成してくれたある重鎮は『我慢して使っておれば、やがて必ず人は育つんだ』と仰っていました。その言葉通り、これまでダメだと思われていた人材がしっかり雇用され、訓練されることで一人前に育っていったわけです」



「まさに副大臣の狙い通りだったと?」



「そうですね、狙い通りでした。ここで申し上げておきたいもう一つの成果はブラック企業への影響です。ご存知の通り、本法律によって従業員数千名以上の会社は従業員数に対して1%以上、就業未経験の人材を採用しなければなりません。このことによって、ブラック企業が採用してきた人材が市場から消えてしまったわけです」



「その結果、ブラック企業の使い捨てがなくなったと?」



「そうです。対処療法ではなく、根本原因を修正することで事態が改善された好例と言えるでしょう。この法律はブラック企業を社会から排除する効果もあったわけです」



 法案における就業未経験者の定義はできるだけ拡大解釈できるよう設計されていた。新卒者がその定義から除外された上で、条文には「最初の就業以降、職務を発揮する上での十分な経験を有していない者」と極めて漠然とした表現しかされていない。その結果、いわゆるジョブホッパーと呼ばれる短期連続の転職者たちもその対象範囲と見なされたのだ。



 こうしてダメ社員採用法と揶揄される通り、日本の労働市場に滞留していたイマイチな人材たちが大手企業の「法律枠」で次々に採用されていった。結局、ブラック企業たちにとっての採用上の大票田があっという間に消失したのだ。



「まったくもって、副大臣は時代の立役者だ。これからも是非、画期的な政策を打ち出してください。今日はどうもありがとうございました!」



 キャスターは大げさな笑みを浮かべてコーナーを締めくくった。コマーシャルに入りセットの組み直しが始まると、まるで誰もいなかったように次の本読みを開始していた。



 



「いやあ、完璧でしたね」



 次の移動先への車中で秘書官はいつものごとく白井を持ち上げる。着任して間もない頃こそ、首筋にむずがゆさが走ったのだが、今ではすっかりそれが当たり前になっている。



「まあね。今のこの状況で、この法律を否定できる人間はいないからね。ブラック企業について触れられたのも収穫だったよ」



 党幹部の思い付きで発言されたブラック企業問題が、今こうして実効性あるかたちで結実している。その幹部からすっかり気に入られただけではない。強い保守思想を持ち、自由主義経済を根っから信奉し、金持ちと大企業が大好きと思われている今次政権が打ち出したリベラルな施策は党の支持層を増やす結果をももたらしている。今では、総理すら白井を高く評価するに至っていた。



「それはそうと、あのしつこい雑誌記者がまた面会を求めてきたので、適当にあしらっておきました。産業界との裏取引とか何とか、凝りもせず同じことを言っていましたが……」



 秘書官は世間話でもするように、まるでついでのことでも思い出したように報告した。秘書官が引き続き、この後のスケジュールについてブリーフィングする間も、白井は『裏取引』というおどろおどろしい表現を心の内で何度もなぞっていた。



『もし、企業に対して一定の解雇権を与えると言ったらどうでしょう? たとえば、五年以上勤務した社員や管理職であるなら自由にクビにしていいとしたら?』



 あの時、女性活動家が残していった重大なヒント。就業未経験者を全従業員の1%採用させることの見返りとして準備したものを反芻しながら、白井はその両手を固く握りしめていた。



 日本の企業には自由に社員を解雇する権利などない。一度、正社員として雇用すれば、よほどの業績悪化でもない限り、雇用調整することは不可能だ。それが、バブル崩壊以降、派遣を始めとする間接雇用活用の広がりを作り出した要因と言える。間接雇用なら、雇用調整がたやすい。それが若年の就業を妨げる結果を生み出したのだ。



 企業の本音からすれば、一番クビにしたいのは人件費の高い長期就業者だ。できることなら、中年以上の高給取りたちのクビを切り、人件費の安い若手を採用したいのだ。白井は女性活動家から得たヒントをもとに、こうした企業の本音を突いた。



