Fri 170915 東大野球部が勝ち点/正捕手めざして/トナカイを貪る(晩夏フィヨルド紀行9) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 170915 東大野球部が勝ち点/正捕手めざして/トナカイを貪る(晩夏フィヨルド紀行9)

 宮台君の好投のおかげもあって、東大が東京六大学野球で15年ぶりの勝ち点を獲得した。対する法政大には甲子園経験者が6人、東大のほうは浪人経験者7人。マスコミは宮台君のことばかりだが、このメンバーで法政相手に8点も奪ったナイン全員を称えるべきだろう。

 東大は、一昨日の試合でも9—2で法政大に勝利。慶応にもたいへんな善戦を展開したが、10—13で敗れた。慶応を相手にしても、やっぱり10点も奪ったのだ。全員野球の素晴らしさを、この秋は存分に見せつけている。

 それに比べて、ジャイアンツはどうだ? 松本選手の引退については昨日のブログで触れたばかりだが、その翌日には俊足巧打&好守の藤村選手を「戦力外」と発表した。

 もちろん、それがこの30年のジャイアンツの方針である。「ピッチャー以外は全員4番打者」みたいな選手構成については、アンチ・ジャイアンツのヒトビトから嘲笑・失笑・憫笑レベルの批判を受けて久しい。松本や藤村みたいな選手の活躍の余地は、もともと存在しないのだ。

 V9時代を振り返れば、土井に黒江、このタイプに近い選手はナンボでもいた。4番ばかり集めるようになったのは、1990年代以降。ヨワ—いジャイアンツに独特の傾向である。
店内風景
(オスロ「エンゲブレトカフェ」店内。かつてイプセンもこの店に通った)

 予備校だって同じことで、人気抜群の4番タイプばかり集めたらどうなるか、それなりに理解させてくれる予備校が、3年ぐらい前までボクンチのすぐ近くにも存在、当時の「3大予備校」の一角をなしていた。

 そりゃ誰だって、「エースで4番」は憧れだ。エースで4番でいたいからこそ、講師としての生活を選んだんだし、エースでも4番でもなくなっちゃったら、こんなに厳しい職場でいつまでも悪戦苦闘を続ける必要なんか感じないのである。

 ワタクシはちょっと異質だったのかもしれない。予備校の世界に入った直後は、さすがの今井君も「エースで4番を目指す」というありふれた欲望のトリコだったのだが、「どうやら自分はそのタイプではない」と、ほとんど即座に理解したのである。

 予備校講師の「エースで4番」を狙うには、「東大卒」ないし「超イケメン」のどちらかが望ましい。ホントは単に「東大卒」じゃなくて、「灘 ☞ 東大理三」「開成 ☞ 東大博士課程卒」ぐらいが理想的。県立高校出身とか、フツーの学部卒とか、そんなんじゃ、世間はなかなかエースの資格を認めてくれない。

 もしもワタクシが「超イケメン」なら、「公立高校 ☞ 早慶・学部卒」という履歴でも何とかエースの地位が得られるかもしれない。身長185cm、股下1メートル、お顔は見目麗しくジャニーズ並み。もしも「実家は港区広尾」「港区六本木」、その辺の付加価値がつけば、文句はない。

 しかし諸君、片田舎の出身、市立中 ☞ 県立高 ☞ 早稲田大、身長172cm、座高100cm、ルックスはサトイモかキウィ、性格もマコトに平凡で内気、この条件で予備校の世界の「エースで4番」だなんて、そもそも目指すところが間違っている。
外観
(オスロ「エンゲブレトカフェ」外観。かつてイプセンもこの店に通った)

 講師になったばかりの頃は、「俊足巧打&好守」タイプを目指したこともあった。1番レフト、2番セカンド、9番ショート。野球の世界なら、「エースで4番」に次いで最も人気の出やすいポジションである。

 しかしそのポジション、なかなか厳しい要求が課せられるワリに、キープするのが難しい。20歳代とか30歳代前半とか、若くてピカピカしているうちはいいが、ちょっと年をとりはじめると、容赦のない批判の対象になりやすい。

 盗塁に3回続けて失敗してみたまえ。「かつての輝きは感じられない」「すでに『鈍足』の域に近づきつつある」「ベテラン1番打者に危機」「世代交代の必要性」。世間の目も口も、中年に至った俊足巧打プレーヤーにはマコトに厳しい評価を下すのである。

 予備校の世界で「俊足巧打」に該当するのは、「総合講座の人気講師」「コースの中の気鋭講師」の類いである。個人の名前で集める単科ゼミとか特設単科はガラガラでも、チームで集める総合講座なら、超満員で常に大爆笑の連続。そういう若手のセンセは少なくない。

 でも諸君、それもやっぱり若いうちが華なのであって、厳しい世代交代はマコトに早く訪れる。総合コースの気鋭講師の座は、30歳代前半ぐらいが限度なんじゃないか。

 気がつくともっと若い人気者が現れ、授業後の談笑の輪はとっくにそっちに移っている。ワイワイ&ガヤガヤ楽しそうな輪を眺めながら、この世界から寂しく退場するはめになる。
ワイン
(ソムリエどんが、ワインを丁寧にデカンタに移してくれた)

