漢方でパニック発作を改善する | 大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

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40代の女性

 

電車に乗ったり、美容院に行ったり、レジに並んで待っていたりして、自分の中で「逃げることができない」状況ができてしまうと、途端に動悸・息切れ・手足のしびれ・不安感などが出てきてしまい、居ても立っても居られなくなってしまう。

 

病院ではパニック発作と言われ、抗不安薬などの薬を提案されたそうだが、これらの薬を一旦使ってしまうと止められないのではないかと思い、漢方で何とかしてほしいと相談に来られた。

 

普段の生活では、何の不調もなく過ごせているにもかかわらず、そういった場面になると必ず症状が出るため、どこにも行けず、常に緊張との闘いを強いられているとのことであった。

 

普段は何の不調もなく過ごせているということ、自分が逃げることができない状況であると感じたときに症状が出現するということから、症状の波はある程度パターン化でき、さらにそれが比較的激しい波であることを考えると、「心神不安」など心の病証ではなく、あくまでも「肝の病証」として考えることができる。

 

そして動悸や息切れは宗気の循環不良、それに伴い営衛が四肢末端まで届かないために手足のしびれが生じるととらえた。

 

したがってこれらの症状は「逃げられない」という精神的緊張から肝鬱気滞を起こし、その気滞によって営衛の巡行が一気に不利し、さらに一部が気鬱⇒内風となって不安感や焦燥感につながるとして考察した。

 

これらの考察をもとに、まずは肝鬱気滞を生じさせないようにするために四逆散をベースに用い、さらに内風を処置する目的で抑肝散加陳皮半夏を選択。

 

抑肝散としなかった理由としては、半夏陳皮の降逆・寛胸作用を加えることで、宗気の鬱滞をしっかりと取り去りたいからである。

 

これらの方剤を使用することにより、症状は1か月弱で⑩⇒⑤となった。

 

しかしながら、症状が起こる頻度は変わらず、やはり「逃げられない状況」と感じたときには必ず起こるということで、この肝鬱気滞の裏には肝陰虚があるのではないか、そして肝陰虚が助長される裏には腎陰虚があるのではないかと考え、さらに杞菊地黄丸を少量加えて様子を見ることにした。

 

そうしたところ、症状は⑩⇒③となり、症状が起こる頻度・程度・長さいずれも軽減し、自分が逃げられない状況だと感じて症状が起こってもすぐに落ち着きを取り戻し、ほとんど気にならないレベルになっているということであった。

 

パニック発作では通常、抗不安薬などが用いられることが多いが、それらを服用すると日常生活において倦怠感や食欲不振、むくみなどの副作用が出ることも少なくない。

その様な副作用を起こさず、主訴を軽減させるために漢方薬を使うという方法は選択肢として大いにありだと思う。

 

自分もパニック発作を起こした経験があるが、これは本当に辛く、自分ではどうしようもない。そういうときに漢方を常用することで症状を軽減することができることをもっと多くの人に知ってほしいと思う。