毎日通ったエッジクリフの駅構内にあるパン屋からのパン購入も、帰国当日は朝が早くてそれが出来ないので帰国前夜にそこへ行き「これが最後」と言って買いたいパンを指差してその分のお金を渡した。すると店員さんのひとりが奥へ行ってそれ以外の沢山のパンを持ってきて「私たちからのプレゼント」と言ってくれた。毎日ここでパンを買った時に少しばかりの雑談をしただけだったので、ここまでしてくれるとは思ってもいなかった。この店で働く彼らは東南アジアからの出稼ぎ労働者でオーナーでは無い。だから私へのプレゼントの分は自分達の身銭を切っているかもしれない…。海外での予想外の優しさには、国内でのそれと比較して何倍も感動するものだ(今の私なら涙を流していたかもしれない)。

 

翌朝スーツケースを引きながらこのパン屋の前を通った時。店員さんたちと会えなかったのがとても残念だった。そしていつかまた来てみたいと心の底から思った。そう言えば帰国後にこのパン屋へ送ったお礼の手紙、あれは届いたのかなぁ…。

 

最終日の朝が早かった、ということで思い出したことがある。フライトの時刻から逆算すると、ホテルのチェックアウトはフロントスタッフが通常の勤務を始める時刻よりも早くなるので前日にその旨を伝えておいた。…が、やはり予想通り約束した時刻になってもフロントへは誰も現れなかった。最初のうちは「これもオーストラリアだ」と微笑ましくも思っていたが、15分が過ぎてもシーンとしたままなので徐々に焦ってきた。昨夜の依頼内容が今朝の担当者へ伝わって無いのかもしれない…、と心配した矢先に奥から物音がして出てきたのは昨夜直接話したスタッフだった。開口一番「ごめん、寝ていた」だと…、まぁ「これもオーストラリアだ」と思うことにした。

 

こうして無事に私のオーストラリア視察の(と当時は思っていた)旅は終わった。沢山の優しさに触れた思い出だけが残っているのは、もしかしたら当時の私は2つ目の会社を退職して無職の時期だったことから若干心が病んでいたせいのかもしれない。でも、本当に楽しかったなぁ~!