アンティーク銀スプーンと、天保一分銀と、黄金小判の関係。
御奉行様と結託して悪事のイメージ両替商、実際には何してた?
江戸の通貨制度と、当時の国際標準だった金銀複本位制、どっちが先進?

 

 

ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン
1798年 ロンドン、Samuel Godbehere & Edward Wigan作

 

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18世紀の銀スプーンを手にして、遠い昔の銀の価値を考えているうちに、もしこの銀スプーンを江戸時代にタイムスリップさせたら、いったいどのくらいの価値があったものだろうかと思考実験をしてみました。 当時の英仏独伊といった国々のスタンダードは金銀複本位制で、銀の地金はマネーと等価であり、各国通貨への換算額も容易に計算できます。 ところが、江戸時代の日本では違った貨幣制度が採用されておりましたので、ややこしいところがあります。 



例えば時代劇など見ておりますと、両替商というのが出てきて、しばしば御奉行様と結託しては悪事を働いたりしております。両替商の仕事といっても、鎖国の江戸時代に、海外旅行用の外貨両替なんてことはありえません。 それでは、この両替商はいったい何を両替していたのでしょうか。 江戸時代の日本では、金貨である小判と、銀貨、そして寛永通宝といった銭、これら三種マネーの交換レートが市場にまかされており、変動相場制になっていました。極論すれば、ドルとユーロとポンドというレート変動する三通貨が一国の中で流通していたようなもので、そこに両替商の存在意義があったのです。

そんなわけで、写真の銀スプーンは一種の銀地金でありますが、江戸時代のマネーに換算するには、小判か銀貨か銭か、難しさが伴うのです。

ここでは、なるべく簡単な試算ということで、天保一分銀への銀地金換算をしてみましょう。英国でヴィクトリア時代が始まった1837年は、日本では天保8年にあたり、この年から天保一分銀の鋳造が始まっています。 天保一分銀は江戸時代の中でも、特にエポックメイキングな銀貨であって、それがまたヴィクトリアンと重なっていることから、この銀貨について少し詳しくなるのもよいでしょう。



天保一分銀の重さは8.62グラム、銀純度は99%ほぼ純銀でした。 写真のスプーンは重さが12グラムのスターリングシルバーですから、銀の重さは12g*92.5%=11.1gとなります。 そうしますと、銀地金換算で、この銀スプーンは天保一分銀 1.3枚ほどの価値があることになります。 

これを黄金小判で換算すると、江戸時代の日本では、一分銀四枚で小判一枚と等価でしたので、このスプーン三本ほどで小判一枚の価値となります。これは当時の国際標準からすると、もっと銀が安かった外国に比べて、日本に持ち込んだ銀スプーンは、相当な高額物品になってしまうのです。

 

遠い昔のことであり、現代に暮らす私たちが、この高額さを感じることは難しいのですが、非常にざっくりした計算を申し上げると、小判一枚=一両=一石=150㎏の米=大人が一年かけて食べる米なので、この銀ティースプーン三本で、一年分の主食費用と思うと、ちょっと、この銀ティースプーンは高過ぎないかと感じていただけるかも知れません。



どうして、こんなことになったのか。
江戸時代の日本で銀が高くなっていた理由は徳川幕府の貨幣制度にありました。幕府は長い年月をかけて銀高金安誘導に成功し、天保一分銀の鋳造をもって、素材に銀を含むことから銀貨であることは間違いないけれども、その実態は銀高金安を固定した計数貨幣を完成させたのでした。 

江戸時代の人々は小判と銀貨を使ってはおりましたが、その貨幣制度は「自由な貨幣鋳造」が認められていなかったという点で、当時の国際標準だった金銀複本位制というよりも、むしろ現代の管理通貨制度に近い仕組みでありました。なお、「自由な貨幣鋳造」とは、人々が造幣局に持ち込んだ金銀の地金を、造幣局が金属的に等価な金貨あるいは銀貨と交換してくれることを意味します。

現代の管理通貨制度に近い仕組みで、江戸幕府がマネーを管理していたことは、興味深いと思います。 江戸の日本、たいしたもんだ、と思ってもよいのでは😊

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ちょっと ややこしい銀の話、最後までありがとうございました。
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それでは、また 明日😊

 

 

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