不妊治療関連の論文は毎月多数発表されていて、時間の許す範囲で論文の要約に目を通すようにしています。
その論文の中の一つで体外受精後の双胎(ふたご)についての発表がありましたので、少し深堀してみたいと思います。
※注)妊娠成立後の内容になりますので、このような記載の文章にふれることをご希望されない方はご注意ください。
今回の論文のタイトルは
「体外受精における単一胚移植と2個胚移植後2絨毛2羊膜双胎の臨床的転帰について」(Clinical outcomes of dichorionic diamniotic twin pregnancies following single versus double embryo transfer in human medically assisted reproduction)1)
になります。
まず双胎について整理してみます。
双胎は1つの受精卵から発生した一卵性双胎と、2つの受精卵からの二卵性双胎に分類されます。さらに一卵性双胎は胎児を包む羊膜や胎盤の数によって、二絨毛膜二羊膜、一絨毛膜二羊膜、一絨毛膜一羊膜と3つに分類されます。(下図)
図にも示されていますが、胎児のもととなる細胞が2つに分裂する時期によってこの3つのパターンいずれの妊娠となるかが決まります。ちなみに二卵性双胎はすべて二絨毛膜二羊膜性双胎になります。
つまり1個の受精卵からも双胎となる可能性があるため、体外受精でも1個また2個胚移植いずれの場合でも双胎妊娠が成立する可能性があります。
今回の論文は一卵性(1個移植)および二卵性(2個移植)での二絨毛膜二羊膜性双胎が、妊娠成立後の転帰がどのように差があるかを調べた論文になります。
【研究内容】2014年から2024年における新鮮胚移植4658症例および 凍結融解胚移植15872周期における双胎206症例を対象とした。この双胎の中の二絨毛膜二羊膜性双胎について単一胚移植群(1個移植)と2個胚移植群について妊娠転帰を比較した。(下表)
【結果】
2個胚移植群は単一胚移植に比して
・2児とも胎児心拍を認める率(63.5% vs 25.5%)
・双胎出生率(53.1% vs 17.6%)
が高く、
・流産率(17.7% vs49.0%)
は低かった。
・新生児予後、在胎週数、出生体重、奇形率には差がなかった。(下表)
【結論】
体外受精における二絨毛膜二羊膜性双胎は、単一胚移植と2個移植で妊娠初期の転帰が大きく異なる。単一胚移植は多胎予防として最適な方法だが、今後は移植後に胚分割を起こしやすい胚の特徴を明らかにし、一卵性双胎を減少させる方法を確立する必要がある。
【追記】
今回の論文では、単一胚移植での二絨毛膜二羊膜性双胎は流産率が高く、出生率が低いなど妊娠予後が悪いと報告しています。
何故このような結果となったかについて、論文では 胚分割そのものが「胚の不安定性」を起こすのではないかと推察しています。すなわち「1個移植で双胎となる場合に、早い段階で胎児のもととなる細胞(内細胞塊)が分割するが、この時期は細胞が不安定なため胎児のもととなる細胞と卵黄嚢などになる部分の細胞分離の不均衡を起こし、結果着床が不安定になる可能性がある。」としています。
つまり正常な胚が2個に増えたというより、本来1個体であるはずの細胞が無理に2個体に分離されるため細胞のバランス異常が起こるのではないかとしています。
また体外受精で1卵性双胎が起こる理由として、
・胚盤胞培養(長期培養)環境が内細胞塊を分離し易くする。
・アシステッドハッチングによる透明帯の変化が内細胞塊の異常分裂を促進する。
などを挙げています。
また上記の結果を分析すると、2児とも胎児心拍を認める率は単一胚移植で有意に低い(63.5% vs 25.5%)ですが、胎児心拍を認めた場合には13例中9例(69.2%)が2児とも出産しており、単一胚移植では初期の流産が多いものの、妊娠中期以降は予後が悪くないとも言えます。
☆彡まとめ☆彡
・1個または2個胚移植での二絨毛膜二羊膜性双胎の妊娠成立後の転帰に関する論文
・1個移植は胎児心拍陽性率、双胎出生率が低く、流産率が高かった
・この理由として胚分割そのものが「胚の不安定性」を起こしている可能性がある
・妊娠中期以後は1個移植でも妊娠予後は悪くない
・移植後に胚分割を起こしやすい胚の特徴を明らかにし、一卵性双胎を減少させる方法を確立する必要がある。
となります。
今後も定期的に論文にふれ、最新のデータをブログで皆さまに報告していきたいと思います。
文献】
1)H Hattori et al. Clinical outcomes of dichorionic diamniotic twin pregnancies following single versus double embryo transfer in human medically assisted reproduction Open Access Human Reproduction, Volume 41, Issue 5, May 2026, Pages 763–771,

