米軍は、オスプレイの飛行再開を決めました。

 

オスプレイを運用する日本にも、詳細に説明したようです。

木原防衛大臣の弁では、「前例のないレベルで説明を受けた」そうです。

また、「アメリカの法律で認められる範囲内で、丁寧に説明していく」ともしています。

 

別の報道では、墜落の真の原因は不明で、調査は続いているとしています。

事故の原因となった部品は特定できたとしているので、おそらく、当該部品の点検や交換の周期を縮めたり、問題発生時の対処の訓練を追加することで、事故を防ぐ目処が立ったのでしょう。

 

 

まだ、現時点では、防衛省から公式な説明はないようです。

オスプレイは、自衛隊でも運用しているので、米軍と同じ対策を実施しなければなりません。

それに必要な情報は、防衛省も得ているはずです。

それらの情報が公開されない現状では、私個人としては、飛行再開に賛成し兼ねます。

 

どこまで、詳細に説明されるのか、じっくりと見ていくつもりです。

 

 

 

 

 

ところで、「オスプレイは欠陥機だ」と叫ぶ人が、少なくありません。

でも、何をもって「欠陥機」と言っているのでしょうか。

 

 

私が聞いた範囲の根拠を、列挙してみましょう。

 

・開発段階で、「未亡人製造機」と呼ばれるほど、事故が多かった。

・ニュースで、何度も事故が報じられている。

・飛行機とヘリコプターの両機能を持つので、操縦が難しい。

・飛行機(固定翼モード)とヘリコプター(回転翼モード)を切り替える時が難しい。

・オスプレイは、HCE(ハード・クラッチ・エンゲージメント)が起きる。

 

ざっと、こんなところでしょうか。

 

 

まず、「未亡人製造機」ですが、開発段階の話で、実用化後とは関係ありません。

これを言い出すと、飛行機が実用化するまでに、どれほどの事故があったのか、思い出さなければなりません。

例えば、リリエンタールも、墜落死しています。

開発段階の事故を肯定する気はありませんが、開発段階の事故を持ち出して、実用化後の評価にするのは、正しくないでしょう。

 

ニュースで、オスプレイの事故が多く流されるのは、事故件数が多いからではなく、ニュースバリューが高いからです。

米軍のヘリコプター事故は、年間に大小合わせて100件以上、重大事故だけでも年間10件程度も起きていますが、日本で報じられるのは、オスプレイくらいです。

ニュースバリューのオスプレイの事故だけを、ニュースで流しているのです。

デスクは、意図を持ってニュースの取捨選択を行います。

それに惑わされてはなりません。

 

固定翼モードと回転翼モードの切り替えは、容易ではないはずです。

ですが、それを欠陥と言うのは、論外です。

航空機は、引込み脚を持つ機体が、数多くあります。

引込み脚は、言わば飛行モードと滑走モードの切り替えです。

この切り替えがなければ、操縦は簡単になり、脚の出し忘れ事故もなくなります。

この論理なら、引込み脚は、欠陥と言えます。

でも、引込み脚を欠陥とは、誰も言いません。

固定翼モードと回転翼モードの切り替えも、操縦の難度は高くなりますが、それ自体は、欠陥とは言えません。

 

HCEについては、オスプレイの欠陥の一つでしょう。

また、真の原因は、今も判明していません。

ただ、飛行時間が長い機体のみに発生していることが判明しています。

なので、該当部品の交換頻度を高める対策が、実施されています。

 

 

 

このように見てくると、「オスプレイは欠陥機だ」とする根拠が薄いことがわかります。

 

唯一、欠陥と言えるHCEも、双発以上のヘリコプターにも起き得るものです。

HCEの故障箇所は、双発以上のヘリコプターにも採用されている技術です。

HCEがオスプレイ固有の欠陥だとするなら、ヘリコプターには発生せず、オスプレイのみに発生する理由を理解していることになります。

HCEの真の原因が見えているなら、是非、お話を伺いたいですね。

 

 

 

 

 

オスプレイをどこまで知っていて、オスプレイを欠陥機と言っているのでしょうか。

「オスプレイは欠陥機」と言う方のほとんどは、オスプレイの詳細を理解しているようには見えません。

 

 

 

オスプレイのローターの回転方向が、現行と逆だったら、私は、欠陥機と呼んだでしょう。

その理由を理解できる人は、どのくらいいるのでしょうか。

 

 

オスプレイのローターの回転方向は、オスプレイを正面から見て、左翼ローターは時計方向、右翼ローターは反時計方向に回転しています。

もし、これを左翼ローターは反時計方向、右翼ローターは時計方向に回転するように設計していたら、あなたは根拠をもって「欠陥機」と言えますか?

