Sat 180915 ミラノの早朝/治安/シルミオーネの朝日(イタリアしみじみ12) 3719回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 180915 ミラノの早朝/治安/シルミオーネの朝日(イタリアしみじみ12) 3719回

 

 外国での早朝ウォークはコワい。東京の今井君は毎朝4時に起き、約1時間にわたって渋谷区の暗がりを歩き回ってくるのであるが、さすがに外国滞在中にこれを毎日やる勇気はない。

 

 20世紀の最終盤以来、メディアでは「日本の安全神話は崩壊した」と同じことばかり繰り返されてきた。しかし危険にまみれた雰囲気の渋谷区のど真ん中でも、早朝4時の暗がりにほとんど危険を感じない。

 

 9月中旬、東の空にそろそろ夜明けの気配が現れ、東京タワーのライトアップも5時ごろ終了する。ペーパーレスの世の中でも、新聞配達のバイクがそこいら中の路地を走り回り、深夜早朝の時間帯まで酒を飲んでいた人々を乗せて、夜明けのタクシーが住宅街をさまよっていたりする。

     (日の出30分前のシルミオーネ 1)

 

 ところが諸君、例えばミラノ中央駅前の同じ時間帯、その雰囲気は「リアル羅生門」である。大袈裟に言えば、身の毛もよだつ恐ろしさ。もしここに芥川龍之介どんを連れて来れば、「羅生門」はもっともっと恐ろしい描写に変わっただろうし、黒澤映画だってリアルさをグッと増していたんじゃないか。

 

 話は多少前後するが、9月12日の早朝5時半、ワタクシはまさにそのミラノ中央駅の暗がりを歩いていた。ミラノからチンクエ・テッレへの日帰り旅を敢行したのであるが、その詳細はまたいつか書くとして、「リアル羅生門」の現実を垣間見たのは、この時が初めてではなかった。

 

 さらにその2日前、オーストリア国境「リーバ」の町への日帰り旅を試みた時も、状況は同じだった。ミラノ中央駅前に陣取って路上生活を送る人々、駅前には彼ら彼女らのネグラがズラリと並んでいる。

 

 もしそれだけなら、10年前の東京などでもしばしば見た光景であるが、現時点のミラノ中央駅前では、彼らの集団どうしで小さな乱闘も頻繁に起こっているようである。

     (日の出30分前のシルミオーネ 2)

 

 朝5時半、中央駅前には彼ら彼女らの罵声が響き、コンクリートに投げつけられたガラス瓶が割れる音も続く。ガラスが割れては罵声、再び割れては今度は歓声と拍手が響き渡る。

 

 出張に出かけるらしいサラリーマンは、慎重に彼ら彼女らの集団を避けて駅に向かう。臆病な今井君は、その地元オジサマの後ろについて、ほうほうのていで駅舎に逃げ込んだ。

 

 それ以上の詳細は、ここには書かないでおく。あんまり深く詳細に踏み込むと、諸君がミラノとかナポリとか、イタリアの大都市を訪ねてみようという気を失くしてしまうかもしれない。

 

 危険ということなら、マドリードもニューヨークも変わらない。同じミラノでも、地下鉄車内だって十分に危険。しかし特にミラノ中央駅前の状況は、ホンの3ヶ月前と比較しても、急速に悪化しているように感じる。「当局者は何やってんだ?」と訪ねたくなるほど、悪性の歓声や罵声に満ちている。

 

 一般に、深夜より早朝の時間帯の方が危険度が高まるようである。イタリアの9月の夜明けは遅い。午前5時はまだ真っ暗、午後6時を過ぎてもまだ雰囲気は深夜、ようやくお日様が顔を出してホッとするのは、時計の針が7時に近づく頃である。

     (日の出30分前のシルミオーネ 3)

 

 それに比較して、シルミオーネの早朝の穏やかさはどうだ。ワタクシは深夜遅くまでアマローネを味わい、日付が変わる頃まで起きていたにも関わらず、午前5時にはベッドから出て、ガルダ湖畔の朝の散策を満喫したのである。

 

