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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はNEJMからで、血液内科に関係ありそうでなさそうな境界論文をご紹介します。

 

Thalidomide for Recurrent Bleeding Due to Small-Intestinal Angiodysplasia

Chen H et al, N Engl J Med 2023, doi: 10.1056/NEJMoa2303706

 

【背景】

小腸からの再発性出血は消化管出血の5~10%を占め、治療が困難である。サリドマイドは小腸血管拡張症(SIA)による再発性出血の治療薬として評価されてきたが、確定的な臨床試験はなかった。

 

【方法】

SIAによる再発性出血の治療に対するサリドマイドの有効性と安全性を検証するための多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を実施した。SIAによる再発性出血(前年に少なくとも4回以上の出血イベント)のある適格患者が、経口サリドマイド100mg/日、50mg/日またはプラセボの投与を4カ月受ける群にランダム化割り付けされた。患者は4カ月の治療期間終了後、少なくとも1年間フォローアップされた。主要評価項目は前年と比較してサリドマイド治療終了後1年間で起こった出血エピソードの少なくとも50%の減少として定義される奏効である。主要副次評価項目には再出血を伴わない出血の停止、輸血、出血のための入院、出血期間、ヘモグロビン値であった。

 

【結果】

全150人の患者がランダム化を受け、51人がサリドマイド 100mg群、49人がサリドマイド 50mg群、50人がプラセボ群となった。奏効を認めた患者割合は、サリドマイド 100mg、サリドマイド 50mg群、プラセボ群でそれぞれ68.6%、51.0%、16.0%であった(3群の同時比較におけるP<0.001)。副次評価項目の解析結果も主要評価項目を支持するものであった。有害事象は全体にプラセボ群と比較してサリドマイド群に多く、便秘、傾眠、四肢のしびれ、末梢浮腫、めまい、肝酵素上昇などの特定のイベントであった。

 

【結論】

今回のプラセボ対照試験において、サリドマイド治療はSIAによる再発性出血患者の出血を減少させた。

 

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我々血液内科医にとっては、サリドマイドと言えば多発性骨髄腫の治療薬なのですが、サリドマイドには血管新生因子を抑制する作用があり、それが小腸毛細血管拡張による再発性出血を減少させたとする論文になります。消化器内科は門外漢なので詳しいことは言えませんが、小腸からの出血は内視鏡的な止血が難しいので、このような治療選択肢が出てくると、特に侵襲的な処置が困難な患者さんには良いことだと思います。

 

おまけ

 

 

少し前に作った、根菜メインの赤くないミネストローネです。