Fri 100507 ヨーロッパの列車で「車両間の移動が出来る」と考えてはならない | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 100507 ヨーロッパの列車で「車両間の移動が出来る」と考えてはならない

 12月17日のウィーン西駅では、昨日書いたような「車両がない」という恐るべき不可抗力は(すみません、昨日の続きです)何一つ発生しなかった。よく晴れた氷点下5~6度の朝、おそらくアルプスから吹き流されてくる風花の中、ブダペストを通ってブルガリアのソフィアまで駆け抜けるRJ(レイルジェット)は、ウィーン西駅のプラットホームにチャンと時間通りに入ってきたのである。
 おお、ヨーロッパの鉄道で「時間通り」などというのは、(イギリスを除けば)まさに奇跡に近い。1分か2分遅れた程度で「お急ぎのところ誠に申し訳ございません」とか、遅れてもいないのに「お待たせいたしました」とか、そういう低姿勢の日本の鉄道とはワケが違う。行き止まりタイプの中央駅だから、ホームに入ってくる姿はどうしても後ろ向き。先頭の機関車から長く伸びたしっぽを、あくまでも恥ずかしそうにおずおずと駅の中に差し込んでくる姿は、なかなか可愛らしいものである。
 ウワバミ君のチケットに印字された文字を確かめると、車両は257号車である。この日は金曜日。帰省する大学生などで金曜日の長距離列車は混雑するから、用心して2日も前にチケット売り場に並び、しかももっと用心して1等車を奮発した。これまで何度もヨーロッパの電車で苦い思いを繰り返したウワバミ君だけに、用心も2重3重に念がいっている。
フュッセン行
(真冬のミュンヘン駅に入線したフュッセン行。氷とツララに覆われた姿が印象的である。2005年2月。本文とはほとんど関係ありません)

 今井君がこうやって指定された通りの車両に乗り込もうと夢中になるのは、日本の鉄道に慣れたヒトの目から見たら異様に見えるかもしれない。「乗ってから、電車の中で移動すればいいじゃん」と考えるのが、日本なら普通である。新幹線なら、自由席のキップでとりあえず乗って、それから空席を求めて16両もの長い列車の中を右往左往しても、大した苦労はしない。
 ところがヨーロッパではそういう行動はなかなかうまくいかないどころか、場合によっては楽しいはずの旅行が台無しになったりする。まず、「車両間の移動」などということがスムーズにいくことはまず考えられない。
 車両と車両の間のドアが故障していることも少なくない。たいていは大きな赤いボタンがドアの横についていて、これを押すと「ブワッシュガワワーッ!!!」という物凄い音がしてドアが開くのだが、その音には心から震え上がる。「げげっ、連結器をハズしちゃったかな?」と冷や汗をかくような大きな音なのである。諸君、考えてもみたまえ。間違って連結器をハズしちゃって、列車の前後がどんどん離れていくようなシュールな状況を想像したら、コワくてコワくて、滅多なことで赤いボタンを押すことなんかできない。
 まあ、そんなシュールな恐怖を口にしなくても、もしその赤いボタンが作動しなければ、その段階で車両間移動の可能性は断ち切られる。そして、作動しないことは少なくないのである。作動しないから直してくれるとか、「何とかしてもらえる」とか、その可能性はほぼ0%。昨日書いた「ノンチェ」と同じ対応しか考えられない。「ありません」が「こわれています」「動きません」「向こう側にはいけません」に変わるだけのことで、やっぱり肩をすくめられ、苦笑いされて終わりである。
ドイツの駅
(真冬のドイツ、ドレスデン付近の駅。2005年2月。本文とはほとんど関係ありません)

 さらに、ただでさえ狭い通路に、そこいら中に巨大なスーツケースが放置されている。通路には延々とケータイで夢中で話し続ける巨大な体躯の人間たちが立ちふさがっている。スーツケースとケータイ人間は一般に一体になっていて、車両間移動のためにどいてもらうには、ちょっとやそっとの「Excuse me!!」で何とかなるなどと考えないほうがいい。何とかどいてもらえても、怪訝な視線、激しい舌打ち、無視、その他ムカつく要素がいっぱいである。
 イタリアなら、自分でも驚くほどデカイ声で「スクージ」と怒鳴る。それでやっとどいてもらえるが、それは「スクージ」というイタリア語が通じたからではなく、「デカイ声が聞こえた」ことの結果に過ぎない。別に「スクージ」ではなくても「すみません!!!」でも「どいてくんないかな!!!!」でもいいし、デカイ声でさえあれば「うっふーん!!」でも「怒!!」でも「えーい、この紋所が目に入らぬかあ!?」でも「頭がたかーい」「ひかえおろう!!」でも結果は同じである。うーん、何だか面白くない。
ライプツィヒ駅
(冷たい雨の降るライプツィヒ駅。2005年2月。本文とはほとんど関係ありません)

 東北地方の新幹線に乗ると、「途中に運転台がありますので、車両間の移動はできません」という放送が入ることがある。八戸行き「はやて」と秋田行き「こまち」の間とか、盛岡行き「やまびこ」と山形行き「つばさ」とか、そういうケースである。ヨーロッパでも最近は機関車が客車を引っぱるタイプが減って、長距離の豪華列車は新幹線タイプが増えた。それにつれて、東北の新幹線と同じような「車両間移動は出来ません」というケースが増えてきた。車両間移動派にとって、ますます事態は不利になりつつある。
 以上、今井君はヨーロッパの列車に乗る時は、「最初から車両間の移動は可能とは思わない」という前提で行動している(残念ながら、明日に続きます)。うーん、ついでだが、もうすぐ開通の青森行きの愛称に「はやぶさ」が選ばれて「はつかり」ではなかったのは残念でならない。どうしても「はやぶさ」は九州に向かってほしいので、北に向かうのは「はつかり」であるべきだと感じる。「はやぶさ」に乗って青森に向かうなどというのは、我々の世代にとっては、阿蘇山が東北に移動したり、十和田湖が九州に移動したり、それと同じぐらいの違和感があるのだが、まあそれは今の話と無関係である。

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