サイトウユキが初出場で大会新記録を出せた理由
 
 今まで、大会初出場で大会記録を更新した選手はいない。
大会初開催からのしばらく期間と、6年前の丸尾選手だけが例外だが、
それも大会記録が21秒9というレベルの低かった時代の話である。京都駅ビル階段に慣れるには、時間がかかるのである。
 
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1.
 彼女自身が持っているスプリント能力の高さ。100m12秒2の走力。

2.
 大学2回生の現役選手であり、常に陸上の練習をしっかりできていること。特に冬トレをサボっている期間があれば、体力は衰えるが、強豪M女子大学は、冬期間も強化練等で充分な練習を行っていること。

3.
 京都駅ビルは、その段数、長さが独特であり、通常の短い階段練習では、最後の苦しさは味わえない。それゆえに、初出場の選手は、たとえ陸上のトップ選手であれ、ペース配分がわからず、抑え過ぎたり、逆に出しすぎて後半失速するパターンが多い。
 ゆえに、合同練習は、2回しか行えなかったが、できるだけ、京都駅に似たパターンの階段を選び、171段を想定した練習を行った。その中で、25秒~30秒前後のペース配分を覚えさせた。
 また、今年に関しては、全段2段飛ばしで行く脚力は出来上がっていない状態であったので、2段飛ばしと1段飛ばしの混ぜ合わせるパターンを練習させた。この練習によって、初出場の選手が陥るリスクは、ほぼ解除された。

4.
 当日練習。当日は、開会式の間、上の71段で何度かアップさせ、京都の階段に慣れさせた。71段1本真剣にタイムアタック&ゴールタッチの練習をして、10秒5、まずまずの出来であった。
 さらに3分間試走タイムに1本、100段タイムアタック。15秒5。100段+71段で26秒0の目標設定ができた。
 さらに3分間のインターバルで171段タイムアタックを決行。モップ拭きの役員をかき分けながら、上まで駆け上がり、最後失速しながら30秒台でゴール。この失速の経験が非常に大切であった。
 あの独特の125段過ぎたあとの苦しさは、経験した者でないとわからない。彼女は、午前中の練習で、すでに1回経験することができ、本番では、自分の中でペースを組み立てることができた。彼女はすでに初出場ではなく、2年目の選手と同等であった。さらに、2回の合同練習の経験を踏まえると、3回目の出場と同じ経験値を持って、大会に臨むことができたのである。

 ただし、午前中の171段トライアルは、かなり危険(無謀?)な行為であり、おそらく試合当日にこれを真剣に行った選手は大会史上いなかったのでは、ないだろうか。しかも彼女は、71段、100段、171段の真剣T.T.×3本を実施したのである。
 あくまでも毎日走っている現役大学生だからできたことであり、3時間以上のインターバルで回復が見込まれたが、おじさんには無理なことである。私でもT.T.は125段で止めておきました。(^^)
 
5.
 なにより、素直にコーチングを受け入れ、自分のものにして行った、彼女の真っ直ぐな性格と、階段への意欲。
 
 
 以上の理由により、彼女は初出場で、大会記録27秒91を、一気に1秒5も更新する、前代未聞の26秒台、26秒46を樹立することができたのである。全種目大会新の完全優勝のためには、彼女の活躍は不可欠、緻密な戦略があったんですよ。