225話 逃げるが勝ち | ぶらり荒磯 一竿子
2018年04月10日

225話 逃げるが勝ち

テーマ:ブログ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊豆諸島上空に高気圧が張り出してきて、やっと天候が回復しそうな気配である。わいはこの機を逃すまいと、先月の29日、竹芝桟橋を22:30発の夜行船で1か月ぶりに三宅島に向かっていた。

 

 

それにしても3月はよくしけたものだ。本州東岸に沿って低気圧が入れ替わり立ち替わり北上し、強風を吹かせ、雨ばかりか雪まで降らせてくれた。おまけに、三宅島の東を50キロ以上も離れて北上していた黒潮が西寄りに大きく流れを変えたので、黒潮の帯がすっぽりと三宅島を呑み込んでしまった。おかげで、17℃まで低下していた海水温は21℃近くまで跳ね上がって、例年に較べて4℃も高くなっていた。
何とか下がってくれないものかと様子見していたが、自然現象が希望どおり変化してくれる訳はないから、悪条件を承知で渡島することにしたのだ。ところが、いざ三宅島に来てみると、あまり期待していなかった分、面白い釣りができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上陸した日の朝6時、わいは釣り宿光明丸で借りた軽ワゴンを駆ってカドヤシキの磯に向かっていた。カドヤシキまではわずか4~5キロしかないが、荒磯に上って実際に釣り始めたのは7時を廻っていた。気象情報では北東の風やや強しという予報だったが、ここカドヤシキでは左側から吹く東風が結構強く、仕掛けを投げるとたちまち糸ふけして、ふけたラインが潮流や波や風で引き戻され、仕掛けが引っ張られて自然な形で流せない。そんな苦労を除けば、その他はもろもろ順調だった。

 

 

折から、御蔵島の上空には朝日が昇って、沖に向かって海面はまぶしいくらい輝いていた。今朝の海は遥か彼方までべたなぎに見えたが、実際にはかなりうねりがあって、磯際に押し寄せるうねりがあちこちで激しいしぶきを上げていた。沖合では、船影を波間に見え隠れさせて、小さな漁船が何かの漁をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


わいは、岩の上に置いた付け餌の脇にペットボトルを置いて、時折茶を飲みながら釣っていたが、小一時間してもコツリとも魚信はなかった。それから30分ほどたったろうか、やっと微かなアタリがあったので、軽く合わせてみると、瞬時に強烈に引き込んでくれた。取り込んでみると、元気のいい30センチ大のイシガキであった。水温が高いせいでイシガキダイが釣れるのだ。暫くすると、またしてもイシガキが食ってきた。

皮肉にも、上物釣りに底物ばかり掛かって来る。ただ、ここは水深が浅いので底物が釣れてもおかしくはない。

 

9時頃になって、やっとそれらしいアタリがあって、竿を煽ってやると猛烈に絞り込んできた。竿も折れよとばかりに深場に向かって疾駆していく。まるで潜水艦が掛かったような気分である。姿こそ見えないが、感触からして大物である。

10分以上格闘したろうか。取り込んでみると、50センチオーバーのイスズミだった。外道ではあったが、十分に堪能できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


そのあと掛かってきたのは、青物と見まごうばかりに疾駆する猛烈アタローである。

こいつは青物はだしに海面近くを豪快に疾り回るのだ。その疾り方はヒラマサやカツオにも似て実にパワフルなのである。疲れ知らずに右に左に走り回るので、左右から突き出した磯岩にラインが引っ掛かるのではないかと、はらはらしながらのやり取りとなった。

その正体はオキナメジナで、別名ウシグレともいうが、ずんぐりむっくりの肥満体で顔も姿かたちも実に不細工なのである。しかも、オキナメジナは南方系なので、オナガとは逆に水温が高くなると活性化する。馬に例えると、オナガは俊足優美なサラブレッドで、オキナは短足肥満の道産子である。

 

 

取り込んだオキナは体長が40センチほどあって丸々と肥っていた。その後も同じくらいのオキナが立て続けに釣れて、デブちゃんを都合3匹も釣ってしまった。同時にイスズミの35センチクラスが2匹上がった。どちらも本命には程遠かったが、めちゃめちゃ走ってくれたので、大いに楽しませてもらった。

しかし、11時を過ぎたあたりで急に食いが止まって、アタリが途絶えてしまった。しばらく辛抱していたが、遠くで12時のチャイムが鳴ったのを契機に、わいは竿をたたむことにした 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌4月1日は早々と午前0時に目が覚めてしまった。午前2時の起床予定だったので、いくらなんでも早すぎる。再び目を閉じてみたが、ぜんぜん寝付けない。どうせ眠れないならと午前1時に起きてしまった。