 見上げると、ズラリと並んだ糸杉の並木の向こうに、鎌の形をした二十六日の月が光っている。月はどこまでもついてきて、教会の上にかかったり、港の上に浮かんだりする。

 

 まだ夜明けは遠いのに、朝食を出すカフェの厨房からは、パンの焼ける香ばしい香りが漂ってくる。港の向こう側のマリア様のお堂では、お年を召した早起きの尼僧が1人、低い声でお祈りを捧げている。同じぐらいの年齢のオバサマたちが尼僧に挨拶すると、穏やかな早朝の会話が始まる。

      (ガルダ湖に、間もなく朝日が昇る)

 

 水鳥たちは、まだゆったりと眠っている。船着場の階段にズラリと並んで、温かい翼の下に嘴を突っ込み、マコトに心地よさそうである。 ボートの陰で風や波をよけながらうつらうつら、いつまでもゆらゆら揺れ続けている鳥たちもいる。

 

 ちょうど天橋立の形をした細長い半島の先端だ。半島は一番細いところで数十メートルしかないらしい。港は西のデセンツァーノの町に向いているが、その港から東に数十秒ほど歩けば、湖の東側に出る。この日の朝日は湖の東、バルドリーノの町とレチーゼの町の中間に、6時48分に出る予定だった。

        (シルミオーネの朝日 1)

 

 東側の湖岸は完全に無人であるが、さすがに明るくなり始めて、水鳥の諸君も少しずつ目覚めてきた。こちらの主役は、カモメとカラスである。やっぱりカモどんたちはいまだに惰眠を貪っているようだ。

 

 優勢なのはカモメ軍。1羽か2羽のシラサギが悠々と餌を漁っているが、そのシラサギの存在がカモメ軍に緊張をもらたしている。シラサギが舞いおりるたびに、カモメ軍団から警戒警報のような高い叫びが上がる。

        (シルミオーネの朝日 2)

 

 早朝の空に、すでにたくさんのヒコーキが飛んでいる。一番近いのは、湖の東のヴェローナ空港、そのすぐ先にはヴェネツィア空港もある。日の出を待つ十数分のうちに、少なくとも4機のヒコーキが東の方向に降りていった。ヴェネツィアの運河の船が早朝から超満員なのも、なるほどと頷ける。

 

 北東の方角には、昨日登ってきたばかりのバルド山が青く浮かんでいる。中腹に霞か雲がかかり、そこが薄赤く朝焼けに染まっている。長く湖に突き出た桟橋の先端まで出て、波の音を聞きながら日の出を待つ。3ヶ月前にも同じ場所で同じことをしていた。

        (シルミオーネの朝日 3)

 

 6時48分、日の出。待ちに待った太陽は、ホンの数十秒で一気に湖の上に全容を現し、湖も直視できない明るさに変わる。スカリジェロ城のほうから1匹の大きなネコがやってきて、どうやらナワバリの朝の点検に向かうようである。大あくびをして、うつらうつら北の方角に進んでいった。

 

 以上が、シルミオーネでの早朝の散策の概要である。今日 → 滞在6日目は、ガイドブックどころかネット情報もあまり見つからない小さな町を訪ねる予定。LeziseBardonlino。どちらも「中世の面影を色濃く残している」というごくわずかな情報があるのみだが、詳細はまた次の記事で。

 

 とりあえず朝7時、いったんホテルに帰って、1時間ぐらい昼寝というか朝寝というか、カモどんたちと同じようにのんびり惰眠を貪ろうと考えた。

    (大きなネコが1匹、朝の点検に現れた) 

 

1E(Cd) SCHUBERTERLKONIG SUNG BY 18 FAMOUS SINGERS

2E(Cd) TOSHIYUKI KAMIOKA&WUPPERTALSCHUMANNSINFONIE Nr.4

3E(Cd) Walton, MarrinerRICHARD 

4E(Cd) Tomomi NishimotoTCHAIKOVSKYTHE NUTCRACKER(1)

5E(Cd) Tomomi NishimotoTCHAIKOVSKYTHE NUTCRACKER(2)

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