大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」です。

【廣田漢方堂からのお知らせ】



新規漢方相談の依頼はこちらから
バナー


バナー

問い合わせ


自身ののぼせ・火照りに対して「香蘇散」を選択し、服用開始後1か月が経過。

 

結果は・・・

 

ものの見事に的中し、のぼせ・火照りはほぼほぼ消失。

 

直射日光に当たっても、閉ざされた車内に長時間いても症状は出現せず。

 

おまけに気分もさっぱりした心地よい感覚となり、重苦しい精神状態からは解放されたようだ。

 

当初は上焦における熱の鬱滞と考えて、石膏製剤を服用したものの、石膏では熱が取れず、逆に熱がこもりやすくなって、のぼせ・火照りが悪化。

 

これは肺・胃の経の清熱によって表の衛気の巡りが停滞してしまい、結果、衛気気滞を助長して悪化したものと考える。

 

またその結果を受けて、上焦の熱を下に落としつつ、上焦に熱が停滞しているのは膈の詰まり、肝鬱気滞があるとし、重苦しい精神状態も弁証に組み込んで「柴胡加竜骨牡蠣湯」を服用してみたが、これも逆効果。

 

肝気を緩めすぎ、無力感・無気力感が強くなり、何もやる気がしない状態に陥ってしまった。

 

昔、どこかの漢方専門医が柴胡加竜骨牡蠣湯を2倍量使っても、全く効かないなどと述べている記事を見たことがあるが、んなことは絶対にありえない。

 

柴胡加竜骨牡蠣湯はこんなに疏肝理気して、緩ませるのかと思い知った。

 

それくらい悪い意味でもいい意味でもよく効いた・・・。

 

この結果を受け、表も裏も関係なく、疏肝理気するのは間違いで、気滞ではあるものの、それはあくまでも衛気の気滞であると考えた。

 

ここに水の停滞も伴えば、「参蘇飲」を選択していたと思うが、上焦の水の停滞(頭冒感や頭重感、めまいなど)はなかったため、気滞単独として、気滞表証にも用いられる「香蘇散」を選んだ次第である。

 

副次的な嬉しい効能として、いつもならこの季節、花粉症が爆発して目痒、鼻水が止まらないのだが、今年はほぼその症状に悩まされることなく過ごすことができている。

【コメント内容】

数ヶ月ぶりのブログ記事更新、嬉しく思います。

以前アドバイスいただきました、脱毛の相談者は残念ながらその後来なくなったので、結果を廣田先生にご報告差し上げることができませんでした。
が、先日に別の相談者からの円形脱毛について漢方治療を行う機会があり、廣田先生にご教授いただいた『絡』を意識して、また気血両虚の体質もあったことから
【冠心二号方】と【婦人宝】
で脱毛は10日もすれば止まり、1ヶ月服用後には完全に髪が生え戻りしました。
お陰様で信頼を得ることができました、ありがとうございますm(__)m


もし僕が本記事の相談を受けたなら、「寒暖差の場所・肩こり・頭痛・吐き気」と聞けば短絡的に肝経の冷えに効く呉茱萸を連想して、当帰四逆加呉茱萸生姜湯を処方してしまいそうです。
記事には寒熱に関しての情報がなかったことから、少なくとも相談者の体感として冷えはなかった、ということでしょうか。

また、僕の場合は交感神経の興奮というと、(加味)逍遙散・第一加減・血府逐瘀湯がほとんどなので、滋陰至宝湯はなかなか頭に浮かんできませんが、今回の廣田先生の症例により、使用法のヒントが得られました、ありがとうございます。

 

 

 

【コメントに対する考え】

相談者には自覚的冷えあり。(特に下半身)

 

なぜ呉茱萸配合方剤にしなかったか?

する必要がない。

 

当該相談者には下半身に冷えを感じるという訴えはあったが、これは完璧に平素からの運動不足による血行不良によるものと考えてよい。

だいたい現代人は慢性的な運動不足で末梢血管の萎縮、全身の血流停滞傾向が顕著にある。筋肉を動かさないので、心臓だけで頑張って血を巡らせようとしているが、そもそも心臓だけで血液を動かそうとするのに無理がある。

 

運動していないので、心拍出量も少ないし、心拍数も上がらない。つまり「心」の力が弱すぎる。

 

そのくせ欲に負けて「食べる」傾向があるので太る。

 

血流が停滞し、汚れが血管内部に蓄積し、さらに食べるので汚れがたまる一方だ。

 

しかも汚れが溜まるせいで、新鮮な栄養も届きにくくなるし、代謝は落ちてエネルギー効率は悪くなるし、運動しないので呼吸も浅くなって酸素の利用率も減る。

 

今は昔と違って、上述のように生理・解剖・生化学などなどの知識を使って分析できるのだから、昔と違ってこの分析を元に当該相談者の体質をもっと深く考察することができるはずだ。

 

そもそも昔の人は不便な世の中にあり、もっと身体を使っていたので、運動不足などという概念がなかったと思う。

 