 

 


午前2時、光明丸を出たわいの軽ワゴンは深夜の一周道路をひた走り、カドヤシキに降る森の草むらまで下ってエンジンを止めた。草むらに車を駐めて、背負子を背負い、帽子のヘッドランプを点灯し、真っ暗な森の入り口で立ち止まって、木々の梢を振り仰ぐと、木立の間に青い月が煌煌と輝いていた。

その夜の潮は大潮、月はまんまるの満月であった。
真っ暗い森のブッシュの中を抜けて、海岸伝いに溶岩と瓦礫を踏んでしばらく行くと、月明の下に黒々とした岩塊がいくつも連なって、打ち寄せる波音がまじかに聞こえてきた。あと5分もすれば海に突き出た溶岩岬に到着する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


わいは月明かりに照らされた崖側の高い場所に立ち止まって、いつものように、

「カドヤシキさん、よろしくお願いしま~す。」と叫んで頭を下げた。

なにを血迷っているのかと笑われるかもしれないが、人っ子一人いない神聖な領域に真夜中に侵入するのだ。森や岩山、海岸や岩塊に潜む精霊や魑魅魍魎に敬意を表し、謙虚な態度で臨むのは当り前のことである。殊に、わいは一人なのだから、万一危機に陥った場合、精霊や魑魅魍魎にすがるしかないのだ。

 

 

カドヤシキの荒磯に入ってみると、波もうねりも前日と同程度であったが、風向きが真南に変わっていた。風速は6~7メートル。真南の風は完全なアゲンストだから釣りづらいこと甚だしい。もし、これ以上強まったらアウトである。そうならないことを祈るしかない。

 

 

本日から4月に入ったとはいえ、真夜中の荒磯は結構冷えるものだ。風は寒いし、頭上から差す青白い月光は冷気さえ感じさせる。防寒対策に厚手のシャツを着込み、背中にはホッカイロを貼っている。カッパは上だけ着ていたが、ズボンも履かないと震えてしまいそうだ。ともかく、用心に越したことはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


その日の満潮は午前6時30分、おそらく、4時ごろから食いが立ってくるだろう。慌てることはまったくない。ゆっくり支度すればいいのだと考えて、ゆっくりと準備をしていたら、3時前に支度が終わってしまった。

折角だから釣り始めたが、満潮までにはまだ3時間余りある。現在の満ち加減は上げの4分くらいだろうか。わいは要所要所にコマセを打って、風の影響の少ないワンドの内側で釣り始めたが、いくらコマセを打っても電気ウキには変化はない。ともかく、息長くコマセを打って魚をたくさん寄せておくことにした。

 

 


それが功を奏したのか。4時すこし前からアタリが出始め、40センチ前後のオナガが次々に掛かってきた。ハリスは6号、竿3号で釣っていたから、全部抜き上げである。

30分ほどすると、40センチクラスのオナガが4匹ほど上がっていた。このまま行くと、また釣り過ぎてしまうと懸念されたが、4時半を過ぎたら急に型が小さくなって、25~30センチにダウンしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5時を回ったら、突然、サバの群れが登場した。こうなるとどこに投げてもサバしか掛かってこない。とは言え、この時期には珍しく、丸々としたビール瓶並みのサバだったから、何匹か持ち帰ることにした。気を許したら、30分もしないうちに6匹も釣れてしまった。もう、これ以上釣りたくない。

あと30分もすれば夜が明けてくる。サバの群れは夜が明けた途端、忽然と姿を消すから、夜が明けるまでコマセも釣りも中断し、小休止することにした。手持ちぶたさだったので、ペットボトルの茶を飲んでいると、やがて夜が白々と明けてきた。
 

さ~て、サバが消えたところで、改めてオナガ祭りでも始めるかと、再び足元にコマセを打って仕掛けを打ち込んだところ、

ギャ~ッ ⁉ 仕掛けが海面に着水するやいなや、またしてもサバが食らいついてきた。

2投、3投と試してみたが、やはり、サバが食らいついてきた。ふつうなら夜明けとともに沖に去っていくものだが、今朝のサバは足元でオキアミが来るのを待っていたのだ。

これほど嫌がっているのに付き纏ってくるのだからストーカーである。しかも、手の打ちようはなさそうだ。ストーカーから逃れるために、わいは竿をたたんで退散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

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