『解雇権を与えるのは不可能です。しかし、長期就業者を有期雇用に切り替えられる法案をうまいこと通してしまうつもりです。それは、つまり……給料ばかり高くて働かない四十代や五十代を契約社員に切り替えられるということであり、契約期間が満了するとともに彼らとの契約を打ち切れるということです』



 この見返り提示は産業界における反対勢力を抑え込むには十分だった。本来なら、労働組合から猛烈な反対を受けるはずの法改正が、「就業未経験者雇用促進法」という新法のインパクトによって完全にスルーされてしまった。やがて、世間もこのことには気付くだろう。しかし、実際に契約社員にされ、さらにクビにされる中年社員が生まれるのは、まだ先の話なのだ。おそらく、その頃には、自分はまた別の仕事に取りかかっているはずだ。



 さらに言えば、ダメ社員採用法は想像以上に効果を上げている。日本企業がかつて経験してきたように、どんな社員でも腰を据えて仕事を教えれば、それなりに成果を上げるようになるものなのだ。産業界からは自らの“手抜き”に気付いたと反省の弁すら出始めている。雇われる側の意識も着実に変っている。いつ何時、クビになるかも知れないとビクビクするだけでも精神的負担になる。しかし今は少なくとも法定雇用期間の二年間は立場が守られる。それだけでも仕事に集中できるというわけだ。



 この新たな法律が着実に成果を上げることで、あの裏約束は永遠に履行されないまま葬り去られるだろう。白井は一瞬広がりかけた不安をかき消すように何度かかぶりを振った。



 



「先生のおかげで素晴らしい成果を上げることが出来ていますよ。私たちは本当に感謝しています。当社の社長も直接お目にかかりたいと申しておったのですが、あいにく海外出張が重なりまして」



首都圏郊外にある部品工場には最新鋭設備がつまっているらしい。白井が小学生時代に社会科見学で訪れた食品工場などとは比較にならない。実に整然としており、室内はまぶしいほどに明るい。素人目には研究施設にしか見えなかった。



「いや、どうかお気になさらずに。むしろ、就業未経験者雇用促進法がこういう最新工場でも役に立っていると聞きまして、うれしくなって飛んできたというわけです」



 工場長を名乗る男はどう見ても白井よりも若い。それなりに知られた大手企業だけに、拠点トップともなれば白髪まじりの壮年を思い浮かべていたのだが、それはもはや時代遅れなのだろう。



「役に立っているどころではありませんよ。この工場が成り立つために本当に必要な法律だったと思いますね。ご覧になって頂いておわかりの通り、ここでは試作品の製造とライン構築のための準備、それと特殊製品の製造しか行われていません。まぁ、よくありがちなことですが、本格的な製造ラインは全部海外です」



 秘書官と二人してなるほどと唸るしかなかった。白井が受けた印象の通り、ここは工場という名の研究施設なのだ。



「しかし、こんな最新施設で未経験者が役に立つんですか?」



 工場長は黙ったまま片側の口角を上げて微笑んだ。ついてきてくださいと促されて長い廊下を進み、建屋の中でも最も奥の部屋へと案内された。そこには三十人ほどの若者たちがスクール形式に並んだ長机を前にして腰掛けていた。漫画を読んでいるものいれば、しきりとスマホをいじるものもいる。中には付き合っていると見られる男女がヒソヒソと会話する姿も見られる。



 なるほど、彼らは休憩中なのか。白井がそう解釈した横で、秘書官が同じ感想を工場長にぶつけていた。一瞬、何のことかと思い当たらぬような顔つきを見せた工場長が先ほどと同じように方頬だけを器用に上げながら薄く笑う。



