Wed 140910 ズンドコ船隊の跋扈がはじまる 今日もタマヨ朝食(おらんだ先生訪問記41) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 140910 ズンドコ船隊の跋扈がはじまる 今日もタマヨ朝食(おらんだ先生訪問記41)

 こうして諸君、ついに4月26日「オランダ国王の日」がやってきた。2013年、国王ウィレム・アレクサンダーが即位。キングの誕生日4月27日をキングズ・デイとして祝うわけであるが、今年のように27日が日曜日なら、1日前倒しして先にお祝いしちゃおうということになる。
 この100年ほど、オランダでは女王が続き、前々女王ユリアナの誕生日4月30日を「女王の日」としてお祝いしてきた。ベアトリクス女王が跡を継いだが、彼女の誕生日は1月31日。すると諸君、素晴らしいじゃないか、「厳冬期の1月では国民が楽しめないだろう」と考えたベアトリクスは、母ユリアナの誕生日4月30日をそのままクイーンズ・デイとして定着させてきたのである。
 ところが、2013年に即位したウィレム・アレクサンダーのお誕生日は4月27日。オバーサマのお誕生日とほとんど変わらない春うららの1日になったわけだから、クイーンズ・デイからキングズ・デイに引き継いで、大いに無礼講を楽しもうではないかというわけである。
 ユトレヒトでは大規模なフリーマーケットが開催される。デン・ハーグのお祭り騒ぎも有名。しかしやっぱり「ハメを外したお祭り騒ぎ」となれば、大都市アムステルダムが最もエキサイティング。今井君は、旅の終盤のクライマックスがこの日になるように、まるでネライを定めてやってきたみたいだ。
乾杯
(国王の日は、オレンジ軍団の乾杯で始まった)

 朝8時、目を覚ましてみると、お祭りには絶好のウルトラ快晴である。「今日1日、激しいことになるぞ」という予感は、すでにホテル下の運河がズンドコ隊の船に占拠されていることでハッキリしていた。
 「ズンドコ隊」とは、もちろんズンドコ船隊のことである。15人も乗れば満員のお船を運河に浮かべ、大音量の音楽で周囲の家々のガラス窓をビリビリさせながら、船の上ではもう完全に無礼講のパーティーが始まっていた。
 まだ午前8時だが、諸君、1年間待ちに待ったキングズ・デイなのに、日暮れまではもう残り10時間しかない。目いっぱい頑張って早起きをして、7時だろうが8時だろうが、何でもいいから早く徹底ズンドコしないと、あっという間に終わってしまう。
船隊1
(最初のズンドコ船隊)

 船の上はそれなりの年齢を重ねた中年男女が多いが、その早起きズンドコぶりには念の入った執念が感じられる。てるてるボーズをいくつも軒下につるして、「明日は晴れろー♨」「晴れろー♨」「晴れるんだぁーっ!!」と、町内会のオジサン&オバサン総出で祈祷でもしてきたかのような、そういう迫力が漲っている。
 一方、おそらく若い人々は昨日の前夜祭でハメを外し過ぎ、今ごろは二日酔いで唸っているころである。早起きはオジサマ連に任せて、「とりあえず昼過ぎまでネンネ」と決め込んだに違いない。
 最初、ホテル最上階から見かけたお船は2艘のみだった。「へえ、まあそういう人たちもいるんだな♡」という程度であったが、やがて同種のお船が際限もなく増えはじめた。アムステルダムの街を包み込む全ての運河が、ズンドコ船隊に占拠されていくのである。
 アムステルダムは、運河の街である。まるで肋骨みたいに7重にも8重にも街を包み込む運河の数は、優にヴェネツィアを凌ぐほど。イタリア人の観光客でさえ、運河の数に驚きの声を上げている。その運河の全てを、ズンドコ船隊が埋め尽していく。
運河
(アムステルダムは、肋骨状の運河で囲まれている。ダイアモンド社:地球の歩き方「オランダ ベルギー ルクセンブルグ」より)

