電話から聞こえてくる声は…向かいの住人…ミックだった。
『リョウ…着いたのか?』
「さっきな…。」
ポケットから取り出した煙草に火をつけて煙を思いきり吸い込む。
吸い込んだ煙を吐き出しながら…
「そっちこそ…何処にいるんだ?」
『まだ外だ。
調べものがもう少し残っててな…それを片付けるまでそっちに戻れそうにないん
だ。
恐らく夕方頃には旅館の方に戻れると思うから…それまで適当に寛いでろよ。』
「寛ぐったってこの辺りで暇を潰せそうな場所なんてあんのか…?」
宿に着くまでに見かけた店といえばせいぜいコンビニぐらいしかなかった筈…
。
『…ない…な。』
「お前なぁ…戻って来るまでどうやって暇潰せっていうんだ…。」
『まあまあ…。そんなことよりリョウ…部屋にある風呂覗いてみたか?』
(…『そんなこと』で流すのかよ…。)
「いや…中までは見てねぇ…。」
『なら電話を切った後にでもカオリと一緒に覗いてみろよ…。』
「そこで何で香の名前が出てくるんだよ。」
『まぁいいからいいから…。』
ミックの意図するところが分からず適当に返事を返して電話を切る。
…香と風呂を覗けって…簡単に言ってくれるよなぁ…。
幸いなことに香はまだテラスで外の景色を堪能しているようだし…この隙に…
。
“…ガラガラッ…”
浴室の大きなガラス張りのドアを開けてみると…各部屋に備え付けられている
と思われる露天風呂。
目に飛び込んでくるのは邪魔な建造物は一切なく宿を囲む森林と海だけ…。
(たしかにこんな光景なんぞ見れば香は喜ぶだろうけどよ~…。)
ミックはどういうつもりであんなことを言ったのかが理解に苦しむ。
まさかアイツ…俺達が既にそういう関係になったって勘違いしてんじゃねぇだ
ろうな…。
そんな事を考えて油断していたせいか…後ろの方から香の声が聞こえてきた時
はドキッとした…。
「きゃ~~♪何これ?スゴ~~い!!」
俺の気持ちなど露ほども知らず香は子供のように無邪気に風呂から見える景観
に見惚れている。
その無邪気な姿とは裏腹に己の中に邪な思いが過ってしまうのは否めない。
(まったく…どうしてくれよう……この娘…。)
どれだけ人が苦労して警戒されないように振舞ってるのか…絶対に理解してい
るとは思えない。
まぁ…今回の旅行は余計な同伴者もいることだし…うかうかと手を出すことも
出来やしない…。
まさに“蛇の生殺し”……。
香はというと…今すぐにでも入りたいのか…。
恥ずかしそうな表情をしてチラチラとこちらの方を見上げてくる。
(お前…その顔…反則だろ~~!?)
今にも押し倒したいという衝動を辛うじて抑える。
取り敢えずその場は退散することにして適当な言い訳を口にした俺は部屋を後
にした。
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長らくお待たせしました(滝汗)
お話しは貰っていたのですが
仕事が忙しく描くゆとりがなかったもので
ゴメンナサイですm(_ _)m
我慢した反動でこの話に
もう一つイラストを描いているので
出来たらそれも載せたいと思います♪
(増えました~~~)
香の方の背景の歪みは見なかったことに
香の服が違うのは
上に羽織っていた物を取ったからです
薄着だったので車内では羽織ってました