Sun 130203 日赤医療センターでの1日 運河の町のサトイモどん(ベルギー冬物語27) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 130203 日赤医療センターでの1日 運河の町のサトイモどん(ベルギー冬物語27)

 ナデシコはナデシコで動物病院に入院させなければならないし(昨日の記事参照)、それとは全く別件で、広尾の日本赤十字病院医療センターに出かけて、丸一日過ごさなければならない。「病院関係で忙しい」というのは、春だというのに憂鬱な話である。
 日赤医療センターは相変わらずの大混雑である。受付も会計もマコトに整然とテキパキ仕事を進めてくれるので、患者も付き添いの人間も、ほとんどストレスを感じることがない。キレイで清潔で、働く人たちの笑顔もいいし、立地からしても文句の余地のない素晴らしい病院だ。
ツインチョコ
(ブリュージュで発見、ニャゴとナデシコのツイン・チョコ)

 1階には美味しい大食堂があって、なかなかの繁盛ぶりである。パスタやカレーやサンドイッチ以外に、定食類も揃っている。ステーキ定食、ヒレカツ定食、お刺身定食。ステーキやヒレカツは丼物にもしてくれる。有名大学の学食なみの充実ぶりだ。
 ま、あえて文句を言えば「これじゃ分量が多すぎるんじゃないか?」である。昨年11月から3ヶ月、付き添いとして病院を訪れた今井君は、ヒレカツ重、カツカレー、ステーキ定食の順番に試してみたが、3回とも「平らげるのに必死」というアリサマだった。
クマチョコ
(同じ店で、クマさんチョコも発見)

 デカイ身体の健康なサトイモくん、アルゼンチンでは1週間連続して500gのヒレステーキをペロリと平らげていた里之丞が、病院の食堂のメシに悲鳴を上げるのだから、この量はチョイとミスマッチなんじゃないか。ウーン、どう見ても、炭水化物が多すぎる。
 入院している患者さんをはじめ、付き添いの人々ももちろん高齢の方が多い。「お昼は、お茶碗1ぜん食べきるのがやっと」な感じのオバーチャンやオジーチャンが、圧倒的に多数を占める。そういうテーブルに、大っきな丼から溢れそうなゴハンや、「これでもか」と詰め込まれたヒレカツ重が運ばれていく。
馬拡大図
(ブリュージュで、巨大なウマさんに遭遇)

 お年寄りの多くは「もったいない」感覚が研ぎすまされている。「ゴハンを残すなんて無礼きわまりない」と叱られて育った世代である。眺めていると、相当ムリしてゴハンを詰め込み、それでも食べきれなくて、申し訳なさそうに誰にともなくペコペコお辞儀していらっしゃる。
 そりゃアナタ、お蕎麦にしとけばよかったのだ。鍋焼きうどんだってあるし、ナポリタンやミックスサンドみたいな喫茶店メニューも揃っている。でも、あんなに美味しそうに定食の見本が飾られ、「女性にも人気!! おいしいヒレカツ重!!」「スタミナつけましょう!!」「お刺身がおいしい季節です!!」と、まさにビックリマーク洪水で攻め立てられれば、やっぱり人間は弱いものである。
馬
(上のウマは、2頭のウマがゲーする噴水の拡大図でした)

 ましてや、可愛いマゴを連れているヒトも多い。マゴとしては、アイスクリームやコーラフロートにしか興味はないのだが、マゴを連れたジーチャンというものは、マゴ以上にコドモっぽくなるものだ。
 思わず若い頃の食欲を取り戻し、「最近あんまりモリモリ食べてないな♡」「食っちゃおうかな♡」と、イタズラな気持ちがムラムラよみがえる。そして、その15分後には「ヤメときゃよかった」という重い後悔が襲ってくることになる。
 だって諸君、ホントに今井君でさえ食べきれないほどなのだ。医学部を目指す諸君、素晴らしい病院を見学に行って、進学の意志をますますシッカリに固めるついでに、日赤医療センター1階の食堂で是非「ヒレカツ重」も体験してみたまえ。おそらくサトイモ男爵と同じ感想をいだくはずだ。
旅サラダ
(ブリュージュにも、イヤな感じの貼り紙が)

