Sat 120303 予行とフェイクの区別が大切 ホテルリッツ(サンティアゴ巡礼予行記2) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 120303 予行とフェイクの区別が大切 ホテルリッツ(サンティアゴ巡礼予行記2)

 ホントのサンティアゴ巡礼なら、移動も宿泊もすべからく清貧であるべきであって、清貧であればあるほど、チャンとした巡礼として神にもヒトにも認めてもらえるのである。
 しかし今回の今井君は、繰り返すようだが「巡礼の練習」であり、「巡礼の予行演習中」であって、あんまり清貧にしすぎるのも考えものである。ホントじゃないときは「ホントじゃない」と、外見だけでハッキリ分かるように気をつけるのが礼儀である。
 ホントじゃないクセに、いかにもホントらしく振舞えば、その外見でダマされるヒトもおおぜい出るだろう。「ダマされる方が悪い」と断言するほどの厚かましさがなければ、外見をホンモノと装ったフェイク扱いされることになりかねない。おそろしや、おそろしやである。
 万が一にもヒトの目を欺くことのないように、巡礼見習いの今井君は「予行演習中」と鉢巻か腕章かタスキに染め抜き、「フェイクじゃないよ、予行だよ」「not フェイク but 練習」のシュプレヒコールでも叫びながら練り歩かなければならないのかもしれない。
リッツ
(宿泊したホテルリッツ・マドリード。プラド美術館に隣接。写真はプラド側から)

 そこで鉢巻と腕章とシュプレヒコールの代わりに、クマ蔵どんはちょっと贅沢なホテルに泊まって、「これはあくまで予行」「サンティアゴ巡礼と言っても本式じゃなくて、イベリア半島24都市をクマなく回る4つの旅の締めくくり」というスタンスを、他人にも自分にもアピールすることにした。
 「ちょっと贅沢」とはどのぐらいのホテルかというに、諸君、驚くなかれ、「ホテルリッツ・マドリード」である。全員、起立!! 畏れ多くも、ホテルリッツであるぞ。ええい、頭が高い。ひかえおろう。ロンドンのホテルリッツなんか、朝食でさえドレスコードがあって、男子はジャケットにネクタイがなければ朝飯にもありつけない、そういうホテルだ。ホントにホントに「ひかえおろう」でござる。
エントランス
(ホテルリッツ、豪華クリスマスツリーの飾られたエントランス)

 今井君はあんまりたくさんヨーロッパを旅行しているので、ホテルグループのポイントやらマイルやら、いろんな付録サービスがタップリ蓄積して、驚くほど安く宿泊が出来るようになってしまったが、これでも最初の頃は、裏町の中級ホテルをオッカナビックリ泊まり歩いていた。
 エレベーターが小さすぎてスーツケースが入らなかったり(マルセイユ)、バスタブなしのシャワーだけは当たり前としても、シャワーブースのドアが開けるたびに激しく外れちゃったり(ボローニャ)、リネン類の洗剤がおそらく酢酸タップリのせいで、異様に酸っぱいニオイが部屋中に毎晩充満したり(ボローニャ)、中級ホテルというのは、なかなかたいへんである。
 シャワーヘッドの留め金に何度も思い切り頭をぶつけたり(パリ・モンパルナス)、うんにゃ、その留め金自体が壁からスッポリ抜けちゃったり(ミラノ)、どうしてもお湯がヌルくて赤茶色く濁っていたり(ストレーザ)、たくさんの恐ろしい目に遭った。今では、みんなウソのようである。
 もちろんああいうのも抱腹絶倒の記憶が残っていいものだが、どうやら一番コワいのは「4つ星」である。3つ星なら最初から当たり前のことしか期待しないから失望もないが、4つ星ということになると、ホンのちょっと「スゴくいいホテルかも」と期待をいだいてしまう。うーん、そしてその期待がかなえられることは、失望と比較して余りにも頻度が低いのだ。
2階への階段
(エントランスから2階に向かう階段も豪華)

 そういうオッカナビックリで抱腹絶倒な時代を生き抜いて、とうとう今井クマ蔵は平気で「ホテルリッツ」にチェックインするほどになった。それも「働いてお金持ちになったから」などというマジメな話ではない。
 労働ということになれば、実はちっとも働いていないので、隣近所にも申し訳ないほどである。「何で私が、豪華ホテルに?」の答えは、もちろん「だってポイントとマイルが貯まっちゃって、旅行者としてのステイタスが急上昇したから」以外に考えられる要素はない。
 ステイタスの高さは、まず成田空港と、ルフトハンザに乗り継ぐミュンヘン空港のスターアライアンス・ラウンジで痛感する。周囲は、会社の出張費でビジネスクラスに乗っている高級ビジネスマンばっか。今井君みたいに、滅多に仕事に出かけない怠け者のクマさんなんか、1人も見かけない。
ぐるぐる螺旋階段
(階段をグルグル回りながら降りていくこともできる)

 ホテルに着くと、チェックインカウンターですでに扱いが違う。「フロントに立ったまま」という当たり前なチェックインじゃなくて、豪華デスクに招かれソファにふんぞり返ってのチェックインのほうが普通である。「カフェへどうぞ。お好きなものを注文して、ごゆっくりお待ちください。アルコールもOKです」と頭を下げられ、やがてフロントクラークがカギを持って現れる、なんてのもある。
 「だってボクはその辺のツキノワグマに過ぎないのに、こんなに大切にしてもらっていいんですか?」と恐縮していると、スーパー厚遇はチェックイン後も続く。まず「部屋をアップグレードさせていただきました」「赤ワインを1本、サービスさせていただきます」「フルーツ盛り合わせを1皿、プレゼントさせていただきます」と続く。
 こうまで異様に「させていただく」が連続すると、VIPグマのヒタイに冷たい汗が滲む気がする。しかも相手が畏れ多くも今を時めくホテルリッツだったりすれば、隣近所どころか、クラスメートにも恩師の先生がたにも、行きつけの寿司屋や天ぷら屋の職人にも、遠いマドリードの空から「どうもスミマセン」と叫びたいほどである。
お部屋入口
(今井君のお部屋は右の405号室。ドアが2枚あるお隣の406号室は、超豪華スイートルームである。「なぜ超豪華と知っているか」は、この旅行記20回目ぐらいで明かされる)

 折から12月14日のマドリードは、クリスマスムード一色。チェックインは23時を過ぎていたが、「やっとパーティーが終わった」という花やかで気だるい気分が、エントランスと1階フロアを満たしている。
 確かに南欧経済危機の真っただ中。同じリッツでもロンドンに比較すると華麗さも豪華さも数歩ヒケをとるけれども、あんまり豪華だと萎縮してしまうツキノワさんにとっては、このぐらいがちょうど良さそうだ。
 残念だったのは「アップグレードさせていただきました」の一言が聴けなかったこと。この某ホテルグループに宿泊すると、このところ確実にアップグレードしてもらえて、たったそれだけのことで2週間まるまるホクホク気分でいられたのだ。
 さすがにクリスマスシーズン、日本のクマなんかが鼻をピクピク&お耳をヒラヒラさせて、無言でおねだりのプレッシャーをかけたぐらいでは、相手はビクともしないようである。まあ、今回のマドリード滞在はたった3日に過ぎないから、もちろんこれはこれで全く問題ナシである。
 
1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES⑥
2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES①
3E(Cd) CHOPIN FAVORITE PIANO PIECES
4E(Cd) Brendel:BACH/ITALIENISCHES KONZERT
5E(Cd) Casals:BACH/6 SUITEN FÜR VIOLONCELLO 1/2
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