 とりあえず今井君は1階のレストランに降りて、オランダでは恒例になったタマヨ・ブレックファスト(昨日の記事参照)で腹ごしらえをした。今日もまた、目玉2つの目玉焼き。ゆでタマヨ3個。お腹に詰め込めるだけのハム&チーズ。これを一気に平らげる。
 何しろオークラだから、朝食ビュッフェにも「おかゆ」や「おつけもの」が並んでいるが、少なくとも今朝はそんなんじゃダメだ。何しろ「国王の日」の激しい無礼講の渦に飛び込んでいこうとしているのである。
 オランダの人々は、鋭角的に見上げなければ顔が見えないほどの長身ぞろい。その無礼講に参加するなら、お腹の中も肉にタマゴにベーコンにハム、そういうタンパク質でパンパンにしていかないと、いかに温和なオランダの人々であろうと、一発で弾き飛ばされてしまう。
 10時、ズンドコ船隊の轟音がますます激しさを増してきた。朝食を食べ過ぎてちょっとお部屋でウダウダしていたが、こりゃさすがにそろそろ出かけなくちゃならない。普段なら朝食後1時間ほどの「スヤーッ♡」を楽しむところだが、ズンドコ船隊がこれほどうるさいんじゃ、「スヤーッ♡」の楽しみも何もありえない。
船隊2
(お船の上は無礼講だ)

 実は、2~3日前から靴の底に不気味な違和感を感じている。1歩進むたびに、靴底が「ペリ」とか「ベリ」とか「ビロ」とか、その種のウメキ声をあげ、明らかに「剥げてきている」気配が。「靴底君、いつまでもつかな」という不安感をかかえて部屋を出たが、どうせ無礼講、靴底ぐらいベロンと剥げたって、今日なら構うこともないだろう。
 先回りして言っておけば、実はこの翌日、靴底君は恐るべき激しさで「ベロン!!」と1枚まるまる一気に剥げ落ちるのであるが、その顛末はまたゆっくり、写真とともにお見せすることにする。
 そんなことより、まずチャンと国王の日の乱痴気騒ぎを記録しておかなきゃいけない。諸君、「国民が思うぞんぶん楽しめるように」というオランダ王のフトコロの深さはどうだ。「思うぞんぶん」のレベルが、「さすがオランダ先生」なのであって、このレベルの乱痴気騒ぎは、今井君の長い人生でもあまり経験がない。
 「オレンジ一色に染まります」とか、いくら前宣伝が激しくても、じゃあホントにオレンジ一色かと言えば、普通なら甚だ心もとないのである。しかし諸君、アムステルダムはウソでも何でもなく、コワいほどホントにオレンジ一色に染め上げられていた。
船隊3
(お昼になって、ズンドコ船隊の数が急激に増えてきた)

 ズンドコ船隊に埋め尽くされた運河ばかりではない。目抜き通りから裏通りに至るまで、人々は例外なく工夫を凝らしたオレンジ色をまとい、店も露店もビルの壁も、一切の疑問の余地なく純粋にオレンジ一色。オレンジじゃないのは立ち並んだ簡易トイレぐらいのものである。
 昼前、まだ街は平穏。危険を感じるような暴力的♨無礼講を心配していたが、「ご用心」とか「近づかないほうがいいです」みたいな状況には至っていない。「本番は、午後からだ」ということなのかもしれない。
 ガイドブックに「危険地帯」と書かれているダム広場東側や中央駅前広場あたりも、確かに怪しからぬ行為に及んでいる人の姿もチラホラ見かけるが、まあこれも、今日だけは無礼講の一部として許容してあげていいんじゃないか。
 少なくとも、国王陛下が「いいじゃないか」「許容してあげたまえ」とヤンゴトナキ笑顔で許して下さっているものを、コムズカシイ顔で拒絶☞否定するのは、要するに野暮というものである。
 12時すぎ、激しい雑踏の中央駅にたどり着いた今井君は、「そろそろホントのホントの本番になってきたな」と実感。狂乱の無礼講が迫るのを予感しながら、アムステルダムの街をゆっくりと南下しはじめた。

1E(Cd) Akiko Suwanai:DVOŘÁK VIOLIN CONCERTO & SARASATE
2E(Cd) Kiri Te Kanawa, Solti & London:MOZART/LE NOZZE DI FIGARO 3/3
3E(Cd) Solti & Vienna:WAGNER/DIE WALKÜRE 1/4
6D(Pl) キャラメルボックス:無伴奏ソナタ:池袋サンシャイン劇場
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