発達障害は「理解とサポート」があれば個性になる!

自閉症スペクトラム、ADHD、LD、特別支援教育、インクルーシブ教育、家庭生活、社会生活、心を育む考え方等について書いています。
NPO法人日本インクルーシブ教育研究所 http://www.hikk.biz/


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人は誰もが「認められたい・愛されたい・褒められたい」と思っています。これは、人間の本能です。でも、少数派の人達(発達障害のある人)は多数派の人達(平均的な人達)からどうしても「おかしい」「変だ」「普通にしてくれ」といった要求をされます。

そこで、発達障害のある人が、どれほど大変な思いで生活しているかを知って頂ければと思います。以下はASD(自閉症)の片岡さんの「発達障害の支援を考える議員連盟」での意見陳述(抜粋)です。

姿勢の維持が困難なので着席のまま発表させていただきます。ASDの診断には乳幼児期の情報が必須というのが国際的な常識ということを理解していただくため、乳幼児期のASD的なエピソードをのせてありますが時間の関係で詳細は割愛させていただきます。重要なのは子供のときの感覚過敏などの困難は大人になっても続くということです。保育園で私は他の園児の声が洪水のように大きく聞こえていたのを覚えています。これは大人になっても続き新宿駅などの騒音の激しいところでは携帯電話で通話することができずにトイレの個室からお客様に電話をかけるということをしていました。さらに私は人の顔が識別困難な相貌失認がかなり顕著にあります。知っている人に挨拶をしないという失礼なことを避けるため電柱に挨拶して笑われたりしました。ですから、本日来られている司法関係の方に知っていただきたいのですが、私は事件で犯人の顔を目撃したとしても特徴などを証言することができません。小学校高学年くらいからいじめにあい中学校はほとんど出席しませんでした。でもなんとか落ち着いて高校にはいることができました。

私たち自閉症スペクトラム当事者は診断基準にはない大変な身体的困難を抱えております。例えば私の場合、臭いに対する過敏性のため満員電車に乗ることができません。女性の方のお化粧の臭いや体臭の強い男性の方の臭いで気分が悪くなってしまいます。聴覚では空調の音やプロジェクターのファンの音がとても強く聞こえて集中することが困難です。あと喫茶店などでお客様と話していると、一緒にいる上司は目の前の人の声だけが聞こえるようなのですが、私は、聴覚の選択的注意ができないというそうなのですが、店内のすべてのテーブルの会話が聞こえてしまい、相手の方の声が非常に聞き取りにくいのです。ロックコンサートの会場で会話をするようなものです。

また自閉症の方は急に声をかけられるとびっくりする方が多いですが、私の場合も音源定位の障害というそうですが、急に呼ばれると音の聞こえてくる方向がわからずとても怖く感じます。視覚過敏では蛍光灯や最近増えてきたLED照明がものすごく頭につきささります。

感覚以外でも私たちは様々な問題を抱えており、例えば女性の方ではPMSの症状が強くでてしまい、中には精神症状が強すぎて統合失調に間違えられて大変な思いをされた方も見ています。気温や気圧の変化にも弱く、健常者なら十分に耐えられる冷暖房を使用しているときの室内と外気温の差に耐えられず体調を崩す方、激しい気圧の変化で非常に体調を崩す方が多くいらっしゃいます。知的障害のある自閉症の方が原因不明のパニックを起こしているとき、私もやはり調子が悪く強い低気圧がきているときだったりします。パニックにはなんらかの原因があるということですね。大学生になっても睡眠覚醒のリズム調整が困難で朝起きられずに、優秀な方なのに留年を繰り返してしまう方もいらっしゃいます。

このように私たちは常に不快な感覚世界にさらされています。健常者の方には黒板を10円玉でひっかくような不快な刺激に常にさらされているといったらわかっていただけるでしょうか? このような不快な感覚刺激は自律神経のうちの交感神経応答を引き起こしますから、感覚過敏と自律神経の問題が同時にあるのはそんなに理解不可能なことではないと思います。こういう交感神経優位の状態が慢性的に続くとストレスの慢性化や情動制御の困難が生じる場合もあるのだと思います。

このような感覚過敏の問題はASDが一番深刻だといわれていますが、自閉症児のお母様やADHD、LDの方もある程度は持っており、広く発達障害の方にあるものだと思います。

また私たちはアトピーや甲状腺機能の低下・亢進の問題など自己免疫疾患や、過敏性腸症候群など、ASD以外に生活の質を大きく落とす併存疾患を持っている方々が多いです。診断基準にはない身体的困難や心身症が如何に私たちの生活の質をさげているかということに理解をお願いしたいと思います。アトピーは自分の見た目を気にする若いASD者の方には自己評価を下げる原因にもなりがちですし、甲状腺機能・亢進は、うつ病や統合失調症と間違えられかねない精神症状を引き起こすこともあり軽視できない問題です。

ASD者として社会に望むことですが、まずは高機能、高機能というのはIQが正常範囲ということを意味するだけなのですが、高機能のASDを正確に診断・判定・個別評価できる医師や多職種のチームが増えることを、正確なASD診断がシステムとしてできるようになることを切望します。

次に公立中学や高校はどのような人にも最低限の教育を保障するためにとても大切であると思っています。特別支援学校で知的障害のある自閉症の方、高機能でも感覚過敏などの困難が大きくて個別的な対応を必要とする方々の枠をしっかり確保することは絶対にやらなければならないのですが、その上で、低学力の方、虐待を受けた方、貧困家庭の方など様々な困難を抱えた生徒を広く公立中学高校に受け入れるという文脈の中で、ASD圏の生徒たちにとっても安心して教育を受けられる場所になってほしいと思います。

最近、単にご自身の能力や性格の問題で試験や面接に受からない方が、発達障害の知識のない医師に誤ってアスペルガー症候群などと診断され、非常に限られている私たち成人ASDの支援リソースや就労先を奪う問題は、発言したくなかったのですが、もはや当事者として公的な場で発言せざるをえないくらいひどい状態になってきました。

最後ですが「就労=雇用労働」ではないわけですね。私も試行錯誤していますが、私たちASD者の多様なディーセントワークを求める試みを支援してほしいと思います。例えば農業労働が意外とフィットするASDの方もいらっしゃいます。あと欧米に限らず海外で働いて日本で働いていたときよりずっと生き生きとされている方もいらっしゃいます。また職業的に成功したASD者の中には通訳とかライターとか個人事業主として生計をたてている方が多いんですが、青色申告などの事務手続きが非常に複雑でエネルギーをとられてしまう方もいらっしゃいます。私は0円でできる特定非営利法人を立ち上げてみてわかったのですが手続きが非常に難しく、障害者が法人を立ち上げる場合なんらかの政策的な配慮があると非常に助かります。

最後に言いたいのですが、ASD者を雇用する場合、簡単な仕事を与えればいいと思っている方が多いのですが違うと思います。私たちに必要なのは感覚ストレスのない職場やLDの方であれば情報の入出力の工夫であって、仕事の成果物の評価を健常者より甘くすることは不要です。

片岡聡。1966年新潟県生まれ、東京大学薬学部卒、博士(臨床薬学)。
製薬会社研究開発部門、大学助教などを経てASDの生き辛さによるニ次障害で職場を退職。本年4月、ASD児の学習•余暇支援、身体的困難研究のための法人設立。


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