61 「一人寝の子守唄」 2311字 12-2012
「徳さん、あと1週間でんなあ。何がやって?
決まっているやおまへんか。
社長さん、早よう、帰って来はったらええなあ~」。
先週の『気まぐれ歌の旅』(サンフランシスコラジオ毎日放送)で
二川さんが、ひとり身の徳さんに「一人寝の子守唄」を
プレゼントしてくれた。
一人アメリカに取り残された徳さんは一人身の生活に寂しい、
悲しい思いで難儀していた。まず苦労したのは、料理の献立である。
「今日は何を食べようか」、カレーライスにするか、
インスタントラーメンにするか、残りご飯をマイクロオーブンで
チンして、梅干しで食べるか。
アメリカのマーケットで売っているハンバーガーやス
パゲティーなど洋食のインスタント料理はこの数年食べたくなくなった。
「年をとると昔の食べ物に戻る」、本当のようである。
「今日は何を食べようか」と嫁はんが友達との電話の中で
話していた言葉が、蘇ってきた。
女の人達の料理の献立を考える苦労を考えたこともなかった。
徳さんの作れる5つ6つほどのレシピで1ヶ月の料理の献立を
考えるのは、エッセーのネタを探すように難しいと思った。
他人の嫁はんには口に出して言えるが、自分の嫁はんには
口に出して言いにくいこの言葉、“嫁はんという職業はえらい”。
難儀な言葉でんなあ。
それと、ひとりで食べる料理のなんと味気ないこと、
まずいこと。お腹がすいていても美味くない。
気の合った者と一緒に食べるうれしさが、
料理をおいしくすることが身に沁みてわかった。
続く