Thu 170316 下北沢で満開の桜/北沢川緑道/だいだらぼっち/贅沢な世田谷のお花見 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 170316 下北沢で満開の桜/北沢川緑道/だいだらぼっち/贅沢な世田谷のお花見

 4月6日、下北沢のラーメンと餃子で「ほぼ満腹」状態のワタクシは、マコトに意気揚々と鎌倉通りを三軒茶屋方面に南下、桜満開のはずの「北沢川緑道」に向かった。

 4月2日のフライイング気味な満開宣言以来、すでに4日が経過。待ちに待ったホンマモンの満開である。東京は強い南風が吹きまくり、夕方からは雨も予想されていて、もし満開の桜を見るなら今日がベスト。明日の朝はかなりの花びらが風に舞う状況ですかね。今井君の予想はイヤというほどよく当たる。

 名勝・千鳥ヶ淵は2日前に3分咲きを見てきたばかりだから、今日はググッとローカルに、世田谷のジモティが集まる北沢川緑道を散策しようと思う。

 上北沢から渋谷に向かって流れ、やがて目黒川と合流する北沢川は、遥かな昔に暗渠化、下水道に転用されてしまった。江戸時代に下北沢村の開拓に利用された由緒ある川である。

 今はその暗渠の上にキレイな人工のせせらぎが水しぶきをあげ、せせらぎには鴨の家族が楽しそうに浮かんで、桜の花びらを小さいアンヨで掻きまぜながら、ラクラクと泳ぎ回っている。
保存樹木
(代々木上原駅前、「渋谷区保存樹木」に指定された桜の老木も、見事な満開の花を咲かせた)

 しかし諸君、こんな小さな川でもいろんな伝説&伝承があって、北沢川の支流「森厳寺川」のそのまた支流に「だいだらぼっち川」という、マコトに意味深な名前の川も存在する。

 だいだらぼっちとは、大きな人間を意味する「大太郎」に愛称の「法師」くっつけた「大太郎法師」が語源。「法師」は「一寸法師」「サトイモ法師」「影法師」みたいに、「可愛げのある不思議なヤツ」という意味の愛称として頻繁に使われた。「ひとりぼっち」の「ぼっち」も、もともとは法師の転訛である。

 だいだらぼっちは、ほぼ一寸法師の反対語。デカくて不思議なヤツという意味の妖怪で、むかしむかしの地方の風土記にも頻繁に登場する。常陸国風土記。播磨国風土記。おお、日本史の教科書で何度もお目にかかった風土記群だ。

 ついでであるが、「常陸国風土記」は講談社学術文庫でカンタンに手に入る。訳注をつけた秋本吉徳氏は、駿台予備学校・古文科の人気講師であった。やっぱり駿台は、単なる予備校なのにマコトにアカデミックであって、物理の山本義隆先生以外にも、大した学者がワンサといらっしゃる。
緑道1
(北沢川緑道の桜も、満開になった 1)

 その「常陸国風土記」の中に、大櫛(ないし大串)という丘についての記述がある。大むかし巨人が住んでいて、丘の上から海に手が届き、海の大ハマグリを拾って貪った。

 巨人が貪ったハマグリの貝殻は、うず高く積もって丘になっちゃった。それが貝塚である。だいだらぼっちの足跡を計ってみたら、長さ40歩ほど、幅が20歩ほど。立ち小便もその勢いはスゴかったのだろう、地面にうがった穴は直径が20歩だったというのだから、ホンマにスゴいヤツである。

「播磨国風土記」の方には、「だいだらぼっちの足跡は、深すぎてやがて沼になっちゃった」という記述がある。背が高すぎて天につっかえ、いつも屈んで歩かなきゃいけなかったが、その辺だけは背を伸ばして歩けるほど天が高かったのだという。

 何しろデカいし、むしろデカすぎるから、
「榛名山(一説に赤城山)に腰掛け、利根川で足を洗った」
「山形の羽黒山に腰掛けて、鬼怒川で足を洗った」
「転んで手をついたところが、浜名湖になっちゃった」
「水戸の千波湖は、だいだらぼっちの足跡だ」
みたいな、デッカい伝説がナンボでも残っている。

「甲斐の国の土を使って富士山を作成。だから甲斐の国は今も盆地になっている」なんてのもあれば、同じように「近江の国の土で富士山を作成。そこが琵琶湖になりました」というのもある。おお、話がデカくて爽快だ。
緑道2
(北沢川緑道の桜も、満開になった 2)

