心臓の病棟に移った後も、食欲が出ず元気がないまま日々が過ぎていきました。

 

 

どんなに体がしんどくても母はトイレにだけは絶対に行く人でした。

利尿剤を内服しているから、内服後はトイレが近くて午前中はトイレに数回行かなければなりません。

車いすに移ってトイレに移動してという動作はまだできていましたが、体力が落ちていたので体に負担がかかっていたのではと思います。

 

 

外科病棟に居たころから体重もかなり減ってきていました。

ただベッドに寝ているだけ。

一か月近くまともに食事をしていないのに、点滴はしてくれないのか?と思っていましたが、自分が看護師ということもあり、なかなか言い出せませんでした。

 

 

ある日、いつもよりしんどそうな母。

トイレに移るのもやっとの状態でした。

このままだと心不全が悪化してしまう。

 

 

 

昼間に付き添っていた姉が

「トイレに移るのがしんどそうなのでおしっこの管を入れてもらえませんか?」

と看護師さんにお願いしたけど、

「入れてもおしっこって言われますよ」と軽くあしらわれたと悲しんでいました。

 

 

 

その看護師さんは新人で、母のことをただトイレに近いおばあさんとでも思っていたのでしょうか。

私が仕事が終わり母のところに行くと、その看護師さんが検温に来ていました。

 

 

 

看護師さんの患者への聞き方

「胸は苦しくないですか?」

いつも疑問に思う聞き方です。

こう聞かれたら、つい「はい」と言ってしまうのです。

 

 

私に「今日はしんどい」と言っていた母が、こう聞かれたら「はい」と

言ってしまうのです。

 

 

 

否定する聞き方ではなく、その症状がある前提での聞き方をすれば、患者側も症状を言いやすいと思うのです。

「胸が苦しいですか?」と。

 

 

トイレに連れて行ってもしんどくてなかなか立ち上がれない母に、何やってるのみたいな態度で扱われたことがとても悲しく思いました。

 

 

なんで今日に限ってこの看護師さんが担当なんだろう。

他の看護師さんだったら・・・。

この日だけはそう思わずにいられませんでした。

 

 

夕方、母が突然嘔吐しました。

少量だったので、そのまま様子を見ようとも思いましたが、体調が悪い母のことをわかってほしくてナースコールを押しました。

 

 

「母が嘔吐しました」

その看護師さんは血相を変えて来ました。

バイタルを測り、吐き気止めの注射をし、凖夜勤の看護師さんにすぐ引き継ぎました。

 

 

ずっと母に付き添い、数年介護してきていた私たちにだからわかる母の状態。

この状態は悪くなる前兆と思い必死に訴えても、聞き入れてくれない。

バイタルサインだけが、指標じゃない。

患者の経過を、全体を見ていますか?

そう言いたくてたまりませんでした。

 

 

 

この時ほど悲しかったことはありません。

 

 

病棟の看護師さんたち、主治医の先生、みんないい方で母は大好きでした。

でも、苦手な看護師さんもいました。

この看護師さん以外は皆さん母に寄り添ってくれていました。

 

 

 

この日、ちゃんと看てくれていたら、母はあんなに苦しい思いをしなくてよかったのではないかと今でも悔しく思います。