「休憩中ではないですよ。これが彼らの仕事です」



 今度は秘書官が驚いて意外な顔つきのまま固まった。白井にも何のことなのか想像もできなかった。



「あっ、安心してくださいね。最低賃金はきっちり払っていますから。彼らも喜んでいますよ。二年間何もしないで給料をもらえるんですから」



「何もしない?」



「そうですとも、彼らに出来ることなどこの工場には何一つとしてありません。今までこの工場に籍を置いていた四十代、五十代の正社員たちも事実上仕事がなくなっていたんです。その彼らは全員契約社員に切り替えました。例の法改正を使いましてね。それで、一挙に当社の海外移転がコンプリートしたってわけですよ。どうしてもこの工場にいる古くからの社員だけはリストラできなかったものですからね。いやあ、副大臣が法案を通してくれたおかげですよ」



 「そっ、そんな……そんなのひどいじゃないですか。法の悪用だよ。だいたいお宅はデカイ会社なんだから、就業未経験者ができる仕事は他にいくらでもあるでしょうに!」



 絶句する白井の横で、秘書官が工場長に抗議する。しかし、工場長が怯む様子はなかった。



「そんな仕事を作るくらいなら、こうやって何もしないでいてくれた方がいいですよ。余計な費用がかかってしまいますからねぇ。というか、こうやって使うための法律なんでしょう? 企業はみんなそう思ってますよ。本音と建前の使い分けは日本の伝統ですからね~」



 こちらに何の関心も示さない若者たちの間に、工場長の乾いた笑い声だけが響いていた。



(了)



前回とともに全部作り話です。って言うまでもないか……
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2013-06-10 12:31:57

無糖(1/2)

テーマ:ブログ

『「ブラック企業」社名公表提言へ 参院選公約』



 ちょうど2年前に保存したツイートを読み返しているところに秘書官から声が掛った。



「そろそろ出発のお時間です」



 朝から分刻みで大量の来客をこなしているというのに、一息つく間もない。今次政権の内閣改造で異例の抜擢を受けた若きホープ白井政男は促されるままに副大臣室を後にした。



「ワイドショー出演後はすぐに埼玉の部品工場まで移動して頂きます。副大臣に最新の雇用の現場を見せたという企業がありまして」



 執務室からエレベーターに乗り込むまでのわずかな時間でブリーフィングを受ける。ここ中央合同庁舎第五号館裏手の車寄せには、すでに公用車が待機している。裏玄関へと足早に向かう白井に気付いた数名の記者が今話題の「(通称)ダメ人材採用法案」を成立させた若手政治家にぶら下がろうと先を争って駆け寄ってくる。秘書官が時間を理由に記者たちを遮る間に、白井は後部座席へ滑り込んだ。



「副大臣もすっかり“時の人”ですね」



 車が走り出すなり秘書官は軽口をたたく。特別取り合うこともない白井だが、内心では助手席に座る官僚が言う通りだと思う。そもそも当選二回という駆け出しでありながら、数多の先輩議員を差し置いて副大臣に就くなど異例中の異例だ。有名議員の二世でもなければ、輝かしい実績を持つ政治学者でもない。大学卒業後、政治家を志して秘書となった。朝から晩まで奴隷のように働き、三十歳にして党公認をもらったのが一つ目の幸運だった。



 最初の選挙では所属する党に風が吹き、若さも評価されて余裕の当選。しかし、二度目の選挙ではライバル政党が圧勝する中、惨敗だった。何の地盤もない選挙区で知名度のない若手議員は風だけが頼りになる。それでも、浪人中、細やかに票を集め手応えを感じていた。



 今次政権が出来上がる選挙では圧勝。猛烈なフォローウィンドが吹いたせいでブッチギリの当選だったが、底堅い支持が生まれつつあることも実感できた。いつまた別の風が吹き形勢が逆転されるかわからないものの、党側もその得票率を無視することは出来なかった。



 そんな背景から二つ目の幸運が訪れた。党労働部会で政策チームの一員に指名されたのだ。しかも、その直後に「ブラック企業の社名公表」という打ち上げ花火が上がった。党の政策決定に関与する重鎮が思い付きで発言しただけのことだったが、これがきっかけとなって党内にブラック企業対応の機運が広がった。



