車いすは、ただの移動手段でしょうか?車いすをつうじて障がい者の方々に希望をもたらすことはできないのでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、2,500年の歴史を覆す足こぎ車いす「COGY(コギー)」を開発した鈴木堅之さん(TESS社長)のインタビューから、障がい者目線に立った車いすのあるべき姿を探っています。
2,500年の歴史を覆す「車いす」が登場 鈴木堅之(TESS社長)
これに乗れば動かなかった足が動き出す。そんな夢のような「車いす」があること、皆さんはご存知ですか?
──御社の足こぎ車いす「COGY(コギー)」が大きな反響を呼んでいるそうですね。足こぎ車いすとはどういうものですか?
鈴木 「病気や怪我、加齢などで足の不自由な方が、自分の足で漕いで移動できる車いすなんです。例えば、脳梗塞で左足がずっと麻痺状態だった男性が、6年ぶりに自分の足を動かせた。あるいは5年半寝たきり状態だった女性が、これに乗ることで認知機能が向上した。こういった喜びの声がご本人やご家族からたくさん寄せられています。他にも脊髄損傷、パーキンソン病、関節リウマチ、脳性麻痺など、様々な疾患の方が活用してきましたが、足こぎ車いすに乗れば、歩行困難な方でも自力で好きな場所へ行ける喜びを味わっていただけますし、リハビリに活用すれば、再び自力で歩けるようになる可能性もあるのです」
──実に画期的ですが、なぜそのようなことが可能なのですか?
鈴木 「もともとは30年以上前に立ち上げられた東北大学の医学部と工学部の共同研究を通じて開発されたものでしてね。生まれて間もない赤ちゃんの両脇を抱えてちょっと前に傾けると、まだ立つこともできないはずなのに、両足を交互に前に出して歩くような動作をします。
これは原始歩行といって、中枢神経の回路が働いて生じる現象ですけど、足こぎ車いすでこの回路に刺激を与えることで、動かない足でも自動的に歩行運動を生じさせると考えられています。足こぎ車いすは、ペダルのギア比を1対0.8と極めて軽く設定してあるので、僅かな力でも踏み込めますし、踏み込むという刺激によって足が動くわけです」
──現在、どのくらい普及していますか?
鈴木 「累計で6,000台くらいです。従来型の車いすはレンタルだけでも20万台くらい出ているので、まだまだ少ないですね。
車いすの歴史が始まったのは、2,500年くらい前と言われていましてね。ギリシャにパルテノン神殿が建てられた時代に、戦争で怪我をした人が、車輪を付けた台に乗って移動したのが最初らしいのですが、その頃から現在まで、車輪を手で漕ぐという基本的な仕組みがほとんど変わらずにきているんですよ。
最近はちょっと進歩して、電気で動くものが出てきたくらいで、動かない足を動かす車いすというのは、歴史的にこれが初めてなんです」
image by: あきらめない人の車いす - Home | Facebook