食糧不足による栄養不良はあっても栄養過多はほとんどない時代だし、寒熱に関しても、冷房も暖房もない時代はもっときつかったはずだ。

 

そう考えると、自覚的な冷えがあったとしても、『黄帝内経』『難経』『傷寒論』などが書かれた時代、それ以降の時代と比べると、その意味合いは全く異なる。

 

冷えという言葉の意味合いが今と昔では違いすぎる。

 

だから冷えがあったとしても、呉茱萸が本当に必要な冷えはそんなに多くないし、上述のタイプのような人に呉茱萸を使っても効果を発揮しないばかりか、上の熱証を煽ることにもつながりかねない。

 

 

 

慢性的な運動不足から生じる循環不良に伴う冷えなのか、寒邪が血脈に停滞しての冷えなのか、このあたりは冷静に判断したいところだ。

 

今回の症例では、明らかに前者であり、しかも舌の乾燥という陰虚症状で地黄までは必要のない程度と判断したため、半夏配合の小柴胡湯加減や地黄配合の血府逐瘀丸ではなく、食欲はあり、便通も問題ないことから肝脾不和の逍遥散でもなく、肝鬱気滞、肺腎の余熱、肺陰不足、化痰の滋陰至宝湯を選択した次第である。

 

呉茱萸がフィットするような人は、煤けた暗い肌色ではなく、もっと血色のない肌白い人と想像するが、方剤中の配合で変化するが当たり合えなので一概には言えない。

45歳を過ぎて、まもなく46歳になろうとしているが、この年になれば、色んな不快症状が噴出してくる。

 

血液検査や精密検査では正常で異常なしとされても、身体は確実に異常な症状を訴える。

 

今まで感じることがなかった、それらの症状に「これが老化」というものかと現実を知り、いくら節制していたとしても、やはり老化から逃げることはできないらしい。

 

少し前に襲った脂漏性皮膚炎は、その後も出現することなく緩解した状態を保っているものの、ここ最近は顔面ののぼせと火照りがスゴい。

 

男性更年期が始まったか・・・

 

とも思ったが、そこを疑って対処してみたが、どうやらこれは違うみたいだ。

 

別にのぼせ・火照りを感じたからといって、実際に顔面が紅潮するわけでもなく(紅潮を伴うこともあるが・・・)、痒みなどもない。

 

ただただ不快にのぼせと火照りを感じるだけだ。

 

この季節の太陽光に対し、日焼け止め等のケアなしで外出してしまうと脂漏性皮膚炎は一気に悪化していたものの、今は悪化することもないし、のぼせ・火照りが悪化することもない。

 

では、どんな状態で悪化するのか・・・

 

 

 

そんな増悪因子と緩解因子を必死で探しまくる。そうすることでものすごく些細なことが、この症状の増悪緩解に関わっていることにやっと気づけるからだ。(逆に言えば、そうしないと気づけないくらい、小さなことが関与しているということになる。)

 

 

普通は、冬期の暖房で温まったときや室内外の温度差、入浴などでのぼせ・火照りが出やすくなるが、必ずそうなるかと言えばそうでもない。もちろん出やすいのは出やすいが・・・

 

何がここまでこの症状を出すのか、顔面紅潮という毛細血管の充血を伴わないのに、のぼせや火照りといった熱感を感じるのはなぜか?

 

自分に襲い掛かる不快症状の病因を細かく観察することで見えてくるものがある。

 

今回の場合、それは「こもった空気」である。

 

車内、室内、浴室内など、空気の流動がなく、かつ冬期に暖房が効いている場所にいると、その症状はてきめんに現れる。

 

逆にほんの少しでも空気の流動がある場合は、いくら暖房を効かせても症状は出ない。

 

室外でも風が少しでも吹いていれば、紫外線・赤外線に当たっても、その症状は出てこないが、無風の場合は出てくる。

 

つまり、熱を受けることよりも、風があるかないかで症状の出現、軽重が変化する。

 

このことから、自身に襲い掛かっているのぼせ・火照りは、顔面の毛細血管の拡張が原因となる「血分」が主なのではなく、外的な風の有無が関与、しかも無風や籠った空気が悪化させる「衛分」の問題であり、風がほんの少しでも流動していると症状をほとんど感じなくなるということから、「衛気の気滞」が原因として考えられる。

 

 

でもって衛気の気滞を理気する方剤は、なんだと調べたら、理気薬は数あれど、衛気気滞に対する専門方剤って記載されているものがないのね・・・

 

風があるほうが症状緩和するのに、まさか祛風剤使うわけにもいかんしね。気滞という実証だから桂枝湯類もね・・・

 

なんて考えて、結局「香蘇散」を選択。

 

これに気づいたのが今さっきであるので、現在、服用開始して様子を見ることにする。

 

症状は、頻繁に感じる(この季節は花粉症や黄砂のこともあり、部屋は閉め切りのことが多いので・・・)ため、香蘇散を服用してからの症状変化は追いかけやすいはず。

 

さてさてどうなることやら・・・