2016年04月29日(金)

Tue 160405 神童クンの神ダンス 地下の穴蔵の大家族(ドイツ・クリスマス紀行30)

テーマ:ブログ
 誰にでも「幼児時代の伝説」というものがあって、
「むかしは天才的だった」
「神童が生まれたかと思った」
「町じゅうの人気者だった」
と、年老いた両親やジーチャン&バーチャンが、お正月の夜なんかにウットリしながら語り出す。

 語られている本人としては、「また始まった」「よしてくれよ」「その話、もう500回も聞いたぜ」と、ウンザリする思いなのだが、まあ聞いてあげないわけにはいかない。

 2歳・3歳・4歳のころの記憶なんか、マコトに曖昧模糊としたものである。大部分は親バカな作り話か勘違いに過ぎないのだが、何しろこっちの記憶もほとんどないのだから、真っ向から否定することもできない。

「町のヒーローだった」「ヒロインだった」という神童時代の逸話は、よくよく聞いてみるとたいへん他愛のないものであって、それから20年も経過してから語られると、どんな厚かましい御仁でも悲鳴をあげずに聞いていることは困難である。

① 銭湯で洗面器の上に立って、アニソンを何曲も熱唱した
② 近所のオバサマたちの井戸端会議の最中に、ホーキをマイク代わりにアイドルのモノマネをやってみせた
③ 3歳で時計の読み方を覚え、病院の廊下で「今X時Y分だよ!!」と1分に1回ずつ絶叫してみせた(これは今井君の神童時代)
少年1
(ブレーメン・マルクト広場の神童君。オジサマ2人の演奏に合わせ、延々と神ダンスを繰り広げた 1)

 そういう状況を冷静に思い浮かべてみれば、「何でそれが神童なの?」「どうしてそれでヒロインになれるの?」と首を傾げざるを得ないが、町の人たちは意地が悪いから、幼児の他愛のないパフォーマンスを伝説に仕立て上げ、「あの子はタダモノじゃない」というウワサはツムジ風のように町を駆け巡る。

 銭湯にいくたびに「ヒロシ君、『巨人の星』歌ってよ」とか、ママの井戸端会議についていくと必ず「○○ちゃん、また『ウィンク』お願いね♡」とリクエストが始まる。本人も悪い気はしないから、2~3か月はヒロシ君ブームや○○ちゃんブームがボンボン燃え上がる。

 かく言う今井君は、幼い頃は内科病院の常連。しょっちゅう小児ぜんそくで呼吸困難に陥り、そのたびに内科の待合室で「いまX時Y分だよ!!」をやっていた。呼吸は困難でも、時計ぐらいは読めるじゃないか。

 するとオトナたちは盛んに「宏君、今は何時何分?」と質問してくれる。そりゃ嬉しいから、自分が呼吸も出来ない状況であるのを忘れて「いまX時Y分だよ!!」の頻度はますます上昇していった。
市庁舎
(ブレーメン市庁舎。「北ドイツで最も重要な建築の1つ」で、世界遺産に指定されている)

 万が一そのツムジ風にマスメディアが絡んでくると、「驚!! 天才そろばん少年」「凄!! 4歳の天才スケーター」みたいなことになって、テレビ界の記憶に残ったりする。それがシアワセかどうか、そのへんは誰にも分からない。

 そういうことを思いながら、ブレーメンのワタクシは神童のダンスを見守った。12月27日の彼が気に入ったのは、マルクト広場の片隅で演奏を繰り広げる中年のオジサマ2名。クリスマス系のスタンダードナンバーばかりだが、確かになかなか見事なパフォーマンスである。

 その2人のオジサマの前に、どこからかいきなり出現したのが、今日の写真のシンドー君である。空色のボーシ、グリーンのジャケット、黒いゴム長。雪国の男子としてはマコトにスタンダードなカッコで現れた。

 シンドー君がどこから降臨したのか、いつからそこに立ち尽くしていたのか、見当もつかない。ママもパパも見当たらないが、とにかく演奏する2人のオジサマをジッと見つめながら、激しいステップを踏み続けた。
少年2
(ブレーメン・マルクト広場の神童君。オジサマ2人の演奏に合わせ、延々と神ダンスを繰り広げた 2)

 見つめられすぎて、ギターのオジサマのほうはやがて少しずつ緊張しはじめた。木管オジサマは楽しそうに視線を受け止めているが、シンドー君は決して視線を外すことなく、ニコリともニヤリともケケケとも笑わずに、真剣な表情で神ダンスを続けるのである。

