夕食を済ませた後何時もの様にリビングで思い思いの事をしながらゆったりした
時間を満喫する。
テーブルの上には香が淹れてくれた冷たい珈琲が置かれていた。
彼女に話しかける前に自分の頭を整理したかった俺はそれを手にすると…〝ぐっ
〟と一息で珈琲を飲み干した。
それに…――
If I can meet in a dream 3
「香…?」
テレビから視線を外した香はこちらを向くと――
「なに?珈琲のおかわりなら自分で行ってよ。今いいところなんだから…」
「珈琲のおかわりなんかどうでもいい…。」
俺はテレビのリモコンに手を伸ばし彼女の承諾も得ずに電源を切った。
どう切り出そうか俺は正直迷った。
…悩んだ末に遠回しな言い方をしても仕方ないと思い、ストレートに話すことに
した――
「さっきお前の言ってた〝虫刺され〟のことなんだけど…」
そう切り出すと香は俯いて〝ソコ〟に触れた。
「ん~…痒みが出始めたら薬を塗るから多分大丈夫でしょ……」
その様子は見ていると己の中で燻っていた疑惑が確信へと変わるのに十分だった
。
先程もそうだったが――決して俺と目を合わせようとしない…。
更に…彼女は必死で誤魔化そうとしているが湯気が噴き出さんばかりの勢いで真
っ赤になってしまった肌の色までは誤魔化し様がない。
――香もあの〝夢〟を見ていて…記憶している!!――
「…いつもの俺は…〝夢〟を見ないってことぐらい香も知ってるよな…」
〝夢〟というキーワードに反応した香がビクッと肩を震わせるのが視界の端で見
てとれた。
「…うん…いつ敵に襲撃されるかわからないからそうやって幼い頃に訓練させら
れたって聞いてる…」
そう彼女が答えたのを聞くと…俺は一呼吸置いた…――
「そんな俺がここ何日かずっと同じ〝夢〟を見続けていた」
「っ……!?」
そこまで言うと彼女は激しく躯を震わせ始めた。
香の反応を視界に捉えると己を励ます材料にして、俺は話し続けた。
「現実では怖がらせたくなくて…ずっと行動に移すことに躊躇いを感じてた…。
それが夢の中では存分に叶えられる〝夢〟だった…」
ずっと俯いたままだった香が突然顔を上げると泣き笑いのような表情を浮かべな
がら――
「…あたしに…女としての魅力を感じられないからだってずっと思ってた…」
そう小声で話し始めた。
夜毎…想い人のもとを訪れては優しく抱きしめてくれる。
思いの丈を告げると、より熱のこもった囁きを返されて…。
現実にはなり得ない――幻――
「自分に都合の良い…勝手な夢を見ているんだって思ってた」
「………でもそうじゃなかった…」
俺が静かにそう言うとこっちに向けてきた顔が、泣き笑いに歪む。
ある日の朝――
彼女を愕然とさせる変化がその躰に起こった…。
香はゆっくりと着ていたブラウスの襟元に手をやると、ボタンを一つ…また一つ
と外し俺の目の前に胸元を晒け出した。
*
「っ……!!」
確かに予想ぐらいはしていた。
だが…そこに浮かび上がった数々の鮮やかな朱色の痕に俺は微かに息を呑んだ。
「昨日……お風呂に入ろうとしたら気付いたの………」
彼女は訳がわからなかったはずだ。
あれは…あの行為は夢の中の出来事だっ筈。
なのに、目覚めた躰に刻まれた現実のシルシ…。
表に出さなくてもどれほど不安に思ったのか…想像に難くない。
「…俺が…やったんだよな。」
無意識に伸ばした手で朱色の華の一つ一つに触れていく。
零れ出そうになる声を堪える為か…香は唇を噛んで我慢している。
それを見た俺は思わず彼女の唇を貪るかのように求めた。
――そして…今まで何度も夢の中で繰り返してきたその行為が初めて『現実』と
なった…――
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イラストはリョウの目線からにしてみました
色んな角度で描いてみたんだけれども
結局これで落ち着きました
これまだ触れる直前ですので
触れた当たりから唇を噛むと言うことで・・・
バランスは・・・無視と言うことで