 今井君が目指したのは、野球に例えれば「正捕手」の座である。エースでも4番でもイケメンでもなくていい。そのクセ、常に勝利の中心にいる。V9時代の森もそうだし、野村克也も古田も伊東も山倉も同じことである。

「タッチ」の上杉の向こう側には、ブサイクな松平がキャッチャー面をかぶってミットを構えていた。星飛雄馬が活躍できたのは、伴宙太が存在したおかげである。

 エースはイケメンであるに越したことはないが、背番号「2」を確保すれば、サトイモだろうがクマだろうがキウィだろうが、もう一向にかまわない。常に勝利の輪の真ん中にいて、鈍足でも不格好でも不器用でも、ちっとも批判の対象にならず、むしろそれゆえに愛される。

「よっしゃ、正捕手の座を目指そう」「全体が見えているという点なら、背番号2に勝てる者はいない」。予備校講師5年目ぐらいから、ワタクシはエースも俊足巧打もヤメにして、プロテクターとレガースをギュッと身につけた、強い受け皿に徹することに決めた。
トナカイ
(オスロで「トナカイのステーキ」を貪る)

 このブログにしても、メッタヤタラに旅ばかりしていることも、そのへんの決意に関連しているのである。もしもワタクシがエースなら、こんな暢気なブログなんか毎日書いていられない。海外の旅どころの話じゃない。

 授業に講演に執筆に全ての時間を費やし、参考書もボンボン、何もかもボンボンボン、肩を壊そうがヒジを壊そうが、休むことなく仕事に集中、今井にはとても不可能な尊敬すべき日々を送ることになる。

 暢気なブログなんか絶対に無理だし、モロッコもメキシコもキューバも、ノルウェーもベトナムもシチリアも、全てあきらめて星飛雄馬なみに人生をジャイアンツに捧げなきゃいかん。

 そこへ行くと諸君、ポジションが捕手ということになると、こりゃググッと立場が楽じゃないか。暴飲暴食も、キャッチャーなら笑いの対象にしてもらえる。

「タッチ」の松平よろしく、生牡蠣40個、ステーキ700グラム、ムール貝60個×14日、「なるほど、だからそんなに迫力があるわけね」「どんどん食べなさい」「どんどん旅に出かけなさい」とニッコリしてもらえるわけだ。

 その辺のことを考えれば、もっともっとワイルドでもよさそうだ。食べる肉もどんどんワイルドになって、イノシシ・シカ・ウサギ・ヤギ・ウマ・カエル・クマ、もうとどまることを知らない。バイキングの国♡ノルウェーに来れば、当然そこに「トナカイのステーキ」が入り込む。

 季節は夏8月。今トナカイを貪っても、サンタクロースのために赤鼻のトナカイさんが大活躍するまで、まだ4ヶ月も残っている。いいじゃないか、いいじゃないか、トナカイ。だってオレは大食いのキャッチャー役だ。
ホテル
(オスロ、夕暮れのグランドホテル)

 店の名は、Engebret Café(エンゲブレトカフェ)。イプセンも通った。ムンクも通った。イプセンやムンクがトナカイをワシワシ貪ったかどうかは知らないが、何しろ外はどんどん冷え込んでいく。トナカイぐらい焼いてもらわなきゃ、明日の体力が続かない。

 ノルウェーの物価は、驚くほどに高いのである。「高福祉」を歌い上げる以上、「富裕層や大企業に応分の負担を求める」などという甘い発想だけでは限界があるので、物価はどんどん高くなる。

 オスロ駅前のスーパー「MENY」で、330mlの缶ビールが約600円。日本なら350円、ベトナム・ホーチミンなら80円。日本の2倍、ベトナムの8倍だ。高福祉のためには、国民がこぞってたっぷり負担しなきゃいけない。

 だからこの店のトナカイ・ステーキもたいへん高価である。注文した赤ワインも大いに高価だったらしく、専門のソムリエさんが実に丁寧にデカンタに移してくれた。この一晩のディナーでいくらかかったか、金額をここに記すことは遠慮したほうがよさそうだ。

 むしろ、かつて松平捕手タイプを目指した今井君としては、ナンボかかったか、ナンボ払うことになるか、そんなことは一切無関心に「うンめえ♡」「うンめえ♡」と唸りながら、生臭さなんか全く気にしないで、血のしたたる半ナマ肉をひたすら元気に貪った方がいいじゃないか。

1E(Cd) Bernstein:HAYDN/PAUKENMESSE
2E(Cd) Richter & Münchener:BACH/BRANDENBURGISCHE KONZERTE①
3E(Cd) Richter & Münchener:BACH/BRANDENBURGISCHE KONZERTE②
4E(Cd) Muti & Berlin:VERDI/FOUR SACRED PIECES
5E(Cd) Hilary Hahn:BACH/PARTITAS No.2&3 SONATA No.3
total m79 y1725 d21674