 入院中のナデシコが心配で心配でならないが、電話で問い合わせてみると、「お水は飲めるようになりました」「食欲は旺盛ではありませんが、ゴハンもホンの少しずつ、何度か口にしてみているようです」とのことである。
 もともと食べることにあまり関心のなかったネコだから、慣れない環境にも関わらず少しでもゴハンを食べてみたというなら、それは嬉しい傾向である。腎不全が急性で、入院中の何度かの点滴をキッカケに、一気に快方に向かってくれることを期待するしかない。
運河
(ブリュージュ 凍りついた運河)

 さて、ナデシコが心配だからといって、大寒波のブリュージュに出かけてフラフラしているサトイモ君を、そのまま雪の中に放置しておくわけにはいかない。ムールをつまみながらワイン1本空けた直後だ。放置すると、どうせまた道に迷って、どこに行っちゃうか分かったものではない。
 もっとも、ブリュージュの街は小さい。運河に丸く囲まれた街の形からしても、この街は迷いにくいのである。直進すれば、いずれは運河に行き当たるし、運河に行き当たればそれだけで自分の位置が推測できる。街なかで地図を開く必要もほとんどない。
街
(凍りついた町)

 運河をさらに外側から取り巻くように、円環状の道路も走っている。円環の要所要所には、中世から続く街の城門が残っていて、「鍛冶屋の門」とか「ロバの門」とか「ゲントの門」とか、それぞれ特徴的な名前が付けられている。こういう構造だから、たとえクマでも道に迷って途方に暮れることはまずあり得ない。
鐘楼1
(凍りついた鐘楼)

 今回は諸事情を考慮して訪問を避けたが、オランダ・アムステルダムの街の構造は、ブリュージュをグッと複雑化したもののようで、初夏とか秋の初めにでも散策すれば大いに楽しめそうである。
 地図を眺めてみるに、扇のカナメにアムステルダム中央駅。駅を中心に等間隔で半円形を描いたように、5つの運河が並んでいる。駅にコンパスの針をあてて、半径1cm→2cm→3cm→4cm→5cmとだんだん大きくしながら半円を書くのであるから、小学4年生が算数の時間にコッソリやってみるイタズラみたいなものだ。
 コンパスの針をクルリと回されたアムステルダム中央駅の向こうは、北海につづく冷たい海が広がる。先々週、福永武彦と北原白秋と、「廃市」と「おもひで」とローデンバック「死都ブリュージュ」について書いたけれども、今井君はもともとこういう街が大好きなのだ。数年後、悪名高いドラッグの蔓延や「飾り窓地帯」などの話が改善したら、いそいそアムステルダムを訪れることになりそうだ。
鐘楼2
(暖かいカフェから鐘楼を眺める)

 考えてみると、こういう好みもまたコドモのころの影響なのかもしれない。諸君、今井君が生まれてから18年過ごした秋田市土崎港もまた、実は運河の街なのである。ヒマな人は、今すぐグーグルマップで調べてみたまえ。「秋田港」から南東に向かう細い水路には「秋田運河」の文字があるはずだ。
 秋田平野を南東から北西に縦断する雄物川は、1938年(昭和13年)に「雄物川放水路」が完成するまで、わが土崎港町を流れていた。「秋田運河」とは、元・雄物川のことである。しかしこの河が運んでくる大量の土砂が秋田港を浅く埋めてしまう。
店内風景
(閑散とした店内だが、暖炉の炎が暖かい)

 江戸時代には、河村瑞軒による東回り航路と西回り航路が交わる重要な海港。米と石油と、銀と銅と木材と、江戸時代経済ではマコトに重要な財の数々が、この港から運ばれた。そんな港が土砂で埋まってしまっては一大事である。
 そこで、「放水路」の計画が生まれる。河の西側の砂丘地帯を掘削し、本流の水を西に放水してしまえば、港に土砂は流入しない。マコトに乱暴で壮大な計画であるが、もう80年も昔の最後の爆破の様子が、映像として今も見られるようである。
グリューワイン
(グリューワインですっかり暖まった)

 というわけで、クマ蔵がコグマだったころの秋田市土崎は、すっかり運河の町になっていた。モトの河は細い水路となり、水は澱んで流れず、海水と河水が混じりあって、貝殻が密集した岸壁に、いつ出航するのか分からない静かな舟がたくさん停泊していた。
 いまはすっかり凍りついたブリュージュも、春から夏にかけてはきっとあの懐かしい雰囲気に溢れているのである。ブリュージュ、それからおそらくアムステルダム、出来ればいつか夏の始めに、もう一度ゆっくり訪れてみたい。

1E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 3/10
2E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 4/10
3E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 5/10
4E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 6/10
5E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 7/10
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