8 遺言者の死亡後
ここからは今回の体験談ではありませんが、遺言者が亡くなったら、いよいよその遺言を使って相続手続などを行わなければいけませんので、その場合、遺言者の関係相続人等から法務局へ遺言書情報証明書の交付を申請することが出来ます。
わかりやすく言えば「遺言書の謄本」といえる書類で、各種相続手続で遺言書として使えますし、家庭裁判所の検認も必要ないということになります。
この遺言書情報証明書の交付手続は、遺言を預けた法務局だけでなく、遺言書保管手続を取り扱っている法務局ならば全国どこの法務局でも可能だそうです。
ちなみに、この遺言書の保管期間は、原本については遺言者の死後50年で、スキャンして読み取ったデータは死後150年だそうです。
死亡が明らかにならない場合は、120歳で亡くなったと仮定して死後何年かを計算するそうです。
最後に、遺言者の死亡後、遺言者の関係相続人等が遺言情報証明書の交付を受けたり、保管された遺言書の閲覧をした場合は、法務局から法定相続人や遺言書に記載のある受遺者等・遺言執行者全員(遺言書の閲覧や証明書の交付を受けて遺言の存在を知っている人は除きます。)に対して、法務局に遺言が保管されている通知が郵送されることになっています。
遺言書に記載のある受遺者等や遺言執行者ならともかく、相続人全員とは法務局が遺言者の相続関係の戸籍を全部調べるような手間を掛けるのかいささか疑問がありますが、法文上はそうなっているのでそうなのでしょう。
【2021年1月12日以下補足】
上記の点について法務局がどうやって法定相続人等全員を把握するのか気になっていましたが、相続開始後最初に遺言書情報証明書や遺言書の閲覧申請をする際に、『遺言者を被相続人とする法定相続情報一覧図の写しか相続関係を証する戸籍等の謄本一式』と、『遺言者のすべての相続人の住所を証する書類』が添付書類となっていました。
この点は、公正証書遺言と比べて申請する人のかなりの負担になりますし、一般の方が制度を利用するのに二の足を踏ませる大きな要因となるでしょうから、今後改善の余地がないものかと思いますね。
【補足以上】
関係者の中には他の相続人に遺言の存在は知れたくないと思う人もいるかも知れませんので、この通知はこの遺言書保管制度のメリットとデメリットの両方の部分だと思いますが、法務局に保管されていない自筆証書遺言であれば、遺言書が見つかったら家庭裁判所の検認手続の中で裁判所からすべての相続人に呼出状が行きますし、段階が違いますが、どんな遺言でも遺言執行者が就任したら、遺言に関わる財産目録付けて相続人に通知しないといけないのでそこで遺言の存在は知れるわけですので、法律の理屈の上では当然と言えば当然の通知なのかもしれません。