おとうさん。おはよう。

  おひさま。さん、さん。おはようさん。だよ。おとうさん。

  まあ。きれいな、朝日。それに、青空。

   ほんとうに。『天の、神さま。ありがとう。」だよ。

  「おまえら。きょうは。屋根の、ペンキ。塗るんやろ。」

  「わしが、できることは。これじゃ。」いうて。

   おとうさんが、頼んで。くれたのかなあ。天の、神様に。

  「きのうまで。もう、雨が。降って、くるかも、しれんよ。」

  「出かけるん、やったら。雨具の、ようい。」

  「ちょっと。ポロポロ、してるけど。だいじょうぶや。」いうて。

   空の、具合を。気にして、いたのにね。

  「おかん。あしたは。ペンキ塗りや。」

  「天気が、ええと。ええなあ。」いうて。心配して、たんだよね。

  もう。離れだって。築、何十年の、しろもの。

   都会だったら。壊されてるよねえ。

  おまけに。田舎の、田舎だし。ここは。

   それに、加えて。過疎化の波。

   工事は。だれにも。頼めないん、だものね。おとうさん。

  我が家の、周りは。みんな、空きやなんだけど。

   捨てたくて。ふるさとを。捨てる、人は。いないんだよね。

   みんな。色んな、事情が。あるんだよね。

  有難いことに。我が家は。息子たちも。お嫁さんも。協力的だから。

   文句も、言わず。田舎を。大事に、してくれてね。

  「おとんが。大事に、していたものは。」いうて。

   できる限り、現状維持を、まもってね。

  電話番号さえ。『おとんの、これは。生きてた、あかしや。』いうて。

   がんばってねえ。

  お店の、人も。『仕方ない、ねえ。』って。

   私たちの。事情を、きいて。色々、探し回って。くれたんだよね。

   お陰で、おとうさんの、番号は、そのままで。

    データーも、移行できて。めでたし、めでたし。

  今度は、とうとう、天の、神様まで。味方して、くれたのかなあ。

   『仕方ないなあ。』ってね。

  あとは。『気をつけて。怪我しないように。』

   ただ。それだけ、だよね。おとうさん。

  おとうさんも。傍に来て。守って、くださいよ。

   怪我を、しないようにって。

    ねえ。おとうさん。