 マルクト広場のあちこちから、見物人もバラバラ集まりはじめた。「ママ」とおぼしき女性もその中に混じっている。ほとんど涙がこぼれんばかりの笑顔であるが、なかなか「私がママよ♡」とは名乗らない。マコトに自慢げな様子で、自らが産んで育てたシンドー神ダンスを見つめている。

 神ダンス、10分も続いただろうか。その間たじろがずに演奏を続けた木管オジサマの胆力は見事。突然すべてに興味を失ったシンドー君は、やがてプイと横を向いてママと手をつなぎ、クリスマスの町に消えていったのだった。

 それを潮に、オジサマ2人も場所を変えたようである。集まった見物人も三々五々立ち去った。しかし今井君は思うのだ。今の神ダンス、ママの心には深く深く刻みつけられたはずだ。

 シンドー君が17歳の高校生なっても、30歳をすぎて医師とか大学の教員になっても、ママは目を閉じて自慢げに語り続けるはずだ。息子がウンザリして「もうヤメろよ」「500回も聞いたよ」と吐き捨てても、ママのウットリぶりは変わらないのだ。
ラーツケラー
(1405年創業、600年続くラーツケラー。地下の穴蔵のような雰囲気がスンバラシイ)

「この子は2歳のクリスマスの頃、ダンスの天才だったのよ」
「30分もアドリブで踊り続けたのよ(ママの話の中の数字は、事実×3とか実際×5とかになりやすい)」
「演奏してたオジサンたちも、見物してたクマみたいな東洋人(今井君は人の記憶に残りやすい)も、ビックリして口が閉まらないぐらいだったわよ」

  そこにジーチャン&バーチャンや伯父サマや叔母さまが加わって大家族になれば、神童伝説はますます大袈裟になりどんどん定着して、もう取り返しがつかない。お正月やクリスマスに大家族が集まれば、甥っ子や姪っ子の憧れの対象になったりする。

 この日のランチにワタクシが選んだ「ラーツケラー」には、そういう大家族が4組も5組も訪れていた。市庁舎の建築が1405年に開始、地下の穴蔵のラーツケラーも、1405年創業。大家族の中に出現した神童やヒーロー&ヒロインの逸話が、600年にわたってこの薄暗い空間を満たしてきたことだろう。
スープ
(素朴なパンとスープ。これが一番印象に残った)

 1組で30人も40人もの大家族が、何組も次々と穴蔵に降りてくる。お店の人もテンテコ舞いであって、オジーチャン1人がコートを預けるだけで3分も4分もかかる。

 バーチャンをどこに座らせるか、ジーチャンはどの席がいいか、大家族のメンバーが甲論乙駁&侃々諤々、結論なんか来週の終わりまで(つまり来年まで)とても出そうに思われない。

 こういうスッタモンダの真っただ中で、今井君はよく耐えた。気の短いワタクシのことだ、普段なら、ちょっとメンドーな事態になるとすぐさま店を飛びだしてしまう。この日は「BECK’S BISTRO」という選択肢もあった。あんまりメンドーなら、BECK’Sのほうに店を変えればいい。

 それでも穴蔵のラーツケラーにとどまったのには、2つの理由があったと思う。
① 機転のきくオバサマウェイトレスのテキパキした対応が嬉しかった
② さっきのシンドー君のダンスのおかげで、大家族のヌクヌク暖かい談笑を聞いていたくなった
ま、そんなところである。

 出てきた料理のほうは、写真でご覧になる通り、マコトに地味なものである。素朴な温かいスープとパンの他、確かお肉料理もワッシリ&ワシワシ貪ったのであるが、何より記憶にしっかり残ったのは写真に示したパンとスープであった。

 ガイドブックによれば「このラーツケラーは自家ワイン農場を所有、600種以上のワインを所蔵」とのことであるが、うーん、この日のワタクシが望んだのは、素朴なスープとパンと、大家族の談笑の声だけなのであった。

1E(Cd) Savall:ALFONS V EL MAGNÀNIM/EL CANCIONERO DE MONTECASSINO 1/2
2E(Cd) Savall:ALFONS V EL MAGNÀNIM/EL CANCIONERO DE MONTECASSINO 2/2
3E(Cd) RUSSIAN MEDIEVAL CHANT
4E(Cd) Philip Cave:CONONATION OF THE FIRST ELIZABETH
5E(Cd) Rachel Podger:TELEMANN/12 FANTASIES FOR SOLO VIOLON
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