日本は、空母を持つべきなのでしょうか。

『日本が空母をもつべき』とする意見には、次のようなものがあり。

・海上自衛隊にとって悲願
・国際貢献のため
・国力に見合う軍事力を持つため
・近隣国が反日&抗日色を強めている
・中国の空母に対抗するため


ざっと、こんなところでしょうか。
 

個々に見てみましょう。

海上自衛隊にとって悲願』て、何を言いたいのでしょうか。本気で言っているなら、子供を相手にするようなものです。
『悲願』の中に、目的が見えてきません。目的がないのに恐ろしく高価な艦を要求するとは、あり得ないでしょう。私には、子どもの我がままくらいにしか見えません。

国力に見合う軍事力を持つべき』も、目的は不明確です。ただ、国力が大きくなれば敵も増えることになるので、軍事力は必要です。『国力に見合う』の中に基準と根拠がなく、「せめてアメリカの3分の1(国力相当)くらいは空母が欲しい」との考えが透けてくるのです。
そもそも日本の国力は、世界最低レベルなのかもしれないのです。累積債務はもちろんのこと、毎年発行される国債の額でも、世界最悪レベルです。GDP比の累積債務は、財政破綻したギリシャより悪く、しかも改善の兆しがあるギリシャとは違い、日本は悪化の一途を辿っています。
『国力に見合う軍事力』と言うなら、空母はもちろんのこと、戦闘機も戦車も諦めるべきなのでしょう。

国際貢献のため』を主張される方がいますが、物を破壊し、人々を傷付け、殺すのが国際貢献ですか。
紛争国に空母を派遣してできることは、そういうことなのです。
空母や艦載機には、ミサイルを無力化できる機能はありません。相手の武器を破壊する程度です。近年の紛争は、ゲリラ的な戦闘が多く、火器も、簡単に手に入いる機関銃や地雷で、戦い方も市街戦やテロです。空母や艦載機を使う戦闘では、市民の犠牲者ばかりが増え、恨みを持つ新たな戦闘員を生み出すだけです。
『国際貢献』と言いつつ、何に貢献しているのか、誰に貢献しているのか、意識しなければなりません。

近隣国の情勢不安』は、軍事力の強化の追い風になるでしょう。
ですが、それが空母と結びつくのかと問われた時、客観的な回答は容易ではありません。
まず、防衛に限定すれば、陸上基地だけで充分に迎撃できます。中国の沿岸部や朝鮮半島なら、陸上基地から対地攻撃さえ可能ですし、空母を使っても中国の西部への攻撃は難しいところです。
空母の必要性を説明できません。

中国の空母に対抗するため』との考えは、日本の防衛とはほとんど関係ありません。
空母は、移動できる航空基地と理解できます。自国の陸上基地からでは届かない海域に航空基地を置くことができることにこそ、空母の存在価値があるのです。となると、『中国の空母に対抗するため』とは、「中国が海洋進出するから、日本も真似すべきだ」との意味になります。
そもそも、敵の空母から自国を守るために、空母で対抗する発想は、馬鹿げています。
防衛が目的なら日本近海が戦場となるので、陸上基地から航空機を飛ばせます。
陸上基地vs空母となると、運用できる航空機の数、攻撃に対する脆弱性で、陸上基地が圧倒します。移動できる空母は攻撃座標を決められない強みがありますが、空母の位置を把握できない状況は考えにくいので、大きなアドバンテージにはなりません。
仮に、空母の位置を把握することが不可能だと仮定しても、補給線を絶てば良いのです。同じ条件で空母vs空母となると、先に見つけた方が勝ちになるだけで、空母所有が防衛力強化とは言えません。
(こんな戦い方しかできないなら、80年前から進歩がないことになる!)
 
 

空母の本来の機能は、本土から遠く離れた場所に航空基地を持ち込むことにあります。
空母の建造を求めるなら、その目的に沿った使い方を主張すべきです。危機感を煽り真実から逸らすやり方は、人の命に直結する兵器の要否を議論する場では、すべきではありません。

私は、専守防衛の前提で『日本が持つべき空母』を検討してきました。
当ブログの中では専守防衛の範疇から逸脱するつもりはありませんが、議論としては米軍のように海外の紛争にも軍事力を行使するためのツールとして空母を要求するのなら、理に適っており、議論に値すると思います。
ただ、その議論の前に、憲法の改正が必要です。それを無視するとしても、軍事力行使の形態を考える必要があります。
どんな紛争に関与するのかによって、装備も大きく変わります。「どんな紛争でも対応できるように」なんて言うなら、目的無き戦争になってしまいます。国益より空母を考えている証拠にもなりかねません。
目的もなく「空母が必要」と言ったところで、バカにされるだけです。
 
 
総論としては、現在の「日本は空母を持つべきではない」というのが、私の結論です。