こんにちは。血液内科スタッフKです。

突然ですが、骨髄液を抜く時のこだわりってありますか?

私は、いつ誰に教わったのか覚えてないんですが、「早くギュッと取らないと末梢血が混ざるよ」と教えられて以来、できるだけ短時間で勢いよく抜くようにしてます。

今まで色んな先生が骨髄液を採取するところを見てきましたが、注射器を引くスピードは人それぞれという感じがします。どのくらいのスピードで取るのが適切なのか、今回はその疑問にお答えしたいと思います!

Bone Marrow Aspiration: A Randomized Controlled Trial Assessing the Quality of Bone MarrowSpecimens Using Slow and Rapid Aspiration Techniques and Evaluating Pain Intensity
Grønkjær M et al, Acta Haematol. 2016;135(2):81-7

482回の骨髄穿刺において、S-technique (SlowのS)とR-technique (RapidのR)のどちらかにランダマイズして骨髄液を採取します。患者さんと標本を見る病理医にはどちらの方法で採取したかは知らされません。

具体的な採取方法は以下の通りです。

S-technique: ゆっくりと低い陰圧をかけ、同じペースで5~15秒間で採取する。
R-technique: 約1秒間で高い陰圧をかけ、陰圧を維持して採取する。

参考までに、使用するのはどちらも10mlの注射器で、1回の吸引で1.5~3mlの骨髄液を採取する点は同じです。麻酔も両群で同じものを使用し、採取部位は腸骨です。

病理医は標本の質(造血巣の数とcellularity)をブラインドで評価します。また、患者さんの採取時の痛みはvisual analog scale(VAS)で評価します(簡単に言うと、患者さんに痛みを0~10点の範囲で点数化してもらいます)。

詳細は割愛しますが、R-techniqueのほうが、統計学的に有意に標本の質はよかったそうです。痛みに関しては、S-techniqueの方が有意にVASが低く痛みが少なかったそうですが、VASの中央値はS-techniqueが2に対し、R-techniqueが3とどちらも低い値でした。

筆者らは痛みは有意に強くなるものの、いずれにせよそれほど高いVASではないので、質の良い標本を採取する観点からはR-techniqueが推奨される、と結論しています。

というわけで、先人の経験則が正しかったことが証明されました。良質な検体を採取できているか、いつも標本を見るまで心配しますが、これからは自信を持って素早く採取したいと思います!