包んじゃえ! | パリでメディカルアロマテラピー Île des fleurs Paris イル・デ・フルール・パリ
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パリでメディカルアロマテラピー Île des fleurs Paris イル・デ・フルール・パリ

パリ在住のTomomiが、フランスの本格メディカルアロマテラピーやオーガニック情報、日常生活をお届けします。

こんにちは。アロマトローグのTomomiです。

 

ポンピドー・センターでやっている企画展に

家族で行ってまいりました!

先日は、国立近代美術館(←常設展)だけだったので

企画展は家族で行こうと思っていたのでした。

 

この企画展は、おそらく数年前から準備していたものの

Covid-19のせいで、期間が大幅に狂った『クリスト展』。

ブルガリア生まれのクリストの回顧展だったのですが

今年の5月31日に亡くなってしまったのです。

もう84歳のお年だったので、もし存命でも

きっとヴェルニサージュ(オープニング)には

来られなかったかもしれない。

Covid-19後のポンピドーの再開は7月6日だったと思うので

本当にすごいタイミングの展覧会でした。

 

クリストは、奥様のジャンヌ=クロード(10年前に他界)と二人で

生涯一緒にアーティスト活動をしていた人です。

作品のコンセプトは「梱包」。

何でもかんでも包むんですよ。ほんと、何でもかんでも。

 

回顧展は、初期の絵画を包んだり

乳母車を包んだりしたものから展示してあり

娘にもまず解説。

「だから?」っていう子供らしい素直な反応でした(笑)。

私はその後の作品も知っているので、初期はこんなものを包んでたんだーと

感慨深かったのですが。

キャプションを見ても、もはや何を包んでいるかは書いていない。

というか、それはただの支持体であって

外側の紙や紐が「作品」なんですね。

 

一通り「いろいろ包みましたね」という展示が終わると

約1時間に及ぶ映像コーナーがありました。

全然人がいないじゃん!と思ってたのですが、みんなこれに釘付けでした。

娘も大興奮でしたよ!

 

1985年、彼はパリのポン・ヌフ(セーヌ川にかかる最古の橋)を包んだのです。

市長と9年も交渉して、やっと実現したプロジェクトです。

私も、その写真やプロジェクトのドローイングは見て知ってはいたのですが

ドキュメンタリー映像を見たのは初めて。

パリ市長は今は亡きジャック・シラク元大統領で(若い!)

市庁舎で市長に交渉中なのに、ジャンヌ=クロード(奥さん)タバコ吸ってるし!

時代ですよねー(笑)。

最初は「高すぎる」「アートは応援したいけど、ゴニョゴニョ」と言っていた

シラク市長も、最後にはGoサインを出します。9年かかったけど。

 

彼らは、ドイツの国会議事堂や、島などいろいろなものを梱包していますが

このプロジェクトも、負けず劣らずかなり大掛かり。

4万m2の布、13000mの長さのロープ、12トンのチェーンで

ポンヌフを橋ごとまるまる包んだのです。

ポンヌフでは120万フラン(2400万円くらいかな?)かかったそうですよ。

橋の上から、橋の下から、念入りに準備された工程を

ひとつずつこなすスタッフもかなりの数。

橋の布のひだを美しく調整するために

橋にしがみついてドレープを直しているスタッフもいました。

たった2週間だけだったそうですが、市長や文化大臣を巻き込み

パリ市民の間で賛否両論の嵐を起こした一大イベントでした。

その貴重な記録映像に、私たち観客は息を飲んで見入ってしまいました。

 

橋を往来するパリジャンたちの間で

熱い論争が繰り広げられていたのは、すごく面白かったです。

現代美術をわかっている人もわかっていない人も

みんな意見をせずにはいられないフランス人らしいと思いました。

おばあちゃんは「そんなにお金があるんだったら

こんなわけわからないことしないで

私にお金をくれればいいのにねー」と言っていましたよ(笑)。

 

ちなみに、これらプロジェクトの資金を、彼らは自分たちで捻出しています。

ドローイングを売ったり、カタログを売ったりした資金でまかない

美術館や政府からは援助を受けていないのがポイント。

壮大ですよねー。

 

映像作品が終わると、あとの展示はそのポンヌフ・プロジェクトの

企画のデッサンや模型や、設計図、指示図

実際の布やロープ、写真などの展示です。

これですら、規模が想像以上で、迫力がありました。

すごい。ひたすら、すごい。

 

またまた現代美術が好きになりましたよ。

「何でそこまでして。。。」

「何でこれがアートなの?」

「発想がアートなのか、完成がアートなのか・・・」

いろいろな思いが交錯します。

ポンヌフや議事堂を梱包することは、特別なことではない。

キャラメルを梱包することと、ポンヌフを梱包することは同じです。

包むものが大きいから偉いわけでもない。

でも、梱包しようとした途端、それぞれの人の中で意味が生まれる。

「くだらない」と否定する人にとっての価値観も

「すごい!」と称賛する人の価値観も、作品の存在意義を強化します。

 

2週間後に撤収したわけですから

目の前から「作品」はなくなってしまった。

でもその後も「作品」は生き続けるんですよね。

それぞれの人の意味を持ちながら。

 

思えば、ポンピドーにある作品は

喧騒の後の抜け殻みたいな感じがします。

ピカソのスキャンダラスな作品

デュシャンの挑戦的な作品

抜け殻を「美術館」という白い箱の中で眺めることは

わけがわからないものをただ見ているだけかもしれません。

でも、その当時の「喧騒」を想像すると

とたんにドキドキするんですよね。

 

クリストの抜け殻は、さらに抜け殻の破片でしかないけれど

喧騒はパリ市民、フランス中、世界中を巻き込んだ大きなもので

私の胸騒ぎも、ものすごく大きかったです。

この展覧会を観て、何を思っても正解です。

いや、何も思わなくっても。

 

私はこうやって、何かを観た時に

頭の中でいろいろなことを考える、その時間が貴重だなと思います。

現代美術は「何か」がよくわからないことが多いので

頭の中ですぐ答えが出てこないのが面白いんですよね。

芸術の秋。これからも脳みその活性化に勤しもうと思います!


もしクリストに興味を持った方、ぜひ日本が誇る赤瀬川原平も調べてみてくださいね。



ポンヌフを包んだ男