『ためになる健康情報』第21回 薬によるパーキンソン症候群

北本中央クリニック 神経内科 藤本 健一

 

パーキンソン病の原因は、脳内のドパミンの減少です。

ドパミンは20歳ごろがピークで、歳とともに減少します。

ドパミンがピーク時の2割を割るとパーキンソン症状が出現します。

健常人も100歳を超えると2割を割るため、100歳超えの老人の動きは遅くなります。

 

ドパミンは運動系のほか、精神系や嘔吐中枢でも使われています。

精神系のドパミンが過剰な病気の代表は、統合失調症です。

統合失調症の治療には、ドパミンを減らす薬が使われます。

薬は運動系にも作用し、パーキンソン症状を誘発します。

統合失調症は運動系のドパミンが豊富な20歳前後の若者に多いため、多少ドパミンが減っても問題ありません。

ところが、認知症高齢者の幻覚や妄想の治療に統合失調症の薬を流用すると容易にパーキンソン症状が誘発されます。

薬剤性では、服薬開始直後には症状を認めず、長期服用すると急速に運動症状が悪化するのが特徴です。

このため薬との因果関係が見落とされがちです。

一般的な吐き気止めもドパミンを減らす薬です。

長期連用するとパーキンソン症状が誘発されるので注意しましょう。