ベンツは更に加速して、山ちゃんを単車ごとなぎ倒したのだった。
俺達がそれに気がつくやいなや、ベンツはさらに速度を上げて俺達を抜き去った。
反撃する間もなく、あっという間の出来事だった。
俺達は急停車し、山ちゃんのもとへユーターンした。
何人かはそのままベンツの後を追った。
山ちゃんはガードレールと単車に挟まれるように倒れ込んでいた。
足を押さえてうずくまっている。
「大丈夫かオイ!」
メンバー達が単車を寄せ、山ちゃんを取り囲んだ。
足の甲から物凄い量の出血をしていた。
急いで靴を脱がせて状態を確認すると、足の甲に大きな穴が空いていた。
血の出方が尋常ではない。
止血するにも着ているものしか布が無い。
俺がTシャツを脱いで止血しようとしたら、旗持ちの床屋がとっさの判断で特攻旗を山ちゃんの足にあてがった。
ブーツでも穿いて入れたよかったのだが、つっかけのような薄手の靴だったせいで、何かが貫通してしまったようだ。
山ちゃんは脂汗をかきながら「う…」と声を出した。
どうやら足の骨も折れているようだ。
足首から下がプラプラしている。
メンバーの一人が「病院に運ぶぞ!」と言ったが、運良く電話ボックスが近くにあった。
その後5分程度で救急車が到着し、警察が来る前にメンバーを解散させた。
俺はメンバーに単車を任せ、救急車に同乗した。
病院に到着するとすぐに手術になり、その間俺は警察に挟まれながら根掘り葉掘り取り調べを受けた。
余計な事は言わないのが鉄則。
メンバーが怪我までした上に、他のメンバーまで身柄を持っていかれたらたまったものではない。
ただ、車にひかれた事だけは伝えた。
その日は山ちゃんへの面会は許されなかった。
病院を出ると、下痢で戦線離脱中の総長が迎えにきてくれていた。
「コラ。お前が居ながらどうなってんだよ達也コラ」
「やかましいわ。おめーが下痢して来ないからわりーんだろ。帰ってクソして寝てろやコラ」
「ぐ…」
総長も俺も責任転嫁合戦になった。
しかしこれは何の解決にもならない。
「とりあえず、見当はついてっから」総長が言った。
どうやらベンツの後をつけたメンバーから色々と報告を受けているようだ。
「さて、どうすっか」総長がやけに軽い口調でそう言った。
答えを聞かなくても分かっているという表情だった。
俺は、「うるせー」とだけ言った。
井口達也
※一日一回のクリックが、確実に映画化への上昇気流を巻き起こす!→人気ブログランキング投票
¥576
Amazon.co.jp
¥1,575
Amazon.co.jp
¥1,500
Amazon.co.jp
チキン「ドロップ」前夜の物語 1 (少年チャンピオン・コミックス)/秋田書店
¥440
Amazon.co.jp
¥560
Amazon.co.jp
¥1,260
Amazon.co.jp
※最後まで見てくれてありがとうございます。
押してもらえたら力になります→人気ブログランキング投票