「それにしても左翼運動家までやってきて、副大臣に感謝して帰るんですからねぇ。信じられませんよ」



 秘書官が感心した素振りでうなる。



「あの女性は左翼なんかじゃないさ」白井はまっすぐ前方を見据えたまま言葉を継ぐ。「彼女には特定の政治信条などない。ただ目の前にある現実的な矛盾を解消しようとして立ち上がっているだけのことさ。彼女の弟さんはブラック企業でひどい目にあったらしい」



 



 白井はブラック企業撲滅を目指す女性活動家とのやり取りを思い出していた。最初に彼女と会ったのは党がブラック企業の社名公表を打ち上げた直後だった。



『社名公表なんて無意味です。さらに言えば、どんな基準でブラック企業を特定するというんでしょうか? 求められるのはもっと本質的な施策だと思うんです』



 党内の労働関係議員に片っ端から電話アタックしていた彼女を地元からの陳情と勘違いした秘書が誤って取り次いでしまったのがきっかけだった。始めは適当にあしらって終わらせるつもりだったが、彼女の道理には頷ける部分が多分にあった。



『つまりそれは、ブラック企業の社名公表という消極策ではなく、より積極的にブラック企業の実態を変革させる政策を打てと? そういうことですか?』



『その通りです。結局、彼らが抱える問題の本質は若い社員を安い賃金で長時間働かせているということです。さらに、深刻なのは、そうした若い労働力はいくらでも代替が効きます。企業は好きなだけ使い捨てが出来るわけです』



『使い捨てられてしまうようなスキルしかない社員側にも問題がある気がしますがね』



『そうです、全く先生の言う通りです。でも、昔の会社ならそういう多少ダメな人材でも我慢して使ったはずです。ところが最近の企業はそうした許容力を失ってしまいました。経営者は競争の激化を言い訳にして、すっかり堪え性がなくなってしまったんです。つまり、私のアイデアは一定規模以上の企業にダメ人材を強制雇用させるということなんです』



『ダメ人材の強制雇用!?』



 思わず聞き返しながらも、白井は彼女のアイデアに多少の現実味を感じていた。彼女の考えはこうだった。ブラック企業が生み出された素地は、失われた二十年間の中でゆっくりと、しかし着実に作り出された結果だ。各企業が国際競争力に打ち勝つべく派遣などの間接雇用を増やし、社員の育成へのコミットを放棄していった。結果として育成されない若手ダメ社員が数多く生み出され、そうした連中が人材マーケットに溢れかえった。若い労働力をテコに成長を目指す企業にとっては、それがうってつけの環境だった。



 採用できる人材はいくらでもいる。そして、酷使するだけ酷使して使い捨てたとしても競争激化を理由にさえすれば許される空気。誰からもさして責められず、競争相手も同じように行動していれば、企業に恐いものはない。そうして、ますます企業は人材活用に対する姿勢を「ブラック化」させ、今日ここに至ったのだ。



『だいたい過去最高益を更新しながら、雇用数は全く増えていないという企業ばかりですよ! そういう企業に未就業者たちの雇用責任を負わせれば、これまで使い捨てられていた人材がマーケットから減少します。つまり、代替を見つけにくくできるわけです。さらに、強制的に雇用されている間に少なからず人材のスキルは上がります。もし、強制雇用期間後に辞めさせられたとしても、その人材が次の仕事にありつく可能性が上がるんです。それを高い視点から眺めれば、日本の人材市場の価値上昇ということにもなるわけです』



『しかしなぁ……』



 白井はアイデアを噛みしめていた。この自由市場で企業に雇用を強制するなどあっていいことなのか? それを察するように女性活動家は更なるアイデアを披瀝した。



『自由市場の中で、雇用を強制するという発想に違和感があることはわかっています。でも、もし、企業に対して一定の解雇権を与えると言ったらどうでしょう? たとえば、五年以上勤務した社員や管理職であるなら自由にクビにしていいとしたら?』



 革命家のような鋭い眼差しでせまる女性活動家に白井は少しずつ引き込まれていった。
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