ハエの勉強を始めたころから、ずっと追ってきたハエに「ヤリバエ」があります。

 

槍のように細長い翅をもち、渓流に棲むこのハエは、清らかな流れが豊富にある信州で、是非とも追ってみたいハエの一つでした。

 

先日、近所の渓流へ散策に行ったところ、川沿いの湿った岩場にヤリバエの姿を見つけました↓

クモスケヤリバエ Lonchoptera satckelbergi (Czerny, 1934) ♂

27.Ⅳ.2023. Ina-valley. Nagano. Japan.

 

体長5㎜ほどで黒っぽい地味な体色ですが、前脚が明るい褐色だったり後ろ足の脛が膨らんでいたりと、よくよく見るとチャーミングです。

 

撮影しながら観察していると、面白い行動が見られました。

 

翅を開いているクモスケヤリバエの雄(右の個体)

 

槍のような翅を、開いては閉じる。

 

はじめは雄同士、追い払い行動をしていたのですが、ある時から雄の行動が控えめになりました。

 

雄の視線の先には…雌の姿が!!(上の写真)

 

雄は翅を開いたり閉じたりしながら、慎重に近づいていき…

チョン!(雌が雄の頭に手を当てています)

 

その後もこの雄は、同じ雌に何度もアプローチしていましたが、なかなか交尾には至りませんでした。

(このチョンは雌の「まだ駄目よ♡」という合図なのかもしれません)

 

翅を開くディスプレイ行動をするクモスケヤリバエの雄

 

爽やかな風と、春の日の光に満ちた渓流の石の上では、ヤリバエたちの恋の駆け引きが行われています。