イライラしている人

 

「新庄川」

 

   人 物

坂本勇作(15)須崎中学3年生

伊藤沙耶(15)勇作の同級生

 

 

○高知県須崎市・新庄川の河原(夕)

   夕日が川瀬にきらめき、ヒグラシが鳴く。

   夕風に夏草が揺らぐ。

   坊主頭の坂本勇作(15)が自転車の傍らで夕日に顔を染め、一人たたずんでいる。

   携帯をスボンのポケットから取り出し、画面を一瞥する勇作。

勇作「ふぅ・・・[T1] 」

   一つ大きく肩で息をする。

   と、勇作はしゃがみ込み、川面に目を落とす。

   夕日にキラキラときらめく川面。

   徐に勇作は、しゃがんだまま小石を取り上げ、意味もなくカチカチと河原の石に幾度も打ち付けている。

   ふと気配を感じると顔を上げ、振り向く勇作。

   背後の河原に降りる土手沿いの道を、首を伸ばして眺める勇作。

   遠目に、笑顔で犬を連れ散歩する中年女性が見える。

   不機嫌そうに眉を寄せる勇作の顔。

   勇作は、小石を手に立ち上がり、葦の生い茂る対岸めがけて投げつける。

   再び携帯を取り出し一瞥する勇作。

   と、退屈そうな面持ちで足元の小石を川面に強くけり込む。

   小石は水泡を立て、川面へと落ちる。

背後の声「おーい!坂本ぉ!」

   すかさず振り返る勇作。

   笑顔の伊藤沙耶(15)が大きく片手を振りながら、夕日に照らされ、土手沿いを自転車で向かってくる。

   勇作は一瞬、口元をほころばせるが、すぐさま表情を曇らせる。

   勇作の傍らで自転車を降りる沙耶。

沙耶「待った?あ、怒ってる?」

   気に病む様子のない笑顔の沙耶。[T2] 

勇作「遅いちゃー。早ようせんと暗くなるき。で、持ってきた?アレ。」

沙耶「これだよね?はい!」

   バッグから四角い箱を取り出し勇作に手渡す沙耶。

沙耶「お父さん、最近使ってないらしくて。倉庫を探すのに時間かかっちゃった。」

勇作「おー、これやき!このカメラを仕掛けておけば、赤外線でバッチリ撮れるぞ。」

沙耶「坂本、本当にここにカワウソなんているの?ていうか、確か絶滅したんだよね。いるのは、ゆるキャラしんじょう君!」

勇作「ていうか、っていうか、なんで俺のこと、いっつも名字で呼び捨てながぜよ?東京の女子はみんなそうなが?」

   不満げな勇作の顔。

沙耶「はははっ、坂本だけだよ!多分こっちへ越してきて一番よく知ってる男子だから?よろしくなっ、坂本!」

   屈託ない笑顔で沙耶は、どんっと勇作の背中を強くはたく。

   困惑した表情の勇作。

勇作「よろしくって。越してきて、もう1年ぞ。今か、それ!」

沙耶「電池は、入ってないよ」

勇作「えっ!」

   うろたえる勇作。

沙耶「うそだよ」

小悪魔のように笑う沙耶。

勇作「おまえなー」

起こった素振りで拳を握る勇作。

沙耶「早く帰ろう、暗くなっちゃうよ」

勇作「はあー?」

   くさる勇作。

沙耶「お盆だから、カメラにお化けが映っちゃうかもよー。それはそれでいいか。あ、なんか怖くなってきた。送ってね、坂本」

   勇作は、沙耶の言葉を無視して赤外線

   カメラの設置場所を探し始める。

以上

 

 

 

◯前回に引き続き、ト書きの映像描写が非常に丁寧ですね。イメージが湧きますのでシーンに入っていき易いです。素晴らしい。

 

◯指定枚数は必ず守る様にして下さい。枚数は作品の時間にも関係してきます。ですので指定枚数内で表現することは非常に大事です。頑張ってみて下さい。

 

◯次回の習作も頑張っていきましょう。


 [T1]三点リーダーは二マス使います。

 [T2]指定枚数はここまでです。