「筑波山を持ち上げてみたら、うっかり地面に落として割っちゃった。だから筑波の峰は、今も2つに分かれ、双峰と呼ばれているんです」

「秋田県の横手盆地はもともと湖でした。その干拓 ☞ 農地化に手を貸してくれたのが、だいだらぼっち君。秋田市にある大平三吉神社の化身とされています」

「太平三吉神社」は、毎年お正月に幼い今井君が父・三千雄どんと一緒に、まだ暗い道を初詣に出かけた神社である。いやはや、スゲー身近になってきたじゃないか。

 埼玉県浦和市の「太田窪」(だいたくぼ)という地名も、だいだらぼっち伝説が元になっている。20年ほど前まで東京駅八重洲口に「太田窪」という鰻屋があって、名古屋出張の際の今井君はしょっちゅうお世話になった。おお、だいだらぼっち。何だかホントに身近な存在だ。

 北沢川や「だいだらぼっち川」が流れる世田谷区東部には、代田(だいた)・代沢(だいざわ)の地名がある。だいだらぼっちと代田が関係するのは、ここまで詳細に述べれば誰だって気がつくだろう。代沢も、「だいだらぼっちの作った沢」が元になっているはずだ。

 以上、柳田国男のご本から上手に情報をすくい出して並べてみた。ノンキに北沢川緑道のお花見を楽しみつつ、柳田国男センセなんかが脳裏に浮かぶのであるから、今井君もまだまだ捨てたもんじゃないでござるね。
緑道3
(北沢川緑道の桜も、満開になった 3)

 ワタクシが世田谷区代沢4丁目に住んで、現代のだいだらぼっちを演じていたのは、1997年から2002年までの6年間である。駿台を辞めて代々木ゼミナールに移籍し、代ゼミ四天王の一角を占めて、何だかずいぶん荒っぽい日々を過ごしていた頃である。

 とは言っても、もともと質素な生活が大好きな今井君。タクシー通勤などという優雅な生活に慣れてしまったのは、代ゼミ講師の贅沢好きが感染した2000年以降のことである。

 だから毎朝の通勤は、バス。オウチから歩いて1分の「代沢十字路」というバス停から、渋谷駅西口まで20分ほどのバスライドを楽しんでいた。代々木には、渋谷で山手線に乗り換えれば5分。横浜校の朝は、渋谷から東横線で30分。大宮校の朝は渋谷から埼京線で40分。ホントに毎朝バスにお世話になった。

 東京のバスは、地方出身のワタクシなんかには信じがたいほど頻繁に走っているのである。朝は、2分に1本。目の前に来たバスが満員でも、もう次のバスが後ろに来ている。やっぱり座れるほうがいいから、2本も3本もバスをやり過ごすこともあった。
河鍋暁斎
(渋谷の東急本店に、河鍋暁斎の展覧会を見に行く)

 そんな街だから、お花見の集団も豪華である。北沢川緑道のほぼ終点「せせらぎ公園」まで、花見の酒を観察してみると、「ビール」でもなければ「日本酒」でもない。

 ましてや「第3のビール」だの「ワンカップ」だの、そういう世界とは完全に無縁。諸君、シャンパンに高級ワイン、渋谷に近い世田谷の東側の人々は、お花見にシャンパングラスを持参する。あまりにハイソで、ワタクシなんかにはとてもついていけないのだ。

 思わず、「誰か、シャンパンくれませんか?」「その高級ワイン、味見させていただけませんか?」と、人々に目で訴えかけてしまう。出来るだけ愛想良く行動して、「どうですか、シャンパン一緒に飲んでいきませんか?」という声がかかるのをひたすら待ち受けたのである。

 しかし残念なことに、世田谷のオカネモチには控えめな人が多いようだ。こんな優しい今井君に、声をかけてくれる人はだーれもいない。「あのデカい腹は、だいだらぼっちかも知れないよ♡」と恐れていらっしゃる様子である。

 ま、それも致し方ない。たった今、ラーメンにチャーハンにギョウザにビールに日本酒、さんざん貪ってきた直後である(スミマセン、昨日の続きでした)。シャンパンのご相伴を諦めたサトイモ法師は、やってきたバスに乗り込んで渋谷の街を目指した。河鍋暁斎の展覧会を見ようと思ったのである。

1E(Cd) George Benson:THAT’S RIGHT
2E(Cd) George Benson:LIVIN’ INSIDE YOUR LOVE
3E(Cd) George Benson:LOVE REMEMBERS
6D(DMv) STRIKING DISTANCE
total m96 y467 d20425