剣道昇段で学んだ事〜交剣知愛について | 井上英昭のひらめきわくわくブログ

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モバイルマーケティングのビートレンド株式会社の社長 井上英昭の絵日記型のブログ。挿絵は毎回自分で描いてます。このブログでは、あまり業界や業務のことは書かないと思いますので、最新情報などはビートレンドのWEBサイトhttp://www.betrend.com/で見てくださいね。

先月の剣道連盟の昇段審査で五段に昇段した。
剣道5段

今年の正月から30年ぶりに剣道を再開して一年も経たないうちに受かってしまった。東京都で約5百人くらいが受験して数十人しか合格していなかったようなので、受からなかった大部分の方々には大変申し訳ない結果になったが、実は、こちらとて、そうやすやすと受かったわけではない。

ここ3年間くらいは、ほぼ毎日、腹筋100回、腕立て100回、ランニング5-8Km(休日10km)を実践した。「いずれ剣道を再開する」と決意してから再開するまでの1年間は、日頃のランニングなどに加え、竹刀の何倍もの重さの大木刀を毎日2-3百回振り続けた。

素振りの大木刀↓
素振り木刀

そして、体力復活のひとつの目標であった昨年末のホノルルマラソンでフルマラソン初完走を果たし、ようやく今年の正月から剣道界に復帰したというわけである。なので、準備期間を入れ3年くらいで受かったというのが本当のところである。

友人の推薦で千代田区の剣道連盟に所属し、「千代田土曜会」という社会人の剣道稽古会に参加し、土曜日を中心に火曜日・木曜日は仕事の都合がつく日に稽古。道場の稽古は厳しく、人は暖かい。
稽古後の第二道場(剣道界では居酒屋の事をこのように呼ぶ)では、その日の稽古の中での私の剣道の反省点や注意点を、先生達(だいたい六~七段以上)や剣友達が、懇切丁寧に解説&指導してくれる。七段以上が必ず持っていて大一番でしか繰り出さないと思われる「必殺技」以外は、惜しみなく一から十までご指導いただける。
こちらも、酔っぱらいながらも(酔っぱらっているだけに)、教えを忘れてはならじと、家に帰ってすぐに剣道ノートをつけて忘れないようにしている。

剣道ノート↓
剣道ノート3

昇段審査の話に戻る。審査の1-2ヶ月前になると、驚くべき「利他」の行動が道場全体で行われた。
昇段審査では、一次審査の実技(2回の試合)に加え、二次試験があり「日本剣道形」という奥深い剣の理論に基づいた演武を、10本覚えてそれを完璧に演じなくてはならない。当道場ではそれが苦手な人、準備が間に合ってない人向けに東京でも高名な先生が「形の講習会」を開催してくれた。また、少し稽古に早出してきて日本剣道形の練習をしたい人もいることだろうと、六~七段の先生達や剣友達が毎週自然と稽古前一時間程も早く集まってくれて指導してくれるのであった。また、著名な先生が書かれた剣道の基本書、自分で作られた「審査のコツ」のコピー、剣道形のDVDなどを「これ良かったら見といてね」といろんな方が貸してくれて大変参考になった。道場の全員が新たに受験する道場仲間全員を助けるべく協力してくれるのである。
指導を受ける側から見ると、先生達の指導は毎回無料だし、そこには、何のギブアンドテークもない。先生達や剣友達からのギブ、ギブ、ギブしかないのである。
受験当日も自分の昇段とは何も関係ないのに、会場の東京武道館までたくさんの方が応援に来てくださった。一次審査前の着装確認や二次審査前の形のチェックなど大変心強かった。

道場から10数人がそれぞれの段位の受験をして、結果、4人が合格したわけだが、その祝賀会(いつもの居酒屋第二道場)では、今回、運悪く落ちた方々もきちんと参加してくれていて、合格した人に心からおめでとうと言ってくれた。内心は複雑なのは当たり前だが、それはそれとして、自分のことのように喜んでくれる「武士の姿」に接し、自然と涙が溢れて来るのであった。
まさに、「交剣知愛(こうけんちあい:剣を交えて愛を知る)」を実感する。

ところが、一方でひとつのしきたりがあった。合格した人は、自分の段位の数だけ焼酎のボトルを入れて、みんなに振る舞わなくてはなくてはならないのである。
稽古に参加し始めてまだ間もない頃の第二道場で、直前の審査で七段に合格した人が、みんなのために7本のボトルを入れている光景を見た。「どうして、受かった人がプレゼントをあげるのか?」もらうのではなくて、なぜ、逆にプレゼントをみんなにあげなくてはならないのか?何か、ゴルフのホールインワンのようなしきたりでもあるのか?と不思議に思っていたが、そのようなラッキーのお裾分け的なことではないのが、今回、我が事になって初めてきちんと理解できた。
合格した人は、これまでご指導いただいた剣友のみなさまに、ボトルキープという形で、「感謝の心」を伝えていたのである。新しい段位を戴いた感謝の心をみなさんに飲んでいただきたいのであった。

私も心から喜んで5本の焼酎ボトルを献上させていただいた。

ボトル4

次の目標は六段の取得となるが、規則では五段昇段から5年間経過しないと六段の受験資格はない。六段から6年間経過しないと7段の受験資格は与えられず、それから10年間が経過しないと現在の日本最高位である八段の受験資格はない。受験資格があったからとて、次の段位に合格するまで数年かかるのは一般的である。私がこの先仮に順調に行ったとして、八段を受験できるのは75才前後と推定される。剣道の神様が、剣道家には一生剣道を続けさせようと仕向けているに違いない。ホトホトよく考えられたシステムだ。剣道は生涯スポーツであり、何才になっても新しい境地で上達できる唯一の競技である。いやたぶん、これはスポーツではないのだろう。

剣道とは何か?
全日本剣道連盟が定義した理念をよく噛み締めて稽古に励みたいと思う。

「剣道は、剣の理法の修練による人間形成の道である」
http://www.kendo.or.jp/kendo/concept/#all