 

単ローターのヘリコプターは、真上から見て、ローターは時計方向に回転するタイプと反時計方向に回転するタイプがあります。

エアロスパシアル社製は時計方向、シコルスキー社製は反時計方向に回転します。

ローターの回転方向の違いで、癖の出方は逆になりますが、性能に違いは出ません。

 

一方、オスプレイは、ローターの回転方向を逆にすると、航空機として性能が大きく低下します。

実際、オスプレイと同じチルト・ローター機のバロー(V-280)やAW609も、メーカーこそ異なりますが、ローターの回転方向はオスプレイと同じなのです。

この回転方向に意味がある、状況証拠と言っても良いと思います。

 

ローターの回転方向の理由については、7年余り前に、親ブログに書いているので、ここでは省略しますが、リンクだけ貼っておきます。

 

(リンク↓)

 

 

オスプレイのローターの回転方向の理由がわからないようでは、オスプレイの欠陥を見抜く力はないでしょう。

それは、確実に言えると思います。

 

 

 

私は、オスプレイに詳しいわけではありません。

それでも、実験機だった時期から、雑誌で知っていました。

 

その当時の姿勢制御方法は、今のオスプレイとは異なっていました。

回転翼モードのピッチとヨーは、テールブームのブリードエア噴射口で、制御していたように記憶しています。

バリヤーと類似の方法です。(F35Bは、少し違うらしい)

 

現行のオスプレイは、基本的にはサイド・バイ・サイド・ローター方式に類似する方式です。

ロシアのMi-12(試作機のみ)と、同じ姿勢制御方法です。

 

オスプレイに詳しくない私でも、この程度の知識はあります。

 

 

 

オスプレイに反対される方が参考することが多いのは、元・米国防研究所主任分析官のリボロ氏ですが、かなりの出鱈目を言う方です。

 

オスプレイが配備される前の紛争を持ち出し、その時を「稼働率が低い」と言ったり、回転翼モードで空中給油できないことを「致命的欠陥」と言ったり、無茶苦茶です。

 

空中給油は、固定翼機より回転翼機の方が難しいことが知られています。給油機側の難易度も、回転翼機への空中の方が難しくなります。

オスプレイは、回転翼モードでは巡航しません。巡航中に行う空中給油は、固定翼モードでできれば、充分です。

逆に、回転翼モードで空中給油を受ける状況は、極めて特殊な状況に限定されます。

固定翼モードで空中給油ができなければ、致命的な欠陥ですが、回転翼モードで空中給油ができなくても、問題になるケースは極めて稀であり、欠陥には程遠いものです。

 

 

もし、リボロ氏の言説を元に、「オスプレイは欠陥機」と思っているなら、考えを改めた方が良いでしょう。

 

 

 

 

私は、防衛費増額に反対するくらい、できる限り戦争を遠去けたい考えを持っています。

敵基地攻撃兵器なんか、戦争を近付けるだけだと思っています。

 

ですが、万が一、侵略を受けた時には、前線で戦うことになる自衛官には、良い道具を与えたいのです。

 

オスプレイは、ヘリコプターより2倍も早く、2倍も遠くまで飛ぶことができます。

オスプレイをヘリコプターに戻したなら、前線の近くから発進し、危険な空域を2倍の時間を掛けて飛行しなければなりません。

空中給油するにしても、オスプレイより遅い速度なので、リスクが高まります。

 

任務を遂行し、無事に帰還するためには、条件にもよりますが、オスプレイはヘリコプターより有効だと考えています。

 

 

もちろん、オスプレイ自体の信頼性が低いなら,前提が崩れてしまいます。

だから、冒頭で、原因が明確にならなければ、飛行再開には賛成しかなるとしたのです。

 

 

 

 

 

 

「オスプレイは、欠陥機だ」なんて、つまらな事を言うのではなく、もっと柔軟に考えるようになってほしいと思っています。