本日6月30日、あるアイドルグループが解散する。

 

東池袋52というアイドルグループだ。

 

 

果たしてどのくらい知名度があるのだろうか。けど、東池袋52と聞いてピンと来ない人でも、セゾンカードは聞いたことあると思う。

 

東池袋52とは、セゾンカードの会社クレディセゾンとその関連会社の女性社員で構成されたグループだ。東池袋にあるサンシャイン60の52階に本社を構えていることから、東池袋52という名が付けられた。

 

デビュー曲は2017年5月に発表された「わたしセゾン」。どこかで聞いたことのあるような曲名だと感じた方もいると思うが、本当に欅坂46の「二人セゾン」の"勝手に"アンサーソングという立ち位置で作られた曲だ。しかも秋元康さんからも公認されているという。

 

当初は「二人セゾン」の欅坂46にプロモーションを依頼しようとしたらしいが、他社のカードのプロモーションをしていたため断念することになった。だったら自分たちでアイドルグループを作ろうということで、女性社員が集められた。

 

かなり端折った言い方をすると、いち企業のプロモーション活動で作られたアイドルグループだ。しかし、それが5年も続くとは、結成当初どれだけの人が予想できたのだろうか。

 

 

今回は、東池袋52が一体どのようなアイドルだったのかを、活動を振り返りつつ考えていこうと思う。

 

 

2017年5月に「わたしセゾン」でデビューした当初は、クレディセゾンが自社の社員を集めてアイドルグループを作ったということが様々なメディアで取り上げられたこともあり、話題となった。


その後は各地のイベントに出演をしてパフォーマンスを披露していくのだが、8月には多くのアイドルが出演するイベント「@JAM EXPO 2017」に出演する。そこで披露された新曲「なつセゾン」は、わたしセゾンに比べて激しいダンスであり、選抜メンバーによってパフォーマンスが行われた。

 


東池袋52の知名度が急上昇したのは、その後の冬のことである。12月に「雪セゾン」を発表し、それはクレディセゾンのCMの主題歌としても使用された。さらにそのCMには東池袋52が出演しており、このCMがテレビやラジオで流れると、「曲がいい!」とか「CMに出てる美女は誰!?」などとたちまち話題になったのである。

 

東池袋52のファンの中でも、雪セゾンからハマった人は多い。ちなみに自分もその1人だ。わたしセゾンがニュースになった時にそういうグループがいることは知っていたが、CMで再び見かけて曲にハマり、やがてグループに注目するようになるのである。

 

 

このような活動から見るに、結成からわずか1年弱でこれまで一般の女性会社員だったメンバーが、アイドルとして活動していたのだ。

 

その後も、地方を含むあらゆる商業施設や、夏の@JAM EXPO、そして冬のサンシャイン60の地下にあるサンシャイン噴水広場でのクリスマスライブといったイベントでパフォーマンスを披露していった。ときには取引先のところでパフォーマンスを行うこともあったという。そして1年に1曲ペースではあったものの、新曲も随時発表しており、活動は順調なものだったといえるのではないだろうか。

 

 

しかし、その活動に大きな壁が立ちふさがってしまう。新型コロナウィルスだ。コロナ禍の影響で、パフォーマンスを直接披露する機会は、2020年2月に神奈川で行われたイベントのピンクシャツデーが最後となってしまった。

 

 

このとき、アイドルを本職としていないいわゆる一般の会社員たちが、どう活動していけばよいのか。東池袋52は大きな岐路に立たされることになったと思う。だが、それでも新しい形で活動を続けてきたのである。



それが、インスタライブである。ピンクシャツデーの翌月から始めたインスタライブは、結果としてさらなるファンの獲得につながったのではないだろうか。そう感じている。

 

インスタライブでは、事前の募集やコメントに寄せられた質問にメンバーが答えたり、ダンスレクチャーなどでパフォーマンスを披露するといった内容が主なものである。

 

そして、このインスタライブにはこれまでのパフォーマンスとは異なっている部分がある。これまではパフォーマンスの最後にセゾンカードを宣伝するというプロモーションが"お約束"となっていたが、そういったものは基本的に行われないのだ。

 

実はこうした"プロモーションからのシフトチェンジ"はインスタライブの中身以外でも見受けられる。今までは東池袋52のグッズやCDはセゾンカードを使うことで貯められる「永久不滅ポイント」との交換でのみ手に入るものだったのに対し、インスタグラムで行われるプレゼント企画はインスタアカウントをフォローすれば誰でも参加できるのである。

 

もちろんカードについて解説するインスタライブの回もあったし、東池袋52がインスタライブであれ何らかの活動をするだけで宣伝になるという見方もできるだろう。だがこうしたいわゆる"プロモーションからのシフトチェンジ"は、一般的なアイドル寄りの立ち位置としての活動をしていることになる。言うならば、より"アイドルらしくなった"のである。

 

 

その一方で、インスタライブで繰り広げられるトークは、「あのメンバーとこないだ飲みに行きました」とか「一緒にランチに行きました」などといった、一般的な女性会社員の日常風景だ。しかもダンスレクチャーでは「通勤の電車でYouTubeでライブの動画を見てきた」と言っているメンバーもいる。このライブ動画は、東池袋52のファンがYouTubeにアップしている動画であり、まさに彼女たちは、われわれと同じ目線なのである。

 

これらのことは、他のアイドルには見られない親近性であり、そういう意味では"アイドルらしくない"であろう。


しかし、近年のYouTuberの人気ぶりにもあるように、芸能人やスポーツ選手よりも身近な存在であることが人々を引き付ける1つのファクターとなっている今日においては、そこに魅了される人々がいてもおかしくないのである。

 

 

アイドルらしくも、アイドルらしくない。この二面性が、東池袋52の魅力そのものだと思う。インスタライブを通してさらにファンも増えていたであろう。

 

それだけ、インスタライブという限られた場の中でも順調に活動していたと思う。しかもその間にさまざまなテレビやラジオの出演でさらに人々の目に触れることになっただろうし、昨年にはNIKKEI全国社歌コンテストで「わたしセゾン」が最優秀賞を受賞するという実績も作ってきたのである。


だからこそ、これからも注目していきたいグループだった。メンバーと、それを待ち続けていたファンにとっては叶わなかったことになってしまったが、もしまた@JAM EXPOやクリスマスライブのような直接人々の前でパフォーマンスする機会があったら、2年前よりも多くの人が観に来たと思う。




順風満帆に見えたなかでの突然の解散宣言。正直驚きだった。



しかし、どのアイドルも盛者必衰である一方で、このタイミングで活動を終えることが、きれいな形での「永久不滅アイドル」としてのあり方だったのかもしれない。



グループは解散しても、曲はずっと残るという。ということはこれからも曲を聴き続けるだろうし、聴きながらこのグループのことを思い出すのだろう。