2016年09月09日(金)

Tue 160816 接近と闖入(ボルドー春紀行34/第2995回/カウントダウン5)

テーマ:ブログ
 憧れの対象というものは、あくまで遠くからボンヤリ眺めて「すごいなあ」「キレイだなあ」「カッコいいなあ」と嘆息を漏らすだけに留めていたほうがいい。山でも城でも寺院でも、大学でも人でもみんなそうである。

 ネコでさえ「かわいいな」まででガマンしたほうが無難なのだ。「にゃんこゲット」とか、そういう甘えた声をもらしていられるうちが花なので、いったん「ゲット」なんかしてしまえば、日々にゃんこの世話に追われ、マトモに仕事なんか出来なくなってしまう。

 特にその「にゃんこ」なるものが男子にゃんこであったりすれば、まもなく家中スプレーして回る。「ここはオレの縄張りだ」という宣言のために、ニオイの強い尿をふりまいていくのであって、部屋中ネコくさくて冬でも窓を開けなきゃ息もできない。

 なでしこもニャゴロワも女子にゃんこだったから、スプレーへの対処は必要なかったが、壁やら柱やら、あらぬ所で爪を研ぐ、障子は穴だらけ、床は傷だらけ、1ヶ月でオウチはネコの住処と化してしまった。ネコと同化する覚悟がなければ、軽々に「ゲット」なんかしないほうがいい。
最接近
(モンサンミッシェルに、ついに大接近を果たす)

 それは相手が人間でも同じである。カッコいい憧れの先輩、好きでたまらない同級生、一生眺めていたいほど可愛い後輩、そういうのはあくまでそういう対象にしていたほうがよくて、誤って「ゲット」なんかした瞬間から、人生最大の重荷としてのしかかる。

 それでもそれを重荷と感じないなら、まあ共同生活でも始めてみたまえ。いやはや、日々絶え間なく続く口論やケンカは、客観視するに余りに幼稚、あまりに滑稽であって、当事者である自分の愚かさに心の底からゲンナリ、3ヶ月もしないうちに後悔が始まる。

 山も同じこと。遠くからその勇姿を眺めるに越したことはないので、不用意に接近しすぎると、返って山の美しさを堪能できない。富士山は、御坂峠か駿河湾からが一番美しい。

 せっかくの美しい富士も、ふと5合目から登山道なんかに闖入してみたまえ。醜い赤茶けた岩が延々とゴロゴロ転がって、汗マミレの登山者を嘲笑しているだけである。登山者の長蛇の列には、後悔と惨めさしか残っていない。

 その惨めさを振り切ろうと、仲間どうしご来光の美しさを語って励ましあうが、心に去来する思いは「これって負け惜しみじゃないの?」という疑念ばかり。疑いをさまざまにコネクリ回してゴマかした、哀れなオダンゴみたいなものである。
闖入
(ついに闖入を果たしたモンサンミシェル。この大混雑が待っていた)

 憧れの大学も、シューカツの第一志望も、みんな似たようなものである。小3から塾に通って強烈な憧れを居抱き、来る日も来る日も熱い涙を流しながら塾の大量の宿題をこなして、ついに合格した難関中学。しかし中2の夏休みも終われば、「こんな授業で大丈夫?」と、また塾に通い始めたりする。

 高校だって同じことで、あんなに真剣に受験勉強して合格した県下トップの高校だって、高1の夏にはもう「こんな授業じゃ東大なんか入れない」と、予備校の授業に活路を求める。憧れの学校に接近し闖入すれば、幻滅しか待っていないことが少なくない。

 その先には、「東大」があり「京大」「九大」「北大」があるんだろうけれども、そこもまたちっとも変わらない。接近まではいいとして、合格 ☞ 闖入の段になると、「なんだ、こんなところか」と吐き捨てる結果は目に見えている。

 諸君、まあ人生とはそのようなものであって、詳しくは森鴎外「青年」を読んでくれたまえ。ヨーロッパの美しい巨大寺院の尖塔も、実際にその塔を昇りはじめると、どこまでも続く暗闇、狭い螺旋状の石段、湿気と蒸し暑さと、後悔と幻滅、そういうものに苛まれるばかりである。

 そこでようやく本題だというのだから恐れ入るが、4月12日のワタクシが訪ねたモンサンミシェルもまさに同様であった。モンサンミシェルは遠きにありて思うもの、そして優しく歌うもの。その意味ではまさにフルサトと同じであって、接近も闖入もむしろ敬して遠ざけるべきである。
寺院
(憧れの寺院も、驚異的な長蛇の列が出来ていた)

 本日宿泊するホテルは、「ル・ルレ」。バルコニー付きの部屋を予約すれば、約1kmの距離からモンサンミシェルの勇姿をずっとボンヤリ眺めていられる。朝も昼も、夕暮れも深夜も早朝も、24時間ずっと「1kmの距離」を維持したまま、幻滅いっさいナシのモンサンミシェルがそこにある。

 ところが諸君、島に向かって海にかかる陸橋を歩き始めてみたまえ。そこにはシャトルバスと馬車で次々に押し寄せる人の波があるばかりだ。はしゃぐコドモ、いちゃつくカップル、何だか分からないが怒り心頭のオジサン、カラダも態度もデカいオバサマ集団。マトモな前進もままならない。

 それでも、海水に映った「逆さモンサンミシェル」に感激し、次第に大きくなってくる島本体の勇姿に心を沸き立たせ、接近は完了し、ついに闖入を果たす。今日1枚目の写真が接近完了の図。しかし写真2枚目「闖入」を見てみたまえ。直ちに雑踏との戦いが始まるのである。

 雑踏はやがて「スーパー雑踏」の域に達する。江戸末期の「おかげまいり」「ええじゃないか」の騒擾とは、こんなものではなかったか。気の弱い日本のツキノワグマどんは、あっという間に道の端にギューギュー押し付けられ、ニッチもサッチもいかないありさまだ。
名物
(モンサンミシェル名物のオムレツ。詳細は明日の記事で)

 それでもとにかく寺院内に入ろう、参詣というか参拝というか、この訪問の本来の目的だけは果たそうとするのであるが、寺院の入口にはとっくに長蛇の列ができ、「うーん、2時間待ちかいな」という状況。昼過ぎに駆けつけても、「遅きに失した」の感がある。

 そこで諸君、変わり身のマコトに素早い今井君は、参詣を明日に延期。「メシだ♡メシだ」と方針転換した。1泊するんだから、焦る必要はない。寺院は明日早朝でいいじゃないか。とりあえずモンサンミシェル名物のオムレツでも貪り、ワイン1本空っぽにして、ホテルに逃げ帰ろう。

 しかしその方針転換も、「ええじゃないか」クラスの大雑踏には太刀打ちできないのである。どの店も、開店するや否やあっという間に超満員。空いたテーブルなんかちょっとやそっとで発見できるものではない。

 ついに闖入したその店も、やっぱりウルトラ超満員だった。予備校の100人教室ぐらいのスペースに、テーブルが50ほど。そのほぼ全てがお客で埋まっている。

 やっと席について、ホッと一息も束の間、周囲に立ち込める苛立ちと怒りの緊迫した渦に気がつく。あんまり緊迫の度が強いので、「何だ」「何だ」「何が起こっているんだ」と、一瞬身構えるほどである。

 諸君、みんな怒り心頭なのである。注文した料理が全く来ないのだ。パパは怒り、ママはムクれ、娘は呆れ果て、息子は暴れだし、幼児も乳児も泣き出している。

 対応するお店の従業員はたった2人。異様なほど要領の悪いオバサマが料理を運び、愛想の悪いもう1人のオバサマが、焦りに目をまん丸くして注文をとっている。料理の来たテーブルはわずかしかないし、10分経過しても注文さえとってもらえずに苛立っているグループも10組近い。
ムール
(この日のランチはオムレツとムール。詳細は明日の記事で)

 10分経過、15分経過。店内の緊迫感はグングン強烈になる。ついにお隣のテーブルのオバサマが怒り心頭に発し「それなら、もう帰ります」と立ち上がった瞬間、やっと注文をきいてもらえた。

 今井君だってもちろん特別扱いなんかしてもらえないから、10分経過しても注文はまだ。それどころか存在さえ認識してもらっていない様子。何度か派手目にパフォーマンスしてみたが、やっぱりダメのようである。

 そこへ、ド派手な服装のチャイニーズおばさま2人組が入ってきて、一番奥のテーブルに大胆に分け入った。彼女たちもまた、お店の空気が苛立ちで煮えたぎっているのを、瞬間的に感知したようである。

 やっと食べ終わって帰ろうとしていた隣りの30歳代カップルに、チャイニーズおばさまの1人が尋ねた。「味はどうでした?」と言うのである。

 それに対するカップル男子の返答が、今もなおワタクシの脳裏にコビりついて離れない。たったヒトコト、まさに吐き捨てるように
「Terrible !!」
とおっしゃったのだ。

 そのヒトコトを合図に、ヒトビトは一斉に行動をとりはじめた。その先陣を切ったのが、誰あろう、このワタクシである。瞬間的に席を立つと、出口に向かって颯爽と歩みだした。ワタクシに続いたのが、チャイニーズおばさま2人組。さらに数組がバラバラと席を立った。

 こうして諸君、今日の写真4枚目と5枚目は、その後で今井君がありついた別の店のランチなのであるが、今日はさすがに長く書きすぎた。詳細はまた明日ということにしたい。

1E(Rc) Backhaus:BACH/ENGLISH SUITE・FRENCH SUITE
2E(Rc) Ewerhardt & Collegium Aureum:HÄNDEL/オルガン協奏曲
3E(Rc) チューリッヒ・リチェルカーレ:中世・ルネサンスの舞曲集
4E(Rc) Collegium Aureum:MOZART/EINE KLEINE NACHTMUSIK & SYMPHONY No.40
5E(Rc) Rubinstein:THE CHOPIN I LOVE
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