小説　働く女性たち　その１１　マネキンの真希ちゃん　・街中のオブジェ…愛煙家に愛の手を！

小説　働く女性たち　その１１　マネキンの真希ちゃん　・街中のオブジェ…愛煙家に愛の手を！

街中のオブジェ　愛煙家に愛の手を！

　私は煙草を吸わないというより吸えない、理由は貧困と健康のためだ、したがって嫌煙家ではなく愛煙家になる。ファミレスでも禁煙席か喫煙席かと案内されてもそれは吸わないが喫煙席を選ぶ、なぜなら自分に嘘をつくのが嫌だからです。そんな折、あるビルの喫煙コーナーに石の彫刻の椅子と灰皿があった。もちろんビルの吹き抜けの狭い隅っこにだ！。これこそ愛煙家にとっては愛の手になる。（京都府向日市）

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小説　マネキンの真希ちゃん　その１１

　名前は「真希」ちゃん、マネキンだけど一生懸命働いています。しかも２４時間休憩なしです、食事はなし、お風呂にも入れてはもらえないけど不満は口にも顔にもだしません。でも季節の変わり目にはこの店の高価なフアッションを身に着けてくれます。いわばこの冬京都で一番人気になるファッションセンスを着てのお仕事になります。

　この大型スーパーには真希ちゃんの仲間のマネキンが約１０００体ほどあります。一番年上のお姉さんは８５歳のトメさん、シルバー用品の売り場で活躍しています。なんでもＧＧ割引というのがあって５５歳以上のシルバーの会員さんには月に何回か５％引きのサービスがあるそうです。これらのマネキンは京都の老舗マネキンの吉忠マネキンや七彩マネキン、中小マネキン会社からの派遣社員です。

　派遣といってもみんなそれぞれ特技や容姿端麗などで勤務する売り場はすべて違います。やはり、一番時給が高いのはワコールやトリンプの下着売り場です。セクシーな下着を寒い冬でも着せられて１日立っているのですからこれも過酷な労働になります。しかも、マネキンだからとバカにしているのか、着替えのときも更衣室なんて用意はしてくれません。通路でお客様の見ている前で裸にされて…しかも、そのまま裸で何時間も放置されることもあります。

　私がこの真希ちゃんと最初に眼が合ったのは一年前の冬、真っ白な毛糸の帽子を被りすました顔で私にウインクしてくれたのです。色白でスタイル抜群のこのマネキンに一目惚れしてから暑い日も寒い日も毎日会いにいきました。そして名前を「真希」ちゃんと命名して楽しんでいたのです。ところがあるときから真希ちゃんがいなくなったのです。

　これはひょっとして売り場が変わったのかと広いスーパーの中を１日かけて探しましたが見つかりません。それなら派遣先が変更になったかもと最近できたイオンモール桂川店まで探しいったが、この店はかなり広くて全店捜索するのに３日もかかってしまいました。それでも真希ちゃんは見つかりません。けど…こうして女性のマネキンさんを何千体も見たが、やはり真希ちゃん以上のいい女性はいないということを再確認できたことを神さまに感謝していました。

　その夜、ふと眼が明いて時計を見ると２時だった。マンションの前にタクシーが停まり、そこからコッコッとハイヒールの響く音がして我が部屋の前でその音は止まった、そしてチャイムが「ピン～ポン～」えっ、こんな真夜中に誰？私は恐る恐るドアの前で、
「ダレですか～」
「はい、こんな夜分すいません～真希で～す～♪」
「真希、？？？」
「はい、いつも伊奈利さんに眼で遊んでもらっているマネキンの真希です」

　私は喜んでドアを開けたらそこには真希さんがいた。真希さんの話では、
衣装替えをする時に女子社員が私の上半身を誤って床に落としたので顔に傷がついた、それで派遣元の七彩マネキンで治療を受けて明日からまた高級女性服売り場に復帰しますという。そこでその全快祝いにとワインで乾杯をしていた。真希さんは、
「私もいつも伊奈利さんが店に来るのを楽しみにしていたの…そして今回のことでしばらく会えなかったから、ネットの検索で探してここに来たの…」
「俺も…会いたくて桂川モールまで探しに…」
「はい、桂川の友人のマネキンからもメールが来てそのことを知っています」

　やがて酒がまわったのか真希ちゃんの白い肌はピンクになっていた。豪華な冬物の服を脱がすとそこには下着はなく直接服を着ていた。
「そうか～マネキンは下着を履いていないのか～しかし、やっぱしこういうことはセクシーブラやビキニのパンティーを手でなぜたいし～それに脱がしたいけど…どこかに女性用のパンツがたしか～１枚あったはず」
と、妙なことを考えていた時に目覚まし時計が鳴った。
（その１１話完）