雑巾がけが終わり、
片づけをするとき。
私はバケツの中に、
ちょっと洗濯洗剤を入れて
雑巾を洗います。
その時に
いつも思い出す、
一人の女性がいます。
私が30代前半の頃、
まだ子供たちも小さかったので、
時間も短め・残業もない
パートの事務の仕事を
していたときがありました。
ごめんなさい。
特別、その会社に思い入れや
入社したい強い理由があった
訳ではなく、
条件が自分に都合がよかった
という
ライトな理由で(笑)、決めた会社でした。
会社規模は、社員数30人ほど。
大企業の生産ラインへ独自開発の
技術を提供しており、
ナンバーワンというよりも
「オンリーワン」が強みの、
そんな会社でした。
思い出すというのは、
そこで先輩として
私に仕事を教えてくれた
当時、50代の女性です。
彼女は、勤続20年をかるく
超えている、
社内でも古参の社員でしたが。
けして、それを威張るのではなく
女性が極端に少ない
会社だったので、
貴重な女子社員が一人増えた
ことを喜んで、
何くれと無く声をかけて
くれました。
彼女は、
自分が所属する会社を
とっても
誇りに思っているのが、
仕事の端々に見えていて。
特に毎朝、
会社の玄関から階段、
踊り場、廊下、トイレと
心を込めて
雑巾をかけているのが
印象的でした。
「今どき、雑巾で？」
と私も最初思ったのですが。
いつもピカピカの会社の
階段や廊下、特にトイレ。
を見るにつけ、
彼女の会社への愛情を
感じざるをえませんでした。
私も入社後、彼女と交代で
この雑巾がけをすることになった
のですが。
彼女が、教えてくれたこと。
「雑巾がけ、終わったらさ。
ここに洗剤があるから、
きれいに洗ってね」
トイレ、給湯室などところどころに、
空いたコーヒーのビンに
粉せっけんが入っていて、
場所ごとに使う雑巾やふきんを、
それぞれきれいに保っていました。
トイレで使う雑巾ですら、
いつも洗剤の香りがしていたのを
覚えています。
この時。
私はすでに、夫の両親と
同居していたので。
「姑的」
というポジションのお人がwww
どういう言葉かけをしてくるかは
実感としてあったのですが。
まぁ…その言葉を受取る側の、
心のありようも、影響でますわな…。
それはまた別のハナシで…
彼女の言葉には、
自分のやってきたことを
押し付けようという思いはなく、
あるのは会社を大切に思う心と、
会社をきれいに保つことへの
使命感で、
私は、
反発心をもつことなく、
むしろ
雑巾がけをしたら
雑巾を洗剤できれいにして、
バケツの外側の水滴を拭いて
バケツのフチに雑巾をかけて
終わり。
次回、雑巾がけをするときには、
洗剤で洗い済みの
きれいな雑巾で
雑巾がけをする。
という一連の流れが
とってもとっても
好ましく思えたのでした。
そのように、ていねいに
拭き掃除をすることが
とっても大事なことに思えました。
しかし…
それから数カ月後、
社内でリストラが始まります。
会社の業績が厳しい状況にあり、
何人かの社員を解雇するという
計画があることを知ります。
そして。
私が採用されたのは、
雑巾がけの素敵さを教えてくれた
彼女に会社を辞めてもらう
前準備だったことを
知るのです…
続く…
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あれから十数年が経ち、
私の年齢も
当時の彼女と同じくらいに
なってきました。
30代の私には理解できなかったこと。
50代の焦りや、不安。
彼女が当時、感じていたのでは
ないかと思うこと。
想像ができるようになりました。
年齢・社歴では先輩でしたが、
ときどき
いたずらっ子のような目をして、
「何か楽しいことないかな」
とたくらむ、彼女のお茶目さんぶりが
今でも
忘れられません。
仕事をしていく中で、
大きな影響を私に与えてくれた
大切な人です。
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