型式番号 | MA-05Ad |
英語名 | BIG-RANG |
所属 | ジオン公国軍 |
開発 | ジオン公国技術本部 |
生産 | ジオン公国軍? |
生産形態 | 試作機? |
開発年 | U.C.0079 |
退役年 | U.C.0080? |
全長 | 138.0m |
頭頂高 | 203.0m |
本体重量 | 12,000t |
全備重量 | 17,900t |
装甲材質 | 超硬スチール合金 |
原動機 | 不明 |
出力 | 不明 |
推力 | 4,600t |
センサー有効範囲 | 不明 |
最高速度 | 不明 |
武装 | 大出力メガ粒子砲×1 ミサイル・ランチャー×8 ガトリング砲×2 ビーム撹乱幕発射筒×4 3連装大型対(宇宙)艦ミサイル×2 |
乗員数 | 1名 |
搭乗者 | オリヴァー・マイ技術中尉 |
登場作品 | 機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079- |
参考作品 | 機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079- |
こうして機体を構成する各ユニットが選択され弩級装甲ブースターを中心に、複数のAdユニットがスカート状に繋ぎ合わされていった。本来であれば、混戦を強いられる大戦末期の最前線で戦うという特性上、補給・修理を受ける味方機が進入する方向も含め、Adユニットは全方位を装甲防御可能とするべきだった。このため動的装甲システムが搭載されるはずだったが、このシステムはア・バオア・クー戦には間に合わず、本機は未完成のまま投入されることとなった。
本機について特筆すべき事として挙げられるのは、なんと言っても12月からの開始と言う開発期間の短さだ。民間企業や軍内の研究機関など、各開発部門で進められていた各種兵器開発計画が大戦末期の混乱で頓挫する中、技術本部は驚くべき事に数日から1週間で前線に送り出せる物をピックアップしたのだ。Adユニットや弩級装甲ブースターもこうして選ばれた機材であった。秘密兵器のなり損ないに過ぎなかった「瓦礫の山」から、短期間の内に実用的な巨大モビルアーマーを作り上げた当時の公国の底力は驚愕に値する。
こうして一応の完成を見た本機は、カスペン戦闘大隊に編入され、ア・バオア・クー方面に展開していた第603技術試験隊に配備される事となった。これは、同部隊が駆逐モビルポッドであるMP-02Aを多数運用していた事に起因する。詳しく言えば、本機は元々モビルスーツに対する補給修理機能を付与する予定だったが、戦局の悪化から同じく急造兵器であるMP-02Aのバックアップに特化する様に機能が変更されたと言う事である。学徒兵が粗悪な急造兵器で前線を張るという事に流石の上層部も思うところがあったのだろう。もっとも、これは表向きな理由で、この様な試験隊上がりの特別編成部隊に本機が配備された事実を、技術本部が本機に何らかの技術的不安を抱えていた事による、半ば押し付ける形での配備であったとする見方もある。
試験隊は、ア・バオア・クー戦が始まる直前に本機を受領したが、指揮系統の混乱のためか、ついに正規のパイロットは到着しなかった。そのため、乗員には総帥府から同隊に派遣されていたモニク・キャディラック特務大尉が予定されていたが、彼女が(弟のエルヴィン・キャディラック曹長が戦死したショックによる)戦闘神経症により任務遂行不可能と判断されたため、検分で本機に乗り込んでいたオリヴァー・マイ技術中尉が急遽テスト・パイロットに任命される。
しかし、調整に手間取ったビグ·ラングは、Eフィールドに向かう艦隊に同行できず、後から合流することになった。Eフィールドに到着した試験支援艦ヨーツンヘイム(第603技術試験隊母艦)は、敵の予測進路を高速で横切り、そこに全力散布フレームを使ってMP-02A部隊を展開しようとしていた。巡洋艦ですら危険な任務を鈍重な連絡貨客船が行なおうというのである。友軍艦艇が次々と沈んでいく中、ヨーツンヘイムは敵前衛艦隊の中央突破に成功。背後からのMP-02Aの一斉攻撃で、敵前衛は甚大な被害を出した。
しかし、その直後、敵に追い詰められたヨーツンヘイムは、絶体絶命の窮地に立たされた。初弾こそかわしたものの、クルーの誰もが諦めかけた瞬間、強力なビーム砲が連邦軍の艦隊をなで切りにする。遅れて到着した本機の大型メガ粒子砲による掃射であった。マイ中尉はヨーツンヘイムが退避した事を確認すると、MP-02Aが展開している戦闘宙域に進出した。敵に取り囲まれ始めたMP-02A部隊のために、自らをもって橋頭堡を形成したのである。ビーム攪乱膜を展開し、強力なメガ粒子砲でマゼラン級戦艦をも撃沈した本機に威圧され、連邦軍は一時退却した。こうして稼いだ貴重な時間を使い、本機は、生き残ったMP-02Aに補給、修理を施して、彼らを戦線に復帰させた。
このように、本機は期待通りの働きを見せてEフィールドの維持に大きな役割を果たしただけでなく、「最前線での弾薬供給の可能性」が有効であることを証明した。また、実戦での戦闘力の高さも証明している。MA-05としての武装の他に、本機はAdユニットのアーマー上に2基の3連装対艦ミサイルを搭載している。後方の死角をカバーする緊急用の装備であるが、これを使って2隻のサラミス級巡洋艦を撃沈している。
マイ技術中尉は「本来MA-05は加速性能を活かしての戦闘を得意とするモビルアーマーである」と記録に残しているが、本機は自らに敵の攻撃が集中する橋頭堡としても、持ち前の火力が役に立つことを証明できた。機動性が失われても、ビーム攪乱膜によって被弾率が低下している状況ならば、敵が向かって来てくれる限り、MA-05の攻撃力は健在なのである。
停戦命令後、散発的な小競り合いから発生した局地戦で、本機は弱点である下部後方から攻撃を受け、撃墜された。しかし、カスペン戦闘大隊の残余部隊は、本機を中心に最後の粘りを見せて、Eフィールドを守り抜き、友軍艦隊の脱出を成功させた。マイ技術中尉も爆発した本機からの脱出に成功し、ヨーツンヘイムに帰還している。こうして彼は、第603技術試験隊で生き残った、数少ないテスト・パイロットの一人となったのである。
結果的に本機は、急遽パイロットに任命されたマイ技術中尉の技術的見識の広さもあり、当初上層部が期待した以上の効果を発揮する事になった。しかし、この様な橋頭堡としての意味合いの強い艦艇クラスの巨大決戦兵器は、ジオン独立戦争と言う一大戦争下であったからこそ投入された物であり、以後の紛争・抗争において同じコンセプト/規模を誇る兵器の投入は確認されていない。
イグルーの悲しきラスボス。マイ中尉の技術屋魂と機体の特殊性がたまたまマッチし、なんちゃって「赤い彗星」になってしまった。何個かの資料に「赤き鬼神」っていう記載があるが、異名なのかどうかはわからない。0083リベリオンでビグロなしコンテナタイプの"ラング "が登場しているのでそちらも近いうちに投稿します。