魅力ある叔父さん
春陽
早乙女翔馬(25)主税の弟で部屋住
早乙女主税(35)幕府御家人
早乙女志乃(32)主税の妻
早乙女佳代(13)主税の娘
新見慎吾(25)翔馬の剣友[T1]
○麻布仙台坂下・早乙女家屋敷・庭先(昼)[T2]
霞むような穏やかな青空。
メジロがさえずり紅梅の枝先を渡る。
幾人もの大工が庭の一角に次々と材木を運び込み、かんな掛けをしている。
庭を抜け縁側の前に、剣術の防具を竹刀で担いだ早乙女翔馬(25)が現れる。
翔馬「兄上、今日は随分賑やかですね」
陽だまりの縁側に座り、湯呑を手に大工の作業を見守る早乙女主税(35)と、早乙女志乃(32)、早乙女佳代(13)の三人。
主税「お前の意見を入れて、さっそく屋敷の一隅に借家を建てることとしたのだ」
翔馬「そうですか、それは重畳。必ずや早乙女家の家計の一助となります」
志乃「貸すと言っても、ご直参ですのに、お咎めの心配は本当にないのですか?」
主税「うむ、皆やっておることだ。長州出兵以来こうも諸物価が上がってはな。」[T3]
志乃「翔馬さん、あなたが良縁を断らず、ご養子に入って下されば、それも大いに一助となるのですけれどねぇ」
翔馬「あ、はぁ。そのお話ですか。」
主税「ははは、翔馬、藪蛇だったな」
翔馬「そうそう私、佳代をお不動さんへ連れて行く約束でした。では参るぞ、佳代!」
佳代「え?で、では行って参ります」
佳代「叔父上、私はそんな約束はいたしておりませんよ。あ、待ってください。もぉ」[T4]
歩き出す翔馬。
翔馬「さあ、行くぞ。団子でも食おう」
春陽の注ぐ古川橋辺を行く二人。
○同屋敷・縁側
主税「翔馬め、逃げおった。あやつ子供の時分から逃げ足だけは速い。しかしこのままいつまでも部屋住みでは困るぞ」
志乃「はい、本当に」
紅梅の枝でメジロがさえずる。
○目黒不動尊門前・茶店
人々が楽し気に店先を往来している。
翔馬と佳代は、うららかな日差しの中、長椅子に腰かけ、団子を頬張る。
翔馬「いいではないか、こうして団子を二本も食わしてやるのだから」
紗代「食わすとは、失礼な!大体、叔父上の剣術がお強いから来た破格のお話でしょう?いずれはそのお家をお継ぎになって、ご出世も叶うのに、勿体ない」
翔馬「皆、分かっておらんなぁ。時代は刻々と変転しておるのだ。いくら神君以来の旗本とは言え、あんな武張っただけの家では、俺は息苦しいのだよ。」
佳代「ふーん、叔父上らしい物言いですね」
翔馬「俺は、戦は好きではないのだ。好きというならむしろ算用さ」
佳代「算用?」
新見の声「お、早乙女ではないか。お前今日も稽古を早々に逐電しおって。こともあろうにどこぞの娘と団子か?」
偶然通りすがった笑顔の新見慎吾(25)。
翔馬「おう、見られたか。こいつは俺の姪の佳代だ。今縁談の話から逃げてきたところさ。婿養子にならんでも、仕官の口はないものかな。それも武術でなく、算術でだ」
新見「相変わらずだな。不思議な男だ。」
以上
◯今回の課題である「叔父」に関して、セリフやト書きで関係性が表現できていると思います。また子供の頃の思い出を出すことによって更に関係性が分かりました。良いアイデアです。
◯コメントにも書きましたが、人物表は主人公を中心に主人公との関係を書きますので気を付けて下さいね。また時間指定の「昼」は書きませんので、気を付けましょう。他にもコメントに書きましたので確認しておいて下さい。
◯また柱の次はト書を入れるようにして下さい。ト書きで誰と誰が何をしているのか?状況、情景等を入れるようにしましょう。シーンはどこから撮影が始まるか分かりませんし、初めに、どこを撮影して良いかも分かりません。気を付けて下さいね。
書式は早めに修正しておきましょう。
次回も頑張って下さい。
[T1]人物表は主人公との関係を書きます。
[T2]時間指定の「昼」は書きません。
[T3]セリフの最後の「。」は必要ありません。
[T4]柱の次はセリフから始めず、必ずト書きから